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厚木飛行場に隠されたレーダー牽引車の機種の同定について

2022年07月24日 08時15分21秒 | 03陸海軍電探開発史

厚木飛行場に隠されたレーダー牽引車の機種の同定について

「GHQの見たニッポン 太平洋戦争研究会 2007年8月」の不要となった日本軍基地の写真の1枚のコメントには厚木飛行場の東の擁壁に隠されたレーダー牽引車(1945年9月6日)との記載がありました。

しかも、よく写真をみると敗戦による軍によるレーダー破壊命令が出ていたようで、レーダー内部のシャーシ部分(IFTや真空管が見えるのでレーダーの受信機のようです)が投げ捨てられているのがわかります。

厚木飛行場といえば、海軍航空隊が使用した飛行場です。
したがって、本写真のレーダーは海軍の開発したレーダーのはずですが、海軍のレーダーには外観から該当する機種はありません。
本写真のレーダー牽引車は偽装をしていますが、アンテナや車体の形状の特徴から陸軍のタチ13であることがわかります。

タチ13の詳細については下記の資料を参照願います。
タチ13とタキ15   http://minouta17.livedoor.blog/archives/18022261.html

何故このように海軍基地に陸軍のレーダーが配置されているか長年不明でしたが、自分が別の項目で作成した下記の資料に答えがありました。
陸海軍共同迎撃システムの誘導実験の考察の再検証
https://minouta17.hatenablog.com/entry/2020/06/05/193841

当作戦は、戦闘詳報 第2号(夜間邀撃戦)自昭和 20 年 4 月 1 日昭和 20 年 4 月 30 日横須賀海軍航空隊と茅ケ崎派遣隊(陸海軍共同の電探誘導部隊)により実施された。
本作戦期間は1か月間のみで、おせいじにも成功したとはいいがいたのですが、味方機誘導システムの有効性は陸海軍とも確認された。
このため、作戦終了後も茅ケ崎派遣隊(陸海軍共同の電探誘導部隊)を解隊せず、本部隊は陸軍部隊を含めて厚木航空隊に配属させたものと思われる。
最終目的は、情報案内板にリアルタイムで敵機と友軍機を表示して、全体の指揮を統合化することにあったが、ここに至っても、陸軍は陸軍、海軍は海軍とし陸海軍の統合指揮には至らなかった。

 

参考情報
有末機関報第453号 日本ノ対空警戒組織ニ関スル件 質問書(昭和20年11月22日)
6.本州海岸ノ一地点ニ於テ若クハソレ以上ノ電波暗視機ガ存セシ理由如何
一例 潮岬、大王埼、御前崎、名古屋ノ南西半島
⇒これに対する日本側の具体的な資料はありませんが、あえて回答するとすれば、同一地点には陸軍と海軍が別個にレーダー基地を設置し運用し、其の対空情報の交換はなかったということであろう。

戦略爆撃調査団「ジャパニーズ・エアー・パワー」米国戦略爆撃機調査団報告からの抜粋
a.陸軍と海軍間にリソース(資源や人材)の効率のよいプーリング(共同管理)がなかった。
両軍間の責任はまったく役に立たない方法で分担され、海軍はすべての海域と海軍基地などの目標をカバーし、その他は陸軍が担当した。
各軍はそれぞれ別個の警戒システムをもち、相互のシステムが得た情報を交換するための規定は、全く不適切なものだった。
あるときは、大本営は陸海軍の戦闘機隊をプールすることを決定したが、日本海軍は陸軍航空隊将校からの命令を受けることを拒否した。
結局、両軍の戦闘機隊は、陸軍の管区司令官の下におかれ、システム全体を破壊してしまった。
b.日本のレーダーは非常に貧弱なものだったし、戦闘機管制は初歩的段階から抜けきれなかった。
早期警戒レーダーはかなりの有効距離があったが、攻撃編隊を組む飛行機のタイプや高度を判定するために使われることはなかった。
機上搭載レーダーは実験的なものが大部分で、ごく少数の機体に装備されたにすぎない。
日本空軍はレーダーによる敵味方識別装置(IFF)を、常備の装置として使用したことはなかった。
友軍戦闘機の航跡を追尾するための組織的な試みはなかった。したがって、戦闘機を適切な位置に無線で誘導することは不可能で、地上管制将校が通常できるのは、戦闘機に対し、予測したB29の飛行経路上の一点に集合せよと命令することぐらいであった。


参考文献
丸2006年10月号 潮書房
日本占領 毎日新聞社
有末機関報第453号 日本ノ対空警戒組織ニ関スル件 質問書(昭和20年11月22日)
戦略爆撃調査団「ジャパニーズ・エアー・パワー」米国戦略爆撃機調査団報告 日本空軍の興亡 大谷内一夫訳 1996年8月

 

 


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