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放送局型123号受信機(初期型) 修理記録 その1(令和4年08月04日) 

2022年08月04日 09時17分30秒 | 05真空管式ラジオ

放送局型123号受信機(初期型) 修理記録 その1(令和4年08月04日) 
その1(令和4年08月04日) 修理前の事前確認作業

断捨離を決断して、ほとんどの無線機、ラジオや真空管は、寄贈や売却をおこなってきました。
唯一例外としては、地1号受信機とアマチュア無線機など数点ですが、どうしても3台の放送局型123号受信機を手放すことができません。
今回は、この放送局型123号受信機の中でも木製ケースもスピーカーもないシャーシのみですが、大変珍しい放送局型123号受信機(初期型)の修理を行うこととします。

 
ネットで放送局型123号受信機(初期型)を検索すると、下図が設計仕様であることが判ります。


 よくシャーシを見ると、放送局型123号受信機(初期型)の設計仕様と真空管の配置などが大幅に異なっています。
本来はどのメーカーでも同一仕様で製造するのが認定機としてのきまりのはずです。
そういった意味では、特異な放送局型123号受信機(初期型)といえます。
とはいっても、シャーシのみの機材のためメーカーなどの情報もありません。
勿論、放送局型123号受信機は設計仕様を統一しており、どのメーカーが作ったのかは木製ケースの銘板や貼付された紙製の配線図などに記載されているため、ケースがないと全く情報はつかまえられません。
しかしながら、このシャーシを眺めていると本来放送局型123号受信機のシャーシは銀色に着色しているはずなのですが、本機は茶色の塗装がなされています。
この茶色の塗装を行っている会社は、タイガー電機株式会社(1936年タイガー電機を創立,1943年戸根無線に名称変更,1950年に倒産)のみのようです。
さらに、観察するとシャーシの高さ幅も短いことが判ります。
更にネット検索すると、タイガー電機製でも放送局型123号受信機(初期型)の設計仕様を踏襲した正規品もあることが判明しました。
これらの情報から類推すれば、タイガー電機は、昭和15年(1940年)10月に認定された放送局型123号受信機(初期型)は特異な仕様で当初は製造し始めて、ある時点からは正規品に製造を転換したものと思われます。
大変疑問なのは、日本放送協会が本来の設計仕様ではないものをよく認定したことです。

修理メモ
1.真空管チェックについて
本機の使用真空管は日本独自規格のため、米軍のTV-7では測定データがありません。
ANTIQUE JAPANESE RADIO/日本の古いラジオのホームページに、追補データと整理されていますので、これら真空管のテストが可能です。
TV-7/U* Supplemented Data/追補データ参照のこと
12Y-R1 12.6 FR0-2340 21 0 B 3 31
12Y-V1 12.6 FR0-2340 21 0 B 3 36
12Z-P1 12.6 GR4-2350 39 – B 3 40
24Z-K2 #1 25 GR0-5040 0 30 A 7 56
              #2 25 GR0-2030 0 30 A 7 56

2.安定抵抗管の説明と代用品の考え方について
今日においては、安定抵抗管は貴重品であると同時に、その機能についても知る人も少なくなっています。
ラジオ受信機調整修理法(一般家庭用並びに国民型受信機編)からの抜粋です。
(1)放送局型123号において、安定抵抗管を用いる場合
安定抵抗管は水素を封入した硝子管内へ鉄の線條を挿入したものであって、これに電流を通ずる時は或る範囲内の電圧変化に対して殆んど電流が変化しないという特性がある。この特性を利用すれば、たとえ電灯線の電圧が或る範囲で変化しても、ヒーター回路を通じる電流は殆んど変化せず、受信機を安定に動作させることができるのである。
(2)抵抗を用いる場合
本機123号受信機のヒーター回路は、12Y-V1、12Y-R1、12Z-P1、24Z-K2及びパイロットランプ(3V)の合成電圧は約63Vとなる。そして、電灯線の交流電圧を100Vとすれば、不足電圧は100-63=37Vである。この不足電圧37Vを抵抗(R)内で電圧降下すれば良いのであって、この際Rを通ずる電流は0.15Aであるから求むる抵抗の値は
R=37/0.15=247Ω
次にR内で消費される電力(W)は
W=(0.15)×(0.15)×247=5.6W
即ちRとしては250Ω10W程度のものを使用すれば良いということが判る。
ただし、欠点としては諸費電力が大きく、発熱し易いことである。
(3)蓄電器を用いる場合
コンデンサー内における消費電力が殆んど皆無であるという特徴はあるが、相当大容量のもの(電解コンデンサーは不可)が必要であるから実際にはあまり用いられていない。(昭和22年12月時点での話)
本機123号受信機のヒーター回路は、12Y-V1、12Y-R1、12Z-P1、24Z-K2及びパイロットランプ(3V)の合成電圧は約63Vとなる。今、この降下電圧の合計をE1、コンデンサー内で降下すべき電圧E2を、それから電灯線の電圧をEとする。
ヒーター回路の電圧E1は、回路を通ずる電流Iと同相であり、コンデンサー内で降下すべき電圧E2は電流よりも90度位相が遅れているから、電灯線の電圧EはE1とE2をベクトル的に加えた値となり次の式が成立する。
E=√E1×E1+E2×E2
上式を変化して、E2の値を求めると
E2=√E×E-E1×E1
この式に数値を代入して
E=√100×100-63×63=√6031=77V
即ちこの際コンデンサーC内で降下すべき電圧は約77Vである。
次に、電灯線の交流50サイクル電流Iを0.15AとしてCの値を求めると
I=R/1/2πfC=2πfCE2
故に求むるCの値は上式を変化して
C=1/2πfE2となる。
上式に数値を代入して
C=0.15/6.28×50×77=0.0000062F=6.2μF
なお、電灯線の交流60サイクルの場合には
C=0.15/6.28×60×77=0.0000051F=5.1μF
※使用するコンデンサーは、無極性コンデンサであれば、ゼロ電位から上下する電圧を印加できるので、交流回路でも直接使用することができる。
無極性コンデンサはセラミックコンデンサやフィルムコンデンサが主流で使用できるが、有極性である電解コンデンサーは使用することができない。

3.放送局型受信機の問題点について
問題点指摘のため、ある雑誌を引用する。
満足に動作しているときの性能は、正統的な設計であるため必ずしも悪いものではないが、一度故障すると手に負えないものである。すなわち、戦中・後の資材、人材の逼迫した時代の所産であるため、各真空管はヒーター断線、ヒーター~カソードのタッチ、雑音発生、24K-K2の1/2ボケ、カソードの断線を繰り返し、その上電解コンデンサーの品質もいかがわしいものが多かっため、平滑コンデンサーの容量抜け、横リーク、極性反転、加えて、シャーシに触れれば電撃を受け、1球抜けば全球滅といった修理の不便さのため徹底的に不評であった。
この問題点を的確に指摘されているホームページを以下に紹介します。
真空管と共に(My Vacuum tube life)
◇放送局型123号受信機(もどき)◇
このラジオの一番大きな欠点は、両波倍電圧整流が採用されていることです。
この方式は球のヒーターとカソード間に高い直流電圧が掛かりヒーターとカソード間の絶縁破壊が起きます。 
調べてみると、戦後のトランスレスTVではヒーターとカソード間の絶縁が問題視され両波倍電圧整流を使用してはいけないとはっきり書かれております。
この為トランスレスTVは全て半波倍電圧整流が採用されていました。
参考資料 松下電器 T14-Z1M電源回路図


この指摘を考慮して、今回は両波倍電圧整流から半波倍電圧整流に改造するこことします。


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参考文献
ラジオ受信機調整修理法(一般家庭用並びに国民型受信機編)大井修三 昭和22年12月
ANTIQUE JAPANESE RADIO/日本の古いラジオのホームページ
https://radiomann.sakura.ne.jp/HomePageTV7U/TV7Utable.html
真空管と共に(My Vacuum tube life)
http://mjseisaku3t.client.jp/rx-htm-2/123M-RX.html


広島戦時通信技術資料館及は下記のアドレスです。
http://minouta17.web.fc2.com/

 


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