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戦時標準船短波受信機の修復作業報告 その2(2015年10月25日)

2015年10月27日 15時18分55秒 | 02海軍無線機器

戦時標準船短波受信機の修復作業報告 その2(2015年10月25日)

まず、修復のために、電源部と受信機との接続端子とケーブルが必要となります。
4ピンの雌の端子がありますが、現代ものの雄端子とは少し異なり装着できません。
しかたないので、差込形ピン端子で無理やり代用することとしました。
船舶用受信機では、当然直流電源が用意されていますので、ヒータも直流のA電池から取っていますが、便宜上ヒータは交流としました。
試験環境が用意できましたので、通電の前の電源系の導通テストを実施しました。
試験をするとヒータとB電源がショートしていました。
これでは、通電できません。
すぐに、ヒータ系配線とB電源系の配線の接触ポイントをさがしますが、接触しているポイントがありません。
3週間ほど考えましたが原因はわかりません、将に重症です。
唯一、考えられるのが真空管の内部ショートですが、いままでこのような経験ありません。
とりあえず、全真空管をはずし、真空管のヒータ切れとプレートとの接触を確認しました。
ところが、真空管は全く問題ありません。
なお、この真空管は当時のオリジナルなもので昭和14年から17年に製造されたものでした。
ただし、全真空管をはずした状態でヒータとB電源を測定すると今度はショート状態でありません。
この問題は不明なまま、米軍の保守球である真空管と差替えしました。
このような古い受信機を試験する場合には、真空管の信頼性が大変重要です。
その点では当時(第二次大戦)の米国の製造技術には敬服せざるを得ません。
今日では、残念ながら米国も日本もエレクトロニクス業界での製造立国のパワーはありません。
これで、通電試験を開始しましたが、当然ながらホワイトノイズしかありません。
まず基本動作として、各真空管の電圧測定を開始すると、検波・低周波増幅段の6B7のプレートが0Vです。
プレートが0Vになるためには、プレートに挿入されていめ負荷抵抗150KΩのネジ止め端子がショートしているのが原因と思い、取替交換を実施しました。
ところが、事象は同じです。
試しに、6B7を抜くと、ショート状態は解消しました。
なんと、6B7のソケットの差込位置を間違えたことが原因でした。
よくよく考えると、最初のヒータとB電源とのショートも他の真空管で同じ差込間違えをしていたものと思われます。
ヒータとプレートはピン番号で1と2で隣同士です。
最初のソケット挿入ミスで、この短波受信機は御臨終となり、修復時今度は小生が同じミスをしたとう因縁ある故障原因でした。
電圧計の取替が1951年とありますので、時期的には戦後の船舶用受信機に交代する時期であったものか、戦時標準船自体の退役による無線機の廃棄なのかもしれません。
しかしながら、昭和17年という戦時から戦時標準船と共に、この短波受信機は幸運にも生還し、現存しつづけ、かつ受信機能を有していたということです。
最後に、修復の過程でオリジナルの抵抗器(150KΩ)の取替を行ったことが悔やまれます。
この抵抗器には明星電気と記されていますが旧軍では使用実績はありません。

エージングを行い受信機能を観察すると、
バンド1(20~11Mhz)、バンド2(11~6Mhz)、バンド3(6~3Mhz)とも感度は大変良好です。
ただし、BFOの発振は停止しており、なんらかの問題があります。
また、B電源とヒータ電圧の両電圧計も不良のままです。
システム構成上の欠点ですが、
各真空管を完全シールドしていますが、IF段以降では大変狭隘のため、真空管のソケットの挿入ミスが発生する可能性があることです。
本来なら、もう少し修理・調整等を行いたいのですが他の機種の修理を優先するため、ここで修復作業は終了とします。
なお、戦時標準船短波受信機として戦火の中を無事生抜くことができ、また、現在まで製造当時の姿を残していることに只々感謝申し上げます。

 

インターネット検索すると下記の情報がありましたが、この会社のようですね。
明星電気沿革
1938年 東京市蒲田区下丸子に資本金30万円をもって設立
1939年 ラジオゾンデの製造販売開始
1945年 空襲により工場を焼失、群馬県伊勢崎市に本社・工場を移転
1946年 東京都大田区大森に本社を移転
1948年 中央気象台に符号式ラジオゾンデ受信機を納入
1952年 中央気象台にロボット気象計を納入
1953年 日本電信電話公社の共電式交換機の指定メーカーとなる
1955年 東京大学生産技術研究所にロケットテレメータを納入
1956年 スイスバイエルンで行われた国際ゾンデ比較試験で最優秀の成績をおさめる
1957年 東京都銀座に本社を移転
1962年 株式を東京証券取引所市場第二部に上場
1965年 日本電信電話公社にボタン電話装置を納入
1966年 東京大学航空宇宙研究所に人工衛星追跡装置を納入
    日本電信電話公にRC形自動式構内交換機を納入
    東京都文京区小石川に本社を移転
1969年 南極観測第11次越冬隊に参加
     気象庁に船舶用エコーゾンデ観測装置を納入
1973年 気象庁に沿岸防災用テレメータ装置を納入
    日本電信電話公社にホームテレホンを納入
2006年 気象庁にラジオゾンデ自動放球・観測システム(ARS)を納入
2007年 月周回衛星「かぐや」にハイビジョンカメラを含む8機器を搭載
2013年 超小型衛星「WE WISH」大気圏突入
    地域稠密観測「伊勢崎市POTEKAプロジェクト」立ち上げ POTEKA突風観測
    イプシロンロケット試験機打ち上げ成功 ホットガスバルブモータコントローラ搭載
    東京都江東区豊洲(豊洲IHIビル)に東京事業所を移転
2014年 世界最小・最軽量のラジオゾンデiMS-100販売開始
    小惑星探査機「はやぶさ2」に近赤外分光計と理学観測分離カメラ搭載


気づき
本機の中間周波数の測定結果について
IFの測定
周波数変換のグリッドにSGにて信号注入
中間周波増幅段にて
MAX受信  491Khz
セコンド受信 450Khz
中間周波数は、どちらか特定できず。

受信ダイヤル固定にてSGにて信号注入 
正受信    7068.6Khz
イメージ受信 7966.1Khz
中間周波数は、差÷2で450Khzと特定できます。

参考資料
船舶用短波受信機とBCL http://www.geocities.jp/sisterdqa/tannpa1.htm


広島戦時通信技術資料館及は下記のアドレスです。
http://minouta17.web.fc2.com/

 


地1号受信機の電源部の修復作業報告 その2 (2015年10月25日)

2015年10月27日 15時15分05秒 | 01陸軍無線機器

地1号受信機の電源部の修復作業報告 その2 (2015年10月25日)

10年ぶりの板金加工の工作です。
アルミパネルに大きな穴があいていますので、3ミリのアルミ版から穴の大きさのアルミ杯を切り出します。
次に、剥離剤でパネルの塗装をきれいにはがしますと、黒色の下地塗装が現れました。
ねんどパテを使用してアルミの穴をふさぎ、紙ヤスリでていねいに削り取ります。
更に、下地塗料を施し、最後に銀色の塗料で仕上げます。
10年ぶりの作業でもあり、あまりいい出来ではありませんでしたが今回はこれで我慢することとします。
次に、銘板の作製です。
最後に、各部品の実装を行いますが、肝心のパワートランスの現物がないので山水のトランスとなりました。
コンセプトは、上部から見るとオリジナルに近く、裏面の部品は現代もので性能重視としております。
修復時に気が付いたのですが、電源のコネクターの実装が地1号と地2号では逆転しています。
理由はわかりません。
但し、接続コネクターは共用で利用できそうですね。


参考のため、地2号の電源部の資料を添付します。

 

広島戦時通信技術資料館及は下記のアドレスです。
http://minouta17.web.fc2.com/