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映画『世界の果ての通学路』 世界の子どもたちに教えられた「学ぶことは希望」ということ

2015-01-03 23:13:16 | ドキュメンタリーのお噂
『世界の果ての通学路』(2012年、フランス)
原題=Sur le chenin de l'ecole
監督=パスカル・ブリッソン
1月3日(土)午後5:30~午後6:50、NHK・Eテレで放送(日本語吹替版、2カ国語放送)


野生動物たちが闊歩する平原、大きな岩がゴロゴロする山道、橋の架かっていない川•••。そんな難関が待ち構えている道を、何時間もかけながら学校へと通う世界4ヶ国の子どもたちの姿を追ったフランスのドキュメンタリー映画です。
昨年日本でも公開され、大いに評判となったこの作品、わたくしはきょう(1月3日)テレビ放映された日本語吹替版で鑑賞いたしました。

ケニアに住む11歳の少年、ジャクソンくん。長男として水汲みや炭焼きの仕事を手伝う彼は、妹とともに毎日5時30分には家を出て、2時間かけて登校します。家を出るとき、両親は兄妹が無事に登校できるよう祈りを捧げます。
平原を通り抜ける通学路で兄妹が出くわすのが、野生動物の群れ。中でも一番気をつけなければならない存在が、ゾウでした。ケニアでは毎年4~5人の子どもが、ゾウに襲われて亡くなっているといいます。
おりしも、登校するジャクソンくん兄妹の目の前にも、草むらから見え隠れするゾウの家族の姿が。兄妹は父親から教わった通り、ひたすら走ってその場から遠ざかろうとします。途中、妹がつまずいて転んでしまいますが、なんとか物陰に駆け込むことができました。息を潜めてゾウたちが遠ざかっていくのを待つ兄妹。やがて、ゾウたちが立ち去っていったことを確認した兄妹は、近くにあった木の実を頬張りつつ、大きな声で歌を歌います。そして再び学校へ向かって歩いていくのでした•••。

モロッコに住む12歳の少女、ザヒラさん。それまで女子に対する教育が行われていなかった当地にあって、彼女は家族の中でも初めて教育を受ける世代となりました。そんなザヒラさんを、家族はこぞって支援します。祖母は「お前たちは恵まれている。だからしっかりと勉強して、人生を切り開くんだ」と激励するのでした。
ザヒラさんは毎週月曜日、片道22kmもの道のりを4時間もかけて学校の寄宿舎へと通います。途中、友達2人と合流して学校へと急ぎますが、大きな岩がゴロゴロする山道を歩くうちに、友達の一人が足を痛めてしまいます。このままでは学校に遅れてしまう、と3人はヒッチハイクで学校へ向かうことを決意します。何台かの車ににべもなく断られた末、親切なトラック運転手の計らいで荷台に乗せて行ってもらうことができました。
かくて一直線に学校へ•••と思いきや、敬虔なイスラム教徒である運転手は、途中でトラックを止めて礼拝に入ったりするのでした。その様子をやきもきしながら荷台から待つザヒラさんたち3人。果たして、3人は遅刻せずに学校に辿り着くことができるのでしょうか•••。

アルゼンチンのパタゴニアに住む11歳の少年、カルロスくん。父親のヤギ飼いの仕事を手伝っている彼は、馬を上手に乗りこなすことができます。毎日1時間30分かけての妹との登校も、もちろん馬に乗ってです。手にするのは、父親からお守りとして託された赤いリボン。
通学路の途中には、川に沿った足場の悪い場所もあったりしますが、カルロスくんは巧みな手綱さばきで乗り切っていきます。そんな彼に妹は「前に座らせて」とせがみます。最初のうちは父親からダメと言われてるから、と拒否していたカルロスくんでしたが、やがて「ナイショだからな」と言って、妹を前に座らせるのでした•••。

インドのベンガル湾沿いの漁村に住む13歳の少年、サミュエルくん。未熟児として産まれてきた彼は手足を十分に動かすことができず、移動には車椅子が欠かせません。とはいえ、2人の弟とともに元気にクリケットに興じたり、いろいろとジョークを飛ばし合ったりと、前向きに日々を過ごしています。
サミュエルくんは2人の弟に車椅子を動かしてもらいながら、1時間15分かけて登校します。とはいえ、車椅子は寄せ集めの材料で作られた急ごしらえのもので、お世辞にも動かしやすいとはいえません。それでも2人の弟は、デコボコ道や川の中といった悪路もある通学路を、時にはケンカしながらも一生懸命、兄の乗った車椅子を押したり引いたりしながら進みます。しかし、学校まであと少しというところで、ついにタイヤが外れてしまいます。
なんとか修理屋さんでタイヤを元に戻してもらうことができ、無事に学校へ着いた兄弟3人。そこへすっ飛んできて出迎えたのは、サミュエルくんの級友たちでした。彼らはサミュエルくんをねぎらうように抱きかかえ、共に教室へと向かうのでした•••。

映画の最後、登場した子どもたちが将来への夢と希望を語ります。
「ちゃんとした教育を受けたい。そうしたら自立することができるから」と語ったケニアのジャクソンくんの夢は「パイロットになって、いろんな世界の空を飛んでみたい」
「夢は医者になること。そして、特に貧しい人を救えるようになりたい」というモロッコのザヒラさんは、もっと多くの人が教育を受けるようになってほしい、との願いを語ります。
アルゼンチンのカルロスくんは「これからも先祖代々の土地に住み続けたい。そして医者になって、恵まれない人の力になりたい」
自分のような身体的ハンディを持っていたがために、学びの機会を奪われてしまった友人のことを語ったインドのサミュエルくんは、「うちは貧乏だけども、こうして勉強する機会を与えてもらっているので、とても感謝している」と続けます。将来の夢については「医者になって、ぼくみたいな子どもが歩けるようにしてあげたい」と•••。

決して恵まれているとはいえない環境にあっても、いや、それだからこそ、「学び」への一途で真剣な意欲と思いを持って前向きに生きる子どもたちの姿は、とてもすがすがしい感銘を与えてくれました。登場した子どもたちが将来への夢と願いを語る終盤では、不覚にも目頭が熱くなりました。
同時に、自分自身の子どもの頃のことを、イヤでも思い返さずにはいられませんでした。
子どもの時のわたくしにとって、勉強とはただただ億劫なことでしかありませんでしたし、ましてや将来への夢や希望などをしっかりと考えたことも、ほとんどなかったように思います(それゆえ、今のわたくしはあまり大したオトナになっていないわけなのですが•••)。オレも、子どもの時にこんな一途で真剣な「学び」を経験しておきたかったなあ•••と、映画を観ながらつくづく感じました。
自分の夢を叶えるためにも、そして将来の選択肢を増やすためにも、「学び」というのは必要なこと。その積み重ねの中から「希望」というものは生まれてくる•••。本作に登場する子どもたちから、そんなことをあらためて教えられたように思います。

もういいトシになった「オトナ」ではありますが、これからもいろいろなことを学んで自分の糧にしていくとともに、それを少しでも人さまのお役に立てるよう、活かしていきたいと思っております。
どうぞ今年も、当ブログをよろしくお願い申し上げます。

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