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亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

NY金200日線の攻防、再び高まる米長期金利先高観

2023年11月13日 22時19分17秒 | 金融市場の話題

先週末のNY金は前日比32.10ドル安の1937.70ドルで終了。週足は5週ぶりの下げとなり、下げ幅も61.50ドル、3.08%と大きくなった。米長期金利先高観の強まりを背景とした売りが再燃し水準を切り下げた。また、パレスチナ自治区ガザへのイスラエル軍の攻撃は激しさを増しているものの、近隣諸国を巻き込む可能性は現時点では低いとの見立てから、金価格に乗った一定のヘッジプレミアムが縮小していることも、下げを拡大させている。

 

パウエルFRB議長は前日9日の国際通貨基金(IMF)主催のパネル討論に登壇。FRBは金利がインフレとの戦いを終わらせるのに十分高い水準に達しているとは「確信していない」とし、「政策をさらに引き締めることが適切となれば、躊躇することなく引き締める」と発言。金市場は11月1日の連邦公開市場委員会(FOMC)後に、今回のFRBによる利上げサイクルは終了との見方をほぼ織り込んでいたが、この発言で景気やインフレ動向次第で追加利上げに動く可能性を再び意識することになった。

他にも複数のFRB高官が、同様の発言をした。市場では足元で想定しているよりも利下げのタイミングが遅れるとの見方が広がった。

 

こうした発言を受けて11月8日には終値ベースで4.5%割れを見た米10年債利回りが、再び反転(価格は下落)の動きを見せたことが、ファンドのアルゴリズムに沿った売りを膨らませることになった。心理的な節目の1950ドルを割れたことで、テクニカル要因も悪化し、足元で1934ドル近辺に位置する200日移動平均線を意識した売りが下げ幅を拡大させた。当面は200日線が、下値支持線として意識されることになりそうだ。

 

この流れに中で先週目に付いたのが週末10日にミシガン大学が発表した11月の米消費者信頼感指数(速報値)だった。60.4と、前月の63.8(確報値)から低下し、5月以来の低水準となった。低下は4カ月連続で、市場予想中央値の63.7も下回った。

注目されたのは、同時に発表した予想インフレ率(期待インフレ率)の結果で、1年先の予想インフレ率は4.4%と10月(4.2%)から上昇。長期(5~10年先)は3.2%と前月の確報値から0.2ポイント上昇した。2011年以来、12年ぶりの高水準であり、FRBの歴史的な引き締めにもかかわらず、消費者がインフレが鎮静化すると見ていないことを表すものといえる。

おそらくこの結果にFRBは警戒感を高めるものと思われる。一般消費者の期待インフレ率、特に長期見通しの上昇はFRBにはもっとも避けたい傾向とみられることから当面神経をとがらせるのだろう。今週も菅駅舎からは、タカ派的な発言が続きそうだ。

 

もうひとつ10日は、夕刻の米国金融市場取引終了のタイミングで発表された、格付け会社ムーディーズによる米国債の格付け見通しの引き下げがあった。「ステープル(安定的)」から「ネガティブ(引き下げ方向)」に変更したもので、米財政赤字の高止まりが継続する見通しを指摘している。米国債利回りを押し上げる材料となる(悪い金利上昇)。「議会内で政治的二極化が継続していることで、政権が債務償還能力の低下を遅らせるための財政計画で合意に達することができないリスクが高まっている」と声明で指摘している。

折しも今週末17日には、9月末にかろうじて与野党間で合意した暫定予算の期限が到来する。米下院のジョンソン議長(共和党)は11日、共和党の暫定予算案を発表した。 軍や運輸、農業など一部政府業務が来年1月19日まで、それ以外は2月2日までの歳出をまかなう内容となっている一方で、イスラエルやウクライナへの支援といった追加予算は盛り込まれていないと報じられている。 それに対し、与野党双方から反対の声が出ているとされる。

17日までに成立しない場合、来週は軍人を含む連邦政府職員への給与の支払いが止まったり、政府機関の閉鎖があっても業務をしないわけにはいかない航空管官などは無休で働くことになる。ちなみにムーディーズは、政府機関の閉鎖という事態は、米国債格下げの事由のひとつになるとしている。

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