モウズイカの裏庭2

秋田在・リタイア老人の花と山歩きの記録です。

ミヤマキンバイとミヤマダイコンソウ

2022年02月07日 | 高山植物

(冬場は山には行きません。夏場の回想記事が主体となります。
その一環で「高山植物」のカテゴリーを創設、山の花について語って行きます。)

本ページでは、黄色い梅のような小花を咲かせるバラ科の高山植物を三種類取り上げてみる。

初夏に高山の岩場や砂礫地でよく見かけるのは、多くの場合、ミヤマキンバイだ。

ミヤマキンバイ Potentilla matsumurae var. matsumurae はバラ科キジムシロ属の一種で、
草丈は10~20センチ、根出葉は三枚の小葉に分かれている。
同じような小花をつけるミヤマキンポウゲはキンポウゲ科で草丈は20~50センチとやや高い。
葉は深く三つに裂け、さらに細かく裂けめが入る。また花弁にはエナメル状の光沢が有るし、
湿った場所に群生するので、識別は容易だ

(ミヤマキンポウゲについてはこちらを参照されたし)。
秋田駒ヶ岳はミヤマキンバイの多い山で初夏に登ると、あちこちでこの花が群生している。
次の写真はコマクサが生えている大焼砂で撮ったものだが、
ここではタカネスミレの大群生をバックにしてみごとな黄色の花風景になっていた。

2015/06/21 秋田駒ヶ岳大焼砂にて。
ミヤマキンバイは手前のひと塊、バックの黄花はタカネスミレ。




次いで鳥海山。

2020/06/24 鳥海山長坂道にて。
手前がミヤマキンバイ、奥はハクサンイチゲ。




ここでは稜線から山頂にかけて多い。長坂道の稜線ではハクサンイチゲと混生していた。

2020/06/24 鳥海山長坂道にて。ミヤマキンバイと上左にハクサンイチゲ。



もう少しアップしてみよう。

2017/06/29 早池峰山にて。ミヤマキンバイ単品。



早池峰山で見た他の花との混生シーン。

2017/06/29 早池峰山にて。ミヤマキンバイとミヤマシオガマ。



2017/06/29 早池峰山にて。
ミヤマアズマギク、ミヤマキンバイ、ナンブイヌナズナ、ハヤチネウスユキソウなどの混生。



焼石岳では。

2017/06/17 焼石岳にて。ミヤマキンバイとハクサンイチゲの混生。



再び鳥海山、そして月山。

2015/05/30 鳥海山にて。ミヤマキンバイ単品。            2015/09/21 月山にて。ミヤマキンバイの紅葉。
 


ミヤマキンバイは草紅葉も奇麗だ。

2016/10/02 乳頭山にて。ミヤマキンバイの紅葉。



太平山や和賀山塊、真昼岳の稜線では、ミヤマキンバイに似たやや大柄な別の種類を見かけた。
花の色形はミヤマキンバイと全く同じだが、
葉(根出葉)は羽状複葉で大きく、ふつう5枚(まれに7枚、3枚もある)の小葉に分かれている。

これはミヤマキンバイではなく、エチゴキジムシロ Potentilla togasii であると識者から教えていただく。
この種類は高山植物とは言えない。主に山地帯の林縁などに分布するようだが、
和賀山塊や真昼岳では偽高山帯(亜高山帯に相当)の草地で咲いていた。

下界の草地や低山に多いキジムシロとの識別は難しい。
強いて言えば、頂小葉の形がキジムシロでは広卵形から楕円形、鈍頭から円頭なのに対し、

エチゴの方は菱状長楕円形から菱状倒卵形。
側小葉はキジムシロでは葉の基部に向かい徐々に小さくなるのに、

エチゴの方は下部の小葉は極端に小さくなるとのこと。これは難しい。

2016/05/28 太平山奥岳にて。エチゴキジムシロ。           2016/05/22 真昼岳にて。エチゴキジムシロ。
 


2017/11/03 真昼岳にて。エチゴキジムシロの草紅葉。



2018年6月下旬、秋田側(東成瀬村)から焼石岳に登ったところ、

前年の7月、ミヤマキンポウゲの大群生を見た場所(こちら。『イエローガーデン』と名付けた場所)が
別の黄色花にびっしりと覆われていた。
初めミヤマキンバイかと思ったが、小葉の数は三枚を超えていた。

エチゴキジムシロに似ているが、あまり自信は無いので、?マークをつけておいた。
この種類は八合目・焼石沼から九合目・焼石神社の手前にかけて多いが、
その先は衰退し、ミヤマキンバイに変わっていた。

2018/06/23 焼石岳焼石沼付近にて。エチゴキジムシロ?の群生。



2018/06/23 焼石岳焼石沼付近にて。エチゴキジムシロ?の群生。




ここでミヤマキンバイ、エチゴキジムシロ、
ミヤマダイコンソウの分布マップを。


エチゴキジムシロの山地帯の分布域は省略させて頂いた。


ミヤマダイコンソウ Geum calthifolium var. nipponicum
はミヤマキンバイによく似た黄色花だが、
花茎は直立し、
葉の形、大きさが全く違う。根出葉は羽状複葉だが、大きな円形の頂小葉がよく目立つ。
属もキジムシロ属 Potentilla ではなく、ダイコンソウ属 Geum だ。

ウイキペディアによると、
ダイコンソウの名は、大根草の意で、根出葉の小葉が大小交互してつく様子が、
アブラナ科のダイコン(大根)の葉に似ていることからつけられた
とあるが、
ミヤマダイコンソウの大きな丸い葉の形からそれを想像するのは困難だ。
もう少し実体に近い命名が出来なかったものかといつも思っている。

2015/06/21 秋田駒ヶ岳馬の背稜線にて。



上写真で岩上に咲くのはミヤマダイコンソウ。
中ほどの咲き終わった小型の植物はミヤマキンバイ。葉の形、大きさで違いは一目瞭然だ。

2017/07/10 秋田駒ヶ岳にて。ミヤマダイコンソウ。



この植物は東北では秋田駒ヶ岳に異常なほど多く、七月に登ると、エゾツツジと混じり合って咲いている。

このような花風景が見られるのは、国内広しといえども秋田駒ヶ岳と裏岩手の一部だけだ。

2017/07/10 秋田駒ヶ岳にて。ミヤマダイコンソウとエゾツツジ群生。



ミヤマダイコンソウは、奥羽山系では、八幡平から岩手山、秋田駒にかけては多いが、
和賀山塊では途切れ、焼石岳でまた現れる。

栗駒山には無いようだが、それより南に有るかどうかはよくわからない。

2021/06/10 焼石岳にて。ミヤマダイコンソウ。                   2020/10/09 焼石岳にて。ミヤマダイコンソウの紅葉。
    



日本海側では鳥海山や月山には無いようだが、朝日連峰まで南下するとまた現れる。

2019/06/26 以東岳にて。ミヤマダイコンソウ。



以上。


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