亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

NY金、プラチナとの価格差初の1100ドル超に」

2023年11月10日 20時43分30秒 | 金融市場の話題

11月9日のNY金は4営業日ぶりの反発で通常取引は前日比12.00ドル高の1969,80ドルで終了した。前週の米連邦公開市場委員会(FOMC)を受け、米国の利上げ局面は終了したとの見方が広がる一方、中東情勢に対する過度の警戒感の後退を受け、金市場では買い建てを増やしていたファンドの手じまい売りが先行し、下げが続いて来た。前日まで3営業日続落で41ドル、2%の下げとなっていたが、9日は値ごろ感からの買いに反発となった。

急落後の自律反発という印象の上げと言える。本格反騰でなく自律反発。

この日はロンドンからNYの早朝にかけて1950ドル近辺での取引が続き、一時1948.30ドルと節目の1950ドル割れを見ることになった。ただし、安値では買いが見られ、NYの通常取引に入ってからは、発表された米国指標が米国景気の減速を示す内容となったことを受け、買い優勢に転じ、そのまま1970ドル近辺まで水準を切り上げ、終盤まで水準を維持して終了した。

この日はIMF(国際通貨基金)本部でのイベントに参加したパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演内容が、ややタカ派的なものとなったこと。さらに午後に発表された米30年債の入札結果が低調に終わったことが判明し、長期債を中心に米国債が売られ利回りは上昇した。NY金は長期金利上昇に上値を抑えられたものの、通常取引終了後の時間外取引もプラス圏を維持して取引を終了した。

 

通貨的側面を持つ金が反発する中で、産業用需要の比率の高い他の貴金属はこの日も銀、プラチナ、パラジウムの3品目ともに続落となった。

10月の中国の消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.2%低下し、市場予想(0.1%低下)を下回った。中国経済の減速懸念が改めて意識されたことも下げにつながった。このところ下げが目立っていたパラジウムはNY先物価格が一時993.50ドルと1000ドル割れに。ロンドンスポット価格も1000ドル割れとなり、5年ぶりの安値をさらに更新した。パラジウムは排ガス浄化用の自動車触媒が需要の多くを占めるが、自動車販売が世界的に落ち込む中で価格も今年に入り下落基調を続けてきた。 ここにきてパラジウムからプラチナに触媒需要が移っていることも、需要を圧迫している。

なお、この日NYプラチナも4営業日続落で862.80ドルで取引を終了したが、NY金との価格は、初めて1107ドルと1100ドルを超えることになった。この先も拡大したり縮小したりしながら、さらに価格差は開くと思う。

 

なお、IMF本部で講演したパウエルFRB議長だが、米国のインフレ率が目標の2%を「依然十分上回っている」とし、追加利上げが適切なら「ためらわない」と強調した。同時にインフレ率を2%に下げる上で十分な引き締めを行ったと完全には確信を持てていないとの考えを改めて示した。一方で、「引き締め過ぎるリスクの両方に対処できるよう、引き続き慎重に行動していく」と、先週のFOMC後の記者会見での発言内容も繰り返した。しかし、タカ派的な発言と市場は受け取った。。他のFRB高官の発言も、必要あれば、さらなる利上げの必要性を説くものだった。利下げ転換を早々に織り込もうとする市場への牽制とみられる。仮に追加利上げをやるなら、米景気は失速すると思う。

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