(本頁は「乳頭山はどんなお山?」の続きです。)
乳頭山は秋田県仙北市と岩手県雫石町との県境にある
標高1478mの火山性小ピークだ。
秋田側から望むと、角度にもよるが、
女性の乳頭を思わせるような形からその名があるが、
岩手側から見ると烏帽子のような形から、烏帽子岳とも呼ばれる。
南側から見た乳頭山(烏帽子岳) 2021/06/07
花の名山として知られる秋田駒ヶ岳(こちら)とは峰続きで、
わずか5kmくらいしか離れていない。
秋田駒ヶ岳には多いが、乳頭山には無いかほとんどない種類がいくつかある。
例えばコマクサやイワブクロ、タカネスミレなど火山性裸地にパイオニアとして侵入する種類や
色鮮やかなエゾツツジなどが該当するが、それ以外の高山植物はだいたい揃っている。
逆に秋田駒にはほとんどないか、欠如しているのに、
乳頭山には豊富な種類が幾つか有って、この山のお花畑を特徴づけている。
いずれにしろ東北地方の同程度標高の山としては、
高山植物の種類、量ともに豊富な方ではないかと思う。
本図鑑は、乳頭山の他に近接する千沼ヶ原湿原、笊森山(1541m)に見られる花も加えた。
更に補足の意味で、平ヶ倉沼から千沼ヶ原に至る稜線や乳頭山の山麓も歩き、必要に応じて付け加えている。
掲載順はおおむね、開花が早いものからとしたが、開花期間の長い花や特徴的な一部の花は複数回登場させている。
植物名の同定にあたっては、既存の高山植物関係の図鑑を参考にさせてもらった。
何か間違い等にお気づきの方はご指摘頂きたい。
まずは初夏に咲く花から。
途中のブナ林には季節的にそうなのかとても花が少なかったが、
針葉樹林帯(アオモリトドマツ林)が始まると、少し見かけるようになった。
ミツバオウレン Coptis trifolia とタケシマラン。
ゴヨウイチゴも混じっている。 2018/06/16
(右上)シラネアオイ Glaucidium palmatum 2018/06/16
ベニバナイチゴ Rubus vernus 2018/06/16
田代平の湿原にはチングルマやイワカガミが多く、それは山頂近くまで続いていた。
チングルマ Geum pentapetalum 2018/06/16
イワカガミ Schizocodon soldanelloides 2018/06/16
(右上)イワナシ Epigaea asiatica (実) 2019/07/15
6月中旬、乳頭山に登ったら、山頂近くの登山道の両側には
チングルマやイワカガミが豊富だったが、それ以上にイワナシが多いのに驚いた。
ただしこちらは全て花が終わった後だった。
イワナシの花は6月でももっと早く、上旬に盛りを迎えるのではないかと思った。
乳頭山山頂の岩場は花が乏しく、
ミヤマキンバイやイワウメをホンの少数見かけたのみ。
ミヤマキンバイ Potentilla matsumurae 2018/06/16
(右上)ホソバイワベンケイ Rhodiola ishidae 2018/06/16
ところが山頂の岩場を南へ下り出すと、植物の種類が多くなった。
コケモモ Vaccinium vitis-idaea、左下にムシトリスミレ。2018/06/16
ハクサンチドリ Dactylorhiza aristata とミヤマキンバイ
2018/06/16
(右上)ハクサンチドリ(白花) 2018/06/16
イワウメ Diapensia lapponica var. obovata 2018/06/16
イワウメは量的には笊森山の方が多かった。
次のイワカガミは全体が小型で、笊森山の北斜面、岩場で多く見かけた。
ヒメイワカガミ Schizocodon ilicifolius かなと思ったが、そう判断するには至らなかった。
2018/06/16
ハイマツ Pinus pumila 2018/06/16
(右上)コメバツガザクラ Arcterica nana 2018/06/16
ムシトリスミレ Pinguicula vulgaris var. macroceras、
右の方に咲くのはイワカガミ。 2018/06/16
ムシトリスミレは乳頭山と笊森山の両山に多く、登山道脇の裸地などに群生していた。
コヨウラクツツジ Menziesia pentandra 2018/06/16
(右上)ウコンウツギ Weigela middendorffiana 2018/06/16
ウコンウツギはこの山域では少ない。笊森山で少数見かけた。
イソツツジもこの山域では少ない。笊森山で見かけた。
イソツツジ Ledum palustre subsp. diversipilosum var. nipponicum 2018/06/16
ゴゼンタチバナ Cornus canadense 2018/06/16
(右上)ヨツバシオガマ(開花前の姿)2018/06/16
キバナノコマノツメ Viola biflora とマイヅルソウ 2018/06/16
この山域ではキバナノコマノツメは多かったが、タカネスミレは一部を除き、皆無に近かった。
ヒナザクラ Primula nipponica 2018/06/16
ヒナザクラは田代平では早く咲くが、笊森山の雪消えの遅い斜面では盛夏にも咲いていた。
オオバキスミレ Viola brevistipulata 2018/06/16
(右上)ミズバショウ Lysichiton camtschatcense 2018/06/16
ミズバショウは千沼ヶ原で多く見かけた。
以上。
「乳頭山の花図鑑(2)」に続く。
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