読んで、観て、呑む。 ~閑古堂雑記~

宮崎の某書店に勤める閑古堂が、本と雑誌、映画やドキュメンタリー、お酒の話などを、つらつらと綴ってまいります。

【閑古堂の年またぎ映画祭&映画千本ノック17・18・19本目】『暴力脱獄』『明日に向って撃て!』『スティング』

2023-12-31 10:44:00 | 映画のお噂
年末年始のテレビはロクなのがないわ〜、とお嘆きのそこのアナタ、年末年始は映画三昧に限りますぞよ!ということで今年もまた、個人的年越し映画祭「年またぎ映画祭」をやることにいたします。
まず最初のパートは「永遠のヒーロー、ポール・ニューマン&ロバート・レッドフォード特集」。ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの共演作2本と、ニューマンの単独主演作の特集であります。

年またぎ映画祭1本目&映画千本ノック17本目『暴力脱獄』Cool Hand Luke(1967年 アメリカ)
監督:スチュアート・ローゼンバーグ
製作:ゴードン・キャロル
原作:ドン・ピアース
脚本:ドン・ピアース、フランク・R・ピアソン
撮影:コンラッド・ホール
音楽:ラロ・シフリン
出演者:ポール・ニューマン、ジョージ・ケネディ、J・D・キャノン、ストローザー・マーティン、ジョー・ヴァン・フリート、ハリー・ディーン・スタントン
Blu-ray発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

社会や権力が押しつけるルールに対して反抗的な姿勢をとるルーク(ポール・ニューマン)は、パーキングメーターを壊した罪で捕まり刑務所へ収監される。はじめは顔役的存在であるドラッグ(ジョージ・ケネディ)をはじめとする囚人たちから「新入り」として軽く扱われていたルークだったが、刑務所長(ストローザー・マーティン)や看守らによる非人間的な扱いにも屈しない彼は、やがてドラッグをはじめとする囚人たちから尊敬されていく。そしてある日、ついにルークは刑務所からの脱走を試みるのだったが・・・。

1960年代という時代を反映した反体制的ヒーロー像を描き出し、多くの人たちから支持された傑作であります。人懐っこい笑顔を見せながらも、ルールや規則の押しつけ、そして権力の横暴には不屈の反骨精神で抗っていく、ポール・ニューマン演じる主人公ルークのカッコいいこと。いくら不合理でおかしなことであっても、「ルール」と言われれば何の疑問も持たずに、羊のごとく従順になってしまう骨のないヒトたちばかりの(コロナ莫迦騒ぎにおいてあからさまとなりましたねえ)令和ニッポンにおいて、あらためて観直されるべき一本でありましょう。
共演陣も実力派揃いです。後年は『エアポート』シリーズ(1970〜79年)などのパニック映画の常連となったジョージ・ケネディですが、本作ではルークと深い絆を育んでいくドラッグを人間味たっぷりに演じていて、実に魅力的でした(本作でアカデミー助演男優賞を受賞)。また、刑務所長を演じたストローザー・マーティンの悪辣ぶりもお見事で、ルークに向かって放った「ここにいるのは言葉のわからん男だ」は、映画史に残る名セリフとなっています。まだ有名になる前のデニス・ホッパーや、原作者であるドン・ピアース(共同で脚本も担当)も、囚人役で出演しております。

年またぎ映画祭2本目&映画千本ノック18本目『明日に向って撃て!』Butch Cassidy and the Sundance Kid(1969年 アメリカ)
製作:ジョン・フォアマン
監督:ジョージ・ロイ・ヒル
製作総指揮:ポール・モナシュ
脚本:ウィリアム・ゴールドマン
撮影:コンラッド・L・ホール
音楽:バート・バカラック
出演者:ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、キャサリン・ロス、ストローザー・マーティン、ジェフ・コーリー
Blu-ray発売元:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント(現 ウォルト・ディズニー・ジャパン)

盗賊団のリーダーとして銀行強盗を繰り返し、西部中に悪名を轟かせていたブッチ・キャシディ(ポール・ニューマン)とサンダンス・キッド(ロバート・レッドフォード)のコンビ。盗賊団のメンバーから持ちかけられた列車襲撃に成功し、二度目の列車襲撃を試みたブッチとサンダンスだったが、鉄道会社が差し向けた最強の追跡者たちが延々と二人を追っていく。逃げきれないと判断した二人は、教師のエッタ(キャサリン・ロス)を伴って、南米のボリビアで再出発を図ったのだったが・・・。

現在もなお伝説的な存在として語られ続けているアウトロー、ブッチとサンダンスの実話をもとに描いたジョージ・ロイ・ヒル監督の名作であります。バート・バカラック(今年2月に逝去)の音楽によって醸し出されるノスタルジックなムード、撮影監督コンラッド・L・ホールによる美しい映像、そして至る所に散りばめられたユーモアが素晴らしく、悲劇的な結末にも関わらず、観終わった後に一種の心地よさが感じられました。
ポール・ニューマンが演じる機転の効くブッチと、ロバート・レッドフォード演じる早撃ちの名人サンダンスのバディぶりが最高です。ボリビアに渡った後、最初に働いた銀行強盗で現地の言葉に悪戦苦闘するくだりや、警官隊に追い詰められながらも「次はオーストラリアに」などといったやりとりをする最後の場面など、いい場面がたくさんありました。
なによりも素晴らしかったのが、いまや映画音楽の名曲として知られる「雨にぬれても」をバックにして、ニューマンがキャサリン・ロス演じるエッタを前に乗せて自転車を走らせる場面。これを観ていると、なぜだか目頭が熱くなってしまったのでありました・・・。
これから先、何度でも観直したい一本であります。


年またぎ映画祭3本目&映画千本ノック19本目『スティング』The Sting(1973年 アメリカ)
監督:ジョージ・ロイ・ヒル
製作:トニー・ビル、マイケル・フィリップス、ジュリア・フィリップス
製作総指揮:リチャード・D・ザナック、デイヴィッド・ブラウン
脚本:デイヴィッド・S・ウォード
撮影:ロバート・サーティース
音楽:スコット・ジョプリン(作曲)、マーヴィン・ハムリッシュ(編曲)
出演:ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード、ロバート・ショウ、チャールズ・ダーニング
Blu-ray発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

詐欺師のジョン・フッカー(ロバート・レッドフォード)は、通りすがりの男から大金の入った封筒をせしめるが、それは大物ギャングであるドイル・ロネガン(ロバート・ショウ)へと渡されるはずの金だった。そうとは知らずに金を我がものとしたフッカーだったが、そのことで自らの師匠的な存在だったルーサーを殺されてしまう。復讐に燃えるフッカーは、ルーサーから紹介されていた「大物詐欺師」のヘンリー・ゴンドーフ(ポール・ニューマン)に協力を依頼する。はじめは乗り気でなかったゴンドーフだったが、やがてロネガンに対する敵愾心に火がついていく。かくて二人は多くの仲間とともに、ロネガンを陥れるべく大バクチに打って出ることに・・・。

『明日に向って撃て!』に続き、監督のジョージ・ロイ・ヒルと主演のポール・ニューマン&ロバート・レッドフォードがタッグを組んだ、犯罪サスペンス・コメディの傑作です。
まことにお恥ずかしいことに、今回が初めての鑑賞となったのですが、脚本のデイヴィッド・S・ウォード(1989年の『メジャーリーグ』とその続篇では監督も手がけました)による完璧な物語構成と、それを入念に映像化したヒル監督の職人技によって作り上げられた本作の面白さにとことん酔い、二転三転する後半のどんでん返しに「だまされる快感」をたっぷりと味わうことができました。そして観終わったあと即座に「これはまた最初から観なければ!」と思った次第であります。
洗練されたユーモアによるコミカルな味わいもさることながら、果たしてゴンドーフたちの計画は成功するのか、フッカーは追っ手から逃れられるのだろうか、といったハラハラドキドキのサスペンスも最高でした。スコット・ジョプリンの作曲した曲を、マーヴィン・ハムリッシュが編曲した(本作でアカデミー編曲・歌曲賞を受賞)ラグタイム・ピアノの音楽も効果的に使われていて、本作のムードと魅力を大いに高めてくれています。
ブッチとサンダンスをさらに洗練させたかのようなバディぶりを見せてくれる、ニューマンとレッドフォードの主演コンビも魅力的ですが、『007/ロシアより愛をこめて』(1963年)や『JAWS/ジョーズ』(1975年)でも存在感を見せつけていた名優、ロバート・ショウによるロネガンの演技も素晴らしいものがありました。「コイツを怒らせるととんでもないことになりそう」という雰囲気を感じさせる貫禄と迫力はさすがで、巧みな計略と機知によって強い者に一泡吹かせる、本作の面白さと醍醐味を引き立ててくれました。


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