亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

NY金より下げが大きいWTI原油

2023年11月09日 19時57分34秒 | 金市場

11月8日のNY金は3営業日続落となった。10月中に急激に積み増しされた先物市場でのファンドの買い建て(ロング)の利益確定あるいは見切り売りが、引き続き下げをもたらしている。8日の通常取引は前日比15.70ドル安の1957.80ドルで終了した。

NY時間外のアジア時間から水準を切り下げながら相場は進行。安値は通常取引終了後のNY時間外につけた1953.20ドルとなった。心理的節目の水準を維持したものの、抵抗ラインとしてはさほどの強さは感じられず、引き続き米長期金利とドル指数の値動きに左右される展開になりそうだ。ただし、本日はドルにも長期金利にも目立った動きのない中で、一時1950ドル割れを見ている。

 

中東情勢の流動化を契機に反発した点ではNY金とともに原油価格も同じだが、原油はいち早く値を消している。すでにイスラム組織ハマスによるイスラエル奇襲前の安値を大きく下回り、8日の米国産原油WTIは(1バレル)75.33ドルで終了。終値ベースでは7月17日以来の安値となっている。

原油供給障害への警戒という地政学リスクによるプレミアムはすでになく、世界経済の先行き懸念による需要低下を原油相場は織り込みにかかっている。前日の中国経済関連指標の悪化に加え8日は、週間の米石油統計で予想を超える原油在庫の増加が売り手掛かりとされた。米石油協会(API)の発表では、米国最大の貯蔵拠点であるオクラホマ州クッシングで、在庫の増加幅が6月以来の大幅な積み上がりとなる110万バレルを超えたとされる。

ちなみにWTIとNY金の直近高値から8日までの下落率(終値ベース)を見てみると、WTIは15.7%、NY金は2.4%となる。価格展開の違いは、通貨性の有無による。消費に直結する需給見通しのみが価格決定要因となる原油に対し、地政学要因(有事反応)による金融的側面からの逃避需要が見られる金との背景の違いが、価格展開の違いに表れている。

 

なお8日は、パウエル連邦準備理事会(FRB)議長やジェファーソン副議長、ウィリアムズNY連銀総裁などの発言機会があった。ただし、FRBの調査統計(R&S)部門の創設100周年を祝う会議でのスピーチというもので、金融政策や経済見通しについての言及はなかった。パウエル議長は、経済は平時にあっても時に予想外の展開を見せるとして、最先端のモデルを使っても、経済予測では柔軟な姿勢をFRBのエコノミストに求めた。

もうひとつ市場で関心を集めたのは、この日行われた米10年債の入札(新規発行)だった。予想より好調に消化が進んだとの評価により、終了後に市場金利は低下。10年債利回りは 終値ベースで4.497%と4.5%を下回って(価格は上昇)終了。9月22日以来6週間ぶりの低水準となる。月初に発表された今後3カ月間の国債増発計画が、市場の想定より抑えられたことも好調な入札すなわち利回りの低下につながっていると思われる。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« NY金ロングの投げ、空白の週 | トップ | NY金、プラチナとの価格差初... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

金市場」カテゴリの最新記事