一級建築士の「住宅のヒントと秘訣」

注文住宅を考えたら「住宅の考え方が180度変わる」住宅勉強会やセミナー、他では聞けない住宅や建築がわかるブログ。

日米住宅ローンの違い

2008年08月29日 13時34分46秒 | 建築家の日記
みなさん、こんにちは。ミタス一級建築士事務所の清水です。

サブプライム問題が、日本の景気にも大きく影響しているようですが、
予想以上に長引いていますね。


しかし、米国と日本の住宅ローンとは大きく異なる点があります。
その違いは、住宅の考え方の違いでもありますので、ご存知の方も
多いと思いますが、紹介しておきましょう。

日本では、例えば5000万円のローンを住宅を担保に組み、
返済できなくなった場合、住宅を取られるだけでなく、
さらに借金が残る場合が多いですね。

バブルの崩壊時で、皆さんの中でも経験された方がいらっしゃるかもしれません。

例えばの例では、

7千万円の家と土地を、5千万円のローンを組んで購入して、
返済できなくなったので、売却しようと思ったら、3千万円でしか売れない。

家を取られた上に、さらに2千万円の借金だけが残ることになるわけです。


でも、米国の場合は異なります。
例えば、5千万円でその家を担保にローンを組みます。
支払えなくなったら、その家を取られて手放せば良いだけです。
それだけで、支払い責任は消えます。

もちろん、頭金やその他諸々の経費や現金負担分は
損をすることになりますが、基本的にはそういうことなのです。

今回のサブプライムローン問題のように住宅の価値が下がった分は、
金融側にリスクがあります。

日本のように借りた側が値下がりのリスクを負うという考え方は
無いのです。

そのため、今回、金融不安が米国で起きているのですが、
この考え方の背景には、住宅に対して日米での大きな考え方の
差があります。


欧米では、建物は日本のように耐久消費財という考え方をしていません。
あくまで社会資産でもあり、消費財ではないのです。

従来の米国では、中古住宅を売却するときには、購入時より値上がりしてる
のが当たり前だったのです。中古を買って、次に売るときでさえ、
値上がりしているのが普通だったのです。


これは、日本の高度成長時代に、建物の価値は無くなっても土地の値段が
上がって儲かったというものではなく、

建物の価値が、物価と同じようにあがっていくからです。

さらには、建物に手を加えて、内装であっても、外部建具や外装であっても
アップグレードしていけば、その価値も価格に反映されるのです。

日本のように30年程度で建替えではなく、もっともっと長く持つのが
当然という考え方をしているので、手入れをするのです。

この考え方の差から生じる、住宅の差はかなり重大だと私は昔から考えています。


この違いは、

造り手の立場で考えて建てられている日本の住宅と、

住まい手の立場で考えられている欧米の住宅の発想にも強く関連していると
私は、言い続けています。


その根拠を詳しく述べると長くなりますが、
社会的な時代背景を考えて遡っていけば、これはすぐにわかることでもあります。

ですから、素晴らしい技術を世界に認められている日本であっても、

今の考え方のままでは、

日本の住宅が先進国に輸出されることは、永久にないでしょう。


みなさんが、家を選択される場合に、表面的なことしか考えられないのは、
こういう考え方をご存知ないでしょうし、理解しにくいと思いますので、
止むを得ないでしょう。


建築業界で真面目に仕事をしているほとんどの方でも、

このことに気付かず、また疑問も持つことなく、誠実に仕事をしているのが…
残念ながら、日本の建築業界の現状だと思います。




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