米格付け大手ムーディーズ・レーティングスが米国債の格下げを発表したことは、タイミングこそ、ここでかい!ということだったが、引き下げ理由については市場の想定通りと言えた。しかし、急拡大する米財政赤字は水面下でとうとうと流れる問題で早晩浮上することが想定されているもの。
ちょうど足元では5月26日のメモリアルデーをメドに、与党・共和党の下院指導部はトランプ政権の減税策を盛り込んだ大型法案の成立を目指している。債務の増大と利払い費の上昇で財政政策は「持続不可能」とベッセント財務長官が指摘していたこともあり、警戒感がここにきて燻っていた。
そんな中、21日は米財務省が実施した20年債(160億ドル)の入札結果(落札利回り)が市場実勢を上回る内容で、超長期債に対する需要の乏しさを浮き彫りにする結果となり、市場の警戒感は一気に高まることになった。結果発表の午後1時を境に米主要株式指数は軒並み下げ幅を拡大し、米国債相場は軒並み下落(利回りは急騰)、ドルも主要通貨に対し売られた。内容的には関税発動に揺れた4月上旬ほどの規模ではないものの、いわゆるトリプル安状態となった。膨張する米財政赤字が安全な投資先としての米国の地位を脅かすとの投資家の懸念を映している。米長期金利の上昇は、いわゆる「悪い金利上昇」であり、実際に10年債利回りは一時4.612%と2月12日以来約3カ月ぶりの高水準に。日米金利差は拡大するもドルは売られ、21日は一時143.29円まで円高が進んだ。本日22日は、ここまでのところ142.81円までドルは売られている。
トランプ政権の大型財政法案だが、財政健全化に向けた対策を講じなければ借り入れコストはさらに上昇し、赤字の削減が一段と困難になるとみられている。2024会計年度では利払い費が急増し1兆ドルを超え国防費を上回った状態にある。トランプ減税の延長と追加減税を含む財政法案は、共和党下院指導部が調整を進めているが、財政拡張に反対する保守強硬派が法案成立を阻止する構えを変えていない。メディケイド(低所得者向け医療保険)給付の一段の削減に加え、バイデン前政権下で導入されたクリーンエネルギー関連の税控除をより早期に撤廃する方針をトランプ政権は盛り込んでいないと非難する。ただし、政権は来年の中間選挙を念頭に腰が重い。週末にかけて共和党内での調整が続く。21日トランプ大統領は看板政策の法案を迅速に可決するよう共和党議員に圧力を強め、可決に失敗すれば「最大の裏切り」になると警告したと伝えられている。
21日のNY金価格は、再び株安、ドル安、米国債安(長期金利上昇)のトリプル安状態が現出する中で、終日3300ドル超を維持して推移した。終値は3313.50ドルで、水準としては米中関税協議の暫定合意がまとまる以前の水準に戻ったことになる。ただ本日は、NY早朝の段階までに3300ドル割れを推移中となっている。