【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

マスコミ

2011-06-18 20:15:19 | Weblog

 2000年前にもし新聞があったら、「キリストの死」をどう報じたでしょうねえ。

【ただいま読書中】『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』岩崎夏海 著、 ダイヤモンド社、2009年(11年33刷)、1600円(税別)

 「南を甲子園に連れてって」は『タッチ』ですが、こちらでは川島みなみが「マネジメントで(都立進学校の)野球部を甲子園に連れて行く」と決心をします。で、野球部に入部してマネージャーになり、そこで「マネージャーって、マネジメントって、何?」と英和辞典を引きます。なんだか順番が変ですが、みなみは大まじめ。こんどは本屋に行って「マネジメントの本をください」でドラッカーの『マネジメント』を購入しちゃいます。もちろん読み始めたら野球の本なんかではないことはすぐにわかったのですが、なにしろ2100円(税込み)ですから、もとを取りたい一心で読んでいる内に、その虜になってしまいます。
 いやもう、大笑いなんですが、でも、企業と野球部には「組織」という共通点があります。だったら当然そこには「マネジメント」が存在するわけです。いやあ、著者の着眼点は良いですねえ。私は素直に感心します。
 みなみは『マネジメント』に書かれているとおりに行動します。まったくの“素人”だからこそできる行動です。「マネージャーが持つべき資質“真摯さ”」に従い「マーケティング」を行ないますが、その時にも『マネジメント』にあるとおり、担当者に成果を上げさせようとします。さて、「野球部の顧客」と「野球部の目的」が定義できたら、次は「マネジメントの組織化」です。要するにマネージャーの機能的な分業。
 不甲斐ない敗戦がきっかけで、チームはほんの少し変ります。練習をサボる人間が減り、練習態度が少し真面目になる、という形で。「成長の準備」から「成長の時」になったのです。そこで必要なのは「人の強みを生かす」こと。みなみは「練習をサボる選手がいるのは、『消費者運動』で『もっと魅力的な練習』を求める態度だ」と思い、練習メニューの改善に手をつけます。
 野球部員たちはめきめきと力をつけます。しかし、まだ足りません。そこで「イノベーション」。野球部の変革が不足なら、高校野球の方を変えてしまえ、という発想でみなみたちは動き始めます。どうせもともと弱小野球部、失うものはありません。
 本書の最後のあたりにみなみが親友の有紀と行なう「プロセスか成果か」という議論、それも悲しい議論があります。そのことで後にみなみは死ぬほど後悔するのですが……本当は『マネジメント』を確認しないといけませんが、ドラッカーは単純な二分法で「プロセスか成果か」と言っていたわけではない、と私は推測します。これまで読んだドラッカーの思想から類推すると、「成果」は「プロセスの結果」、それも「確率的に得られる結果」と捉えられているように思えます。「人事を尽くして天命を待つ」の「人事」が「プロセス」、「天命」が「成果」。世の中に百発百中はないけれど、失敗を恐れて何もしないあるいは安全策だけ採っていたら、それは「人生とはただ食べて寝て呼吸をすること」になるだけ。きちんとマネジメントをしたら成果が得られる確率が飛躍的に増すはずです。
 ……ただ、それはビジネスの世界でのことで、一発勝負の高校野球ではちょっと苦しいですね。だからこそ成果(勝利)が得られた時の感動は大きくなるのでしょうが。
 しかし本書では最後の最後でまた大笑いをさせてくれます。インタビュアーが「どんな野球をしたいですか?」と質問したらキャプテンが逆に「あなたはどんな野球をしてもらいたいですか?」と聞き返すんですもの。インタビューの場面でもそこは「マーケティングの場」なのです。いやあ、筋金入りの「マネージャー」たちです。
 先ほどの「プロセスと成果」のところで感じた疑問を解消するためにも、『マネジメント』を読まなきゃいけないようです。2100円かぁ……