読んで、観て、呑む。 ~閑古堂雑記~

宮崎の某書店に勤める閑古堂が、本と雑誌、映画やドキュメンタリー、お酒の話などを、つらつらと綴ってまいります。

2月刊行予定文庫新刊、超個人的注目本10冊(ただし新潮文庫メイン)

2014-01-09 23:55:44 | 本のお噂
来月2月に刊行予定の文庫新刊の中から、わたくしの興味に引っかかった書目を10冊、ピックアップしてみたいと思います。
と申しましても、来月は新潮文庫からノンフィクション好きとしては注目しておきたいタイトルがいろいろと文庫化される予定のため、今回は新潮文庫がメインという、いつも以上に偏りのあるチョイスとなっていることを、あらかじめお断り申し上げておきます。
まあ、主な興味関心がノンフィクション系ばかりのわたくしによる、この「超個人的注目本」リスト、もともと小説好きにはほとんど役に立たないものではありますでしょうし•••などと、うだうだ弁解めいたことでお目汚ししておりますが(汗)、もし皆さまにも引っかかるタイトルがございましたら幸いに存じます。
刊行データについては、書店向けに取次会社が発行している情報誌『日販速報』の1月13-20日号の付録である、2月刊行の文庫新刊ラインナップ一覧に準拠いたしました。発売日は首都圏基準ですので、地方では1~2日程度のタイムラグがあります。また、書名や発売予定は変更になることもあります。
なお、12月刊行予定としてお伝えしていた『映画を作りながら考えたこと』(高畑勲著、文春ジブリ文庫)は、2月7日の刊行に変更となったようですので、ここにあらためてお知らせしておきます。

『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』上・下 (増田俊也著、新潮文庫、28日発売)
日本柔道史上最強といわれていた柔道家、木村政彦。やがてプロレスに転向した木村は、全国民注視の中で力道山と対戦する。「試合は引き分け」と事前に決められていたにもかかわらず、力道山は木村を一方的に叩きのめす。大きな屈辱を受けた木村は、短刀を手に力道山をつけ狙ったのだったが•••。
木村の驚くべき強さをめぐるエピソードの数々、師弟関係、そして垣間見える昭和裏面史•••。18年にわたる取材で書き上げられた、大宅壮一ノンフィクション賞受賞の大作が、ついに文庫化。格闘技に詳しいわけではないわたくしですが、これはぜひ読んでみたいですね。

『「弱くても勝てます」 開成高校野球部のセオリー』 (高橋秀実著、新潮文庫、28日発売)
東大進学者ナンバー1という超優秀進学校、開成高校。その野球部は練習時間も設備も何もかも不十分ながら、東京大会でベスト16まで勝ち進んだという。送りバントもサインプレーもなく、やたらエラーも多いという開成高校の常識はずれの強さ(?)の秘密は「どさくさ」にあった•••。
ノンフィクション系オススメ本紹介サイト「HONZ」で取り上げられたときには、そのレビューにサイトがパンク状態になるほどのアクセスが集中したという、話題を呼んだ傑作ノンフィクションも、ついに文庫化されます。読みたいと思いつつもなかなか読めずにいたので、これもぜひ押さえておきたいと思います。

『遺体 震災、津波の果てに』 (石井光太著、新潮文庫、28日発売)
東日本大震災から3年を前に、大きな反響を呼んだこのルポルタージュも文庫化されます。
津波により甚大な被害を受け、1100人もの命が失われた岩手県釜石市。おびただしい数の死者を前に、生き延びた人びとは悲しむ時間もないまま、立ち止まることも許されなかった•••。現地の人びとへの粘り強い取材で、遺体安置所をめぐる極限状況と、その中で必死に行動した釜石の人びとを描き出します。あらためて、読み直したい一冊です。

『救命 東日本大震災、医師たちの奮闘』 (海堂尊著、新潮文庫、28日発売)
こちらも東日本大震災をテーマにしたノンフィクション。『チーム・バチスタの栄光』などの医療ミステリーで知られる海堂尊さんが、凄絶な状況下にあって命を救うべく力を尽くした9人の医師たちに取材し、その闘いを記録した一冊。こちらもまだ未読でしたので、ぜひ読みたいと思います。

『フェルメールになれなかった男 20世紀最大の贋作事件』 (フランク・ウイン著、小林頼子ほか訳、ちくま文庫、6日発売)
芸術家としては挫折を味わいながらも、絵の贋作作者として成功を収め、歴史上最も有名な贋作作者となった男、ファン・メーヘレン。その完璧な技術で専門家やナチスをも欺いたメーヘレンの人生と、偽造を暴こうとする専門家たちとの攻防などを、膨大な資料をもとに描き出した一冊です。これは美術愛好家ならずとも面白そう。

『書物愛 日本篇』 (紀田順一郎編、創元ライブラリ、27日発売)
長年にわたり、書物に関する著作を数多く出しておられる紀田順一郎さんが、書物をテーマにした知られざる名作や隠れた傑作を発掘した、本好き必携の短篇アンソロジー。収録されるのは夢野久作や野呂邦暢などの作品9編。フローベールやアナトール・フランスなどの作品10編を収録した『海外篇』も同時文庫化。

『リーマン・ショック・コンフィデンシャル』上・下 (アンドリュー・ロス・ソーキン著、加賀山卓朗訳、ハヤカワ文庫NF、7日発売)
経済政策を司る政府の要人や、巨万の富を得ていたウォール街のCEOたちは、未曾有の経済危機を前にしてどう考え、行動したのか•••。ニューヨーク・タイムズのトップ記者が、リーマン・ショックの裏面に鋭く迫ったノンフィクション。あの危機からの教訓を再度見直すためにも興味のある一冊であります。

『SYNC なぜ自然はシンクロしたがるのか』 (スティーヴン・ストロガッツ著、長尾力訳、ハヤカワ文庫NF、21日発売)
ハヤカワ文庫NFからもう一冊。自然界や人間界に見られる「同期」現象をめぐる複雑な仕組みをモデル化する「非線形科学」の第一人者が、数式を使わずに巧みな比喩を駆使して解説していくサイエンス書。「非線形科学」とは初めて知ったコトバですし、まだイメージしにくいところもありますが、なんか面白そうな感じが。

『完本 ベストセラーの戦後史』 (井上ひさし著、文春学藝ライブラリー、7日発売)
戦後初のベストセラーとなった『日米会話手帳』をはじめ、『完全なる結婚』『日本人とユダヤ人』『日本列島改造論』などなど•••。戦後日本の話題をさらったベストセラーを通して社会と世相を見つめ直します。「完本」ということは、1995年に刊行された単行本2冊分と、単行本化されなかった分を含めて一冊に収めたもののようですね。

『モンゴルとイスラーム的中国 民族形成をたどる歴史人類学紀行』 (楊海英著、文春学藝ライブラリー、7日発売)
文春学藝ライブラリーからももう一冊を。3年間にわたる現地でのフィールドワークにより、複雑な民族構図と錯綜する宗教模様を踏査。遊牧民やイスラームの視点から中国西北部を凝視した本、とのこと。歴史と民族、宗教が交差した地域の知らなかった相貌が見えてきそうで、興味が湧きます。

余談ながら、わたくしが準拠した2月刊行文庫新刊一覧の新潮文庫の著者名の欄では、『「弱くても勝てます」』の著者である高橋秀実さん(男性の書き手であります、念のため)の名前は、かくのごとく記されておりました。

「高橋秀美」。ヒデミネさん、えらく麗しい女性っぽさを醸し出すようなお名前になっとりました。




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