読んで、観て、呑む。 ~閑古堂雑記~

宮崎の某書店に勤める閑古堂が、本と雑誌、映画やドキュメンタリー、お酒の話などを、つらつらと綴ってまいります。

第21回宮崎映画祭プレイベント「みやざき自主映画祭2015」を観に行く

2015-08-31 07:34:53 | 映画のお噂
来月(9月)の19日から、9日間にわたって開催される、第21回宮崎映画祭。そのプレイベントとして「みやざき自主映画祭2015」が、昨日(30日)の午後から、宮崎市中心部にある商業施設・カリーノ宮崎の8階にある「シアター88」にて開催されました。



(宮崎映画祭本祭についての詳しい情報は、映画祭公式サイトをご参照を。また、当ブログのこちらの記事でもわたくし個人の映画祭注目ポイントをご紹介させていただきました)
今月(8月)の9日に宮崎市自然休養村センターで開催した「出張上映会」、そして一昨日(29日)に宮崎市中心部の商店街・若草通アーケード街で開催した「野外上映会」と続いた、映画祭プレイベントのトリを飾った、昨日の自主映画祭。これまでも映画祭本祭に先駆けたイベントとして毎年開催され、県内外のさまざまな自主映画作品を紹介してきました。
今回は宮崎県の学生さんや自主映画作家による作品、そして福岡県で開催されている「福岡インディペンデント映画祭」の優秀作など、全部で8作品が上映されました。また、上映の合間には、今回上映された自主映画のつくり手などが集まってのトークショーも開催されました。



まずはオープニングイベントとして、宮崎大学モダンJAZZ研究部による演奏がありました。スタジオジブリのアニメ映画の楽曲をアレンジしたものやジャズのスタンダード曲などを、30分にわたって演奏しました。なかなかいい演奏っぷりで、とりわけスタンダード曲はじっくりと聴かせてくれました。

オープニング演奏に続いて、まずは宮崎の学生さんが製作した作品が2本上映されました。
『迷探偵常荷迷(つねにまよう)』(林田修一監督、15分)は、宮崎大学映画研究部による作品。常に優柔不断な迷探偵、常荷迷。その事務所に押しかけてきた、全身に爆弾をくくりつけられた男を救うべく、犯人からの暗号ゲームに挑んでいく・・・という探偵コメディ。明らかに宮崎大学の構内だけで撮影済ませたな、という感じの微笑ましいつくりではありましたが、ユニークなキャラの人物たちを打ち出していたところはいい感じでした。
宮崎南高校の生徒さんによりつくられたのが『明晰夢』(得能佑介監督、20分)。生きることに希望を失った主人公が異世界でもう一人の自分と出くわし、「この世界で生きるのか、現実の世界で生きるのか」の二者択一を迫られる・・・。
出演者の台詞回しにはシロウトっぽさはあったものの、思いのほかレベルの高いつくりで面白く観ることができました。ダークファンタジー的な前半から、前向きなメッセージを込めた後半への展開もなかなか上手かったように思いました。
現在高校3年生という監督の得能さん。上映の合間のトークショーでは、「そろそろ受験なのでしばらく映画は休むけれど、卒業のときには卒業記念として1本撮りたい」と語っておられました。若い才能のこれからに、大いに期待したいと思います。

昨年の「福岡インディペンデント映画祭」の各部門で選ばれた優秀作からは、3作品が上映されました。
『はちきれそうだ』(藤井悠輔監督、8分)はアクション部門の受賞作。公園に集まる、いささかパッとしない男たちの前に、彼ら共通の憧れの的である巨乳アイドルが現れて・・・。そんなんアリかよ、という無茶振りな展開を一気に観せるパワフルな作品でした。
『彼女の告白ランキング』(上田慎一郎監督、19分)はコメディ部門の受賞作。「どんなことがあっても好きであり続ける」とプロポーズしてきた彼氏に対し、彼女が「その前に告白したいことがある」という。告白したいという事柄はなんと17もあり、しかもそのいずれもが、彼氏の想像を遥かに超えるような衝撃的なものだった・・・。
今回の自主映画祭で上映された作品の中で、一番面白かったのがこの作品でした。ヌルい恋愛コメディっぽいオープニングから一転、ムチャクチャな展開がラストまで怒涛のごとく繰り広げられていき、もうひたすら大笑いしながら観ておりました。自主映画ながら、CGもわりとよくできておりました。
『あの、ヒマワリを探しに』(湯浅典子監督、24分)は40分部門のグランプリ作品。会社の上司らと飲んでいた居酒屋にあった思い出ノートに、母校の小学校のヒマワリについての書き込みを見つけた主人公は、ヒマワリがどうなっているかを確かめようと母校へと向かうが・・・。もう少しだけ長い時間をとってじっくり描いてもよかったかなあ、と個人的には感じましたが、失われたものへの哀感がていねいな映像で綴られていたのには好感を持ちました。

宮崎の自主映画作家の作品からは2本が上映されました。
『少女ときつね』(松元七奈監督、2分)は、全編3DCGにより描かれた少女ときつねのメルヘン。CGによるキャラクターの動きにはややぎこちなく思えましたが、キャラクターの造形はいい感じでした。宮崎にもこうやって3DCGのアニメをつくっている方がいるんだなあ、と感心いたしました。
みやざき自主映画祭で毎年、作品を発表しているギルド#010監督の新作が『死んだ女 3』(55分)。夢の中に出てきた、戦争の時代に恋人と死に別れた女の幻影を取り憑かれたように追い求める男子学生と、そんな彼に苛立ちながらも想いを寄せる女子学生を描いた連作の第3弾。前2作に見られた、過去と現在が交錯する幻想的な雰囲気を残しつつも、2人の学生のすれ違いをユーモアたっぷりに綴ったりもしていて楽しめました。

今回は、宮崎映画祭が初めて作ったというCM作品『もう一度妻を映画に誘おう』(なすありさ監督、5分)も、メイキング映像とともに上映されました。最近めっきり、妻とともに出かけることもなくなっていた夫が、息子からもらったチケットを手に妻を誘い、映画祭に出かけていく・・・というシチュエーション。映画祭に関わっているスタッフとその関係者がちょこちょこ出ていたりしていて、アットホームな感じで和みました。
プログラム終了後、映画祭本祭で上映される全14作品が、予告編とともに紹介されました。個人的には、ドキュメンタリー4作品の予告編にワクワクさせられ、より期待感が高まりました。また、『地獄の黙示録』や『ゆきゆきて、神軍』の予告編には、「こういうスゴい映画が作られていた時代があったんだなあ」とあらためて感慨に浸ったりも。

今回の「みやざき自主映画祭」。惜しむらくは、例年に比べて若干ですが、観客の数が少なめだったことでした。商業映画とはまた違った、自主映画の楽しみを知る機会であるとともに、新しい才能が世に出る機会の一つでもあるだけに、もっと多くの人たちに、このような機会があることを認知していただけたらなあ、と思うのです。
ともあれ今回も、地元宮崎で生まれつつある若く新しい才能に接することができたのは、収穫だったと思います。

さあ、宮崎映画祭本祭まで、残すところあと3週間ほどに迫ってまいりました。今年も、面白く、優れた映画と出逢えることを、キリンのごとく首を長くしながら、楽しみに待ちたいと思います!

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