【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

上下自他

2011-06-04 18:36:36 | Weblog

 「上流・自称」は、鼻持ちならない。「上流・他称」は、鼻が高い。
 「下流・自称」は、みじめったらしい。「下流・他称」は、みじめそのもの。
 だから日本では「中流・自称」に人気があったのでしょうね。なぜか「中流・他称」はありませんでしたが。

【ただいま読書中】『戦国策(上)』澤田正煕 編訳、 明徳出版社(中国古典新書)、1968年(88年3刷)、
戦国策(下)』澤田正煕 編訳、 明徳出版社(中国古典新書)、1969年(89年3刷)、

 中国の「戦国時代」は、終りは紀元前221年(秦の始皇帝による天下統一)ですが、始まりは、紀元前453年と403年の二説あるそうです。どちらも素人の私から見たら“誤差の範囲内”ですが、学者さんはそういったことで論争するのが大好きなんですよねえ。ともかく、この戦国時代に生きた人々の故事(おっと、当時生きていた人にとっては、まさに“現在”の記録)を集めたものが、本書です。親切なことに、原文の漢文だけではなくて、読み下し文と日本語翻訳までくっついています。初学者の私にとってはありがたい構成です。
 目次をざっと見ると、「遠交近攻」「蛇足」「転禍為功」「虎の威を借る狐」「士は己を知る者のために死す」「唇掲くればその歯寒し」「まず隗より始めよ」などなど、「あ、知ってる」という言葉があちこちにあります。そう言えば「蛇足」は高校の漢文の授業で習いましたっけ。しかし「虎の威を借る狐」なんか、イソップだと思ってましたよ。うわあ、私の教養の鍍金が剝がれてしまうぅ。古代中国を舞台に小説を書く人たちは、こういった本をちゃんと読んでいるんでしょうねえ。尊敬します。
 本書を貫く大きな柱は「生きのびること」です。乱世ですから、回り中が敵です。武力や外交をフルに使って努力しなければ、すぐに国が滅ぼされてしまいます。ただし、ただ生きのびればいい、というものではありません。「義」とか「徳」とかにしたがって筋を通して生きのびることに価値があるのです。そこが古代世界での大きな「縛り(行動規範)」です。で、筋を通すためことが生きることよりも優先する、という態度が、本書によく登場する「法家」で、取りあえず形式的にでもスジが通っていれば良い、が「縦横家」、と言って良いでしょう。一見窮屈な世界のようですが、意外と“解釈の余地”があちこちにあるのが、読んでいて笑えます。人の発想の根底は、昔と今ではけっこう共通の部分が多いのかもしれません。