読んで、観て、呑む。 ~閑古堂雑記~

宮崎の某書店に勤める閑古堂が、本と雑誌、映画やドキュメンタリー、お酒の話などを、つらつらと綴ってまいります。

【短期集中連載・別府よいとこ美味いとこ】 第6回 湯の町情緒溢れる鉄輪温泉街(前編)

2016-07-09 17:47:06 | 旅のお噂
「別府八湯」と呼ばれる、それぞれに特徴のある別府の8ヶ所の温泉エリアの中でもとりわけ人気があるのが、別府市北部の山側に位置している鉄輪(かんなわ)温泉であります。「地獄めぐり」の中心エリアとして多くの観光客を集める鉄輪は、ちょっと懐かしい湯の町情緒が溢れる温泉街の町並みも、大きな魅力です。
旅館やお土産屋さん、飲食店などが立ち並ぶ石畳の道のところどころからは湯気が立ち昇り、この地の温泉の豊かさを実感することができます。

温泉街には、かつては旅館だったという明治時代の建物や、旅館の女中さんたちが井戸端会議に興じつつ利用していたという洗濯場など、古い建物がいくつか残っていたりするのも、鎌倉時代から続く温泉郷の歴史を偲ばせてくれます。


また、1日に2回上演される大衆演劇の劇場もあり、その色鮮やかな大看板がかかっていたりするのも、古きよき温泉街という雰囲気を高めてくれて、なかなかいい感じであります。

鉄輪温泉にある旅館の看板でよく目にするのが「貸間(かしま)」という文字。もともとは、湯治客が自炊しながら長期滞在するための低料金の宿のことで、この地が昔から湯治場として長く親しまれてきたことが窺えます。

これら「貸間」旅館での自炊で利用されているのが、温泉の噴気で食材を蒸し上げる「地獄蒸し」。高温の噴気で蒸し上げることにより、食材の旨味が凝縮されるというこの「地獄蒸し」を、観光客が気軽に体験できるのが「地獄蒸し工房鉄輪」です。お昼どきになるとたくさんのお客さんで賑わう人気スポットとなっています。
「地獄蒸し工房鉄輪」の隣には、無料で利用できる足湯、それに「足蒸し」がありますので、温泉街散策で疲れた足をゆっくり休ませてみてはいかがでしょうか(足蒸しはけっこう熱いけど)。

やはり温泉街散策の途中で立ち寄ってみたいのが「鉄輪豚まん本舗」。地元の主婦の皆さんがこしらえる豚まんの中には、ちょっぴり辛味を効かせた具がたっぷりで病みつきになりそうな美味さ。もちろん、これも温泉の蒸気で蒸し上げたものです。

温泉のおかげで一年中温かい鉄輪はネコたちにも住みやすいところのようで、温泉街では至るところでネコの姿を見かけることができます。温泉好きはもちろん、ネコ好きにとっても天国のような場所なのであります。


そして、鉄輪に来たらぜひ目にしておきたいのが、「見晴らし坂」のてっぺんから一望する、鉄輪温泉郷と別府の街のパノラマです。温泉街の中心通りである「いでゆ坂」から細い路地に入り、斜面に立ち並ぶ民家の間を縫うように続く、さらに細〜い坂道を登り切ると、あちこちから湯けむりが立ち昇る鉄輪温泉郷と、高崎山をバックにした別府の眺めが視界いっぱいに広がります。



その素晴らしい眺めは、別府の旅で忘れることのできない思い出になることでしょう。

* 記述の内容は、2016年前半の時点に基づいたものとなっております。

(後編に続きます)