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君が行き 日長くなりぬ 山たづの
迎へを行かむ 待つには待たじ
=巻2-90 衣通王=
あなたがいらっしゃってから、ずいぶんと日が過ぎてしまいました。(冬の最中に最も早く新芽を出す)山たづのように、あなたを迎えに行きましょう、待ってなんかいられないわ。という意味。
「衣通王」(そとほしのおほきみ)は軽太郎女(かるのおおいらつめ)ともいい、允恭天皇の皇女。母は忍坂大中姫。軽太子(かるのひつぎのみこ)の同母妹。
題詞に、「古事記によると、軽太子は軽太郎女と関係を結んだので、太子は伊豫(いよ)の湯に流された。この時に、衣通王(そとほしのおほきみ:軽太郎女の別名)は恋しさに堪えかねてあとを追っていき、その時に詠んだ歌である。」とある。
この歌の異伝歌として、次の歌がある。
君が行き 日長くなりぬ 山尋ね
迎へか行かむ 待ちにか待たむ =巻2-85 磐姫皇后=
伊豫(いよ)の湯は道後温泉のこと。「山たづ」は、「迎へ」の枕詞。
「山たづ」は、現在の「にわとこ」。にわとこを神迎えの霊木として用いたことによるという。
スイカズラ科の落葉低木で、まだ寒さ厳しい2月、多くの木々が冬籠りをしている最中に緑も鮮やかな新芽を出し、「もうそろそろ春だよ」と告げてくれる目出度い木。本州、四国、九州の山野に自生し、早春、暖かくなると淡いクリーム色の五弁の小花を房状に咲かせ、夏から秋にかけて美しい赤色の球形の実をつける。新芽は天ぷらにするとおいしい。
この万葉歌碑は、千葉県袖ケ浦市袖ヶ浦公園にある万葉植物園に建てられている。
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