一顆明珠~住職の記録~

尽十方世界一顆明珠。日々これ修行です。いち住職の気ままなブログ。ときどき真面目です。

如愚如魯(にょぐにょろ)・・・例えば杉野英実氏は

2006年03月01日 | 禅・仏教
「愚直」という言葉が好きである。

当たり前のことを、心を込めて行うこと。

それは、自分のなすべき役割をまっとうに勤めるということであろう。

この自分の役割をしっかりと見定めるのが、けっこう難しかったりする。

時と状況に応じて、役割は絶えず変化するのだ。

役割を、仕事、ひいては修行と言い換えてもいい。

いつだって、この瞬間にも、私は役割、仕事、修行を与えられている。

いや、与えられているというよりも、つねにそれは私と共にあるのだ。

それは、本質的にエゴによる好悪の感情を離れている。

いま・ここ・自己の役割=仕事=修行。

つねに私に、これを見定め、まっとうさせることを望んでいる。

何が・・・?

強いて言うなら、仏が、如来が、全宇宙が、と言えるだろうか・・・。


「如愚如魯(にょぐにょろ)」

行動に意味を求めるかぎりは、それはまるで愚か者の如く見えることであろう。

意味を求めない。

自己に厳然と顕わになっている「当たり前」を黙々と専心に勤める。

この顕わになっているものが、エゴの色眼鏡からはなかなか見えてこない。


カリスマ・パティシエ、杉野英実も言っていた。

「当たり前が一番難しい」と。

銀座の超人気洋菓子店「イデミ・スギノ」を一手に取り仕切る彼は、意外なほど地味な印象を与え、雄勁な古武士の風情さえ漂わしていた。

炯炯とした眼光。

地に足をしっかり根付かせている。

まさに職人。最高の菓子を作ることに全神経を集中している。

そんな杉野氏の姿は、「洋菓子バカ」と言えなくもない。

腕の慢性腱鞘炎に苦しみながら、それでもひたすら走り続ける、洋菓子道一直線だ。

また、なぜ店舗を増やさないか、という問いに対し、彼は、

「私の手を離れたら、私の仕事ではなくなるから」と言っていた。

まさに「他はこれ我にあらず」であろう。

他人の修行は自己の修行ではない(にはならない)。

自己の修行を明らめること。

その中にすでに「愚の如く魯の如し」のまったき修行が包摂されている。

ここに一大事があるのではないか。


如愚如魯   りょう - 書き初めくん - はてなセリフ


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ううむ、そうですね (type1974)
2006-03-01 23:08:58
そう心から思って仕事をしたいものだと思います。

現状、なかなかなもんで…

行動で問われますからね。

そんなケーキ職人のように仕事したいなと。

あと、若者の自殺の葬儀とは、ひじょうに重いものがありますね。たいへんごくろうさまです。

以前自殺マニュアルについて書いたので、せっかくなのでトラックバックしてみました。あんなバカげた本に騙されぬように。
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失礼いたします。 (tenjin95)
2006-03-02 11:36:46
> 管理人様



拙僧的には、『宝鏡三昧歌』で「如愚女魯」のあとに続く、「ただよく相続するを主中の主となづく」という一文が好きなのですが、それはさておき、今回のログを拝見しておりまして、拙僧的にはいわゆる他から見られるあり方と、自ら空間的制作に関わっている事態を架橋する表現として「愚か」を使うことも良いのかな?と思いました。要するに観察者からの視界に、行為主体が捉えられないという意味においてです。



そこで、もし未見であるとすれば、芸術的制作を行う者が、どのように自らの行為領域を作成しているかについて、柳宗悦氏の民芸品に関する著作などを参照されてみると面白いかな?とも思いました。
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コメントありがとうございます (りょう)
2006-03-02 20:40:43
>type1974さん

TBもありがとうございます。

「完全自殺マニュアル批判」、傑作の記事だと思います。

あの本に多少なりとも影響を受けた多くの若者に読んで欲しい。

こうしたネットワークが微力ではあっても、じわじわと社会に種子として浸透するといいですね。



いや~確かに私も現状なかなか厳しいものがあります(笑)

ですが、できる限り、「仕事に雑用はない」、という視点で日々仕事に取り組んでいきたいものですね。





>tenjin95さん

う~貴兄のコメントはいささか難解です(笑)

私の軟弱なおつむには少々キツイ・・・

もちょっと分かりやすく解説してくださると助かります

言語ゲームがかけ離れすぎてるので・・・

あ、これは、ある意味貴兄がログで述べていた、学ぶものの優越の論理かもしれませんね。



さて柳宗悦さんの本、興味深そうですね!

ご紹介ありがとうございます。

読んで見ようと思います。
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