(本頁は「(2)早春編」の続きです。)
四月になると男鹿の花はカタクリやスミレ類が主役となる。
特に五社堂から上の毛無山稜線の小道はスミレ類が切れ目なく咲いており、スミレロードと呼びたくなるほど。
カタクリ Erythronium japonicum
男鹿では五社堂の周辺や海岸林の下など低いところに多く、山頂部ではあまり見かけない。
2019/04/18 五社堂境内のカタクリ群生
ヒメニラ Allium monanthum
れっきとしたスプリングエフェメラルの一種だが、丈5cm、花も約5mmと小さく、つい見過ごしてしまいがち。
近くによるとプーンとニラ臭がする。
2018/03/27 カタクリのアップ。 2015/04/10 ヒメニラ。廻りの葉はシャク。
タチツボスミレ Viola grypoceras
2019/04/18
ナガハシスミレ(テングスミレ) Viola rostrata var. japonica
四月の男鹿では一番多いスミレでみごとな群生を作る。天狗の鼻のように後方に突き出した距が特徴的。
2019/04/18
アオイスミレ Viola hondoensis
男鹿では最も早くから咲くスミレ。花の時期の草丈は3~5センチと低く、花も1センチ程度と小さい。
葉は円形で径2~3センチと小さいが、花後に5センチくらいの大きな葉を出すと言われる。
2020/03/31
スミレサイシン Viola vaginata
大型のスミレで花の径は2~2.5センチ、葉は花が咲き出すと急速に展開し、心形で長さ5~8センチになる。
サイシンとはウマノスズクサ科のウスバサイシン(現在のトウゴクサイシン)のこと。
展開した葉の形がそっくりなのでこの名が付いたと聞くが、場所によっては混生することもあり、紛らわしい。
2018/04/28
なお男鹿三山では他にミヤマスミレも多いが、開花時期がやや遅いので次の頁で紹介する。
また黄色い花のオオバキスミレは秋田県内の低山にはとても多いのに、男鹿ではまだ見たことが無い。
フデリンドウ Gentiana zollingeri
量はそれほど多くないが、雑木林の下で見かける。
2018/04/28
アラゲヒョウタンボク Lonicera strophiophora
地味な小低木だが、山麓の沢筋から山頂部まであちこちで見かける。開花も山麓では早く、三月から咲いている。
ナツトウダイ Euphorbia sieboldiana
男鹿三山には多く、あちこちで見かける。花のつくりは面白い形をしている。
2020/05/08 アラゲヒョウタンボク 2020/05/08 ナツトウダイ
ニリンソウ Anemone flaccida
スプリングエフェメラルのひとつだが、開花時期はやや遅い。
五社堂の登り口や海岸林の下に群生している。
山菜として食用になるが、同じ場所にはトリカブトも多く生えている。
芽出し時期の姿はよく似ているので間違えやすい。無理に採取して食べないことを強く奨める。
2019/04/18
エンレイソウ Trillium smallii
以前はユリ科だったが、現在はシュロソウ科。花も葉も「三/tri-」を基軸としている。
男鹿には同じシュロソウ科で「四」を基軸とするツクバネソウもふつうに見られる。
ミヤマキケマン Corydalis pallida var. tenuis
花のつくりはエンゴサク類に似るが、性質は強く、荒れ地に最初に侵入するパイオニア植物でもある。
葉茎を折ると臭い乳液が出るので、「クソタレバナ」などの方言名がある。
2020/04/16 エンレイソウ 2018/04/28 ミヤマキケマン
四月も下旬になると、男鹿の山林ではシラネアオイが咲き出す。
この時期の林の中は明るく、藪もあまりひどくないので自由に歩き回れる。
秋田県内の他の低山に較べると、草木の花が質量ともに多いと感じる。
シラネアオイ Glaucidium palmatum
五社堂周辺の山林には多く、登山道脇でもよく見かける。何故か山頂部や真山では見たことが無い。
ヒトリシズカ Chloranthus japonicus
近縁のフタリシズカは男鹿では少なく、本山のスギ林で少々見かける程度。開花はヒトリシズカより約一ヶ月遅い。
2019/05/04 シラネアオイの群生
2020/05/15 シラネアオイ白花 2018/04/28 ヒトリシズカ
オオカメノキ Viburnum furcatum
全山に多い低木だが、花の咲くものや実の成るものは比較的少ない。
2018/04/28
ホソバノアマナ Lloydia triflora
ユリ科、生態的にはスプリングエフェメラル(春植物)と思われる。
草丈は20~30センチ。花の径は1.5センチ程度、葉は披針形で二、三枚と少なくヒョロヒョロとした印象。
秋田県内では今のところ毛無山でしか見たことが無い。
五社堂付近の低所から山頂部までの山林内に広く、かつ疎らに分布している。
開花は五社堂付近ではカタクリが終わる頃から、山頂部では少し遅れ、五月中下旬に咲く。
近縁の高山植物、チシマアマナは東北では早池峰山に産する。
ヒメイチゲ Anemone debilis
秋田県内の高山、亜高山帯に多いが、男鹿では毛無山山頂付近で見られる。
山頂部では一番早く咲く草花だと思う。
2019/05/04 ホソバノアマナ 2018/04/28 ヒメイチゲ
次は「(4)晩春編」。
私には一向に名前がわかりません(^^;
寒風山に咲いている、ホンスミレは、葉っぱが違いますね。
ハート型でなく、縦長の葉っぱなので、唯一名前がわかります。
花の名前が詳しくて、花博士ですね。
参考になります。
スミレ類は私も苦手でしたが、facebook友人の中に詳しい方々が複数居られ、そちらの方で教えてもらいました。
寒風山のホンスミレは私も見てます。同じ男鹿でも三山と寒風山では植物の種類が違いますね。
そのうち機会を見て寒風山の図鑑も作ってみます。