実務家弁護士の法解釈のギモン

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DNA鑑定(3)

2011-04-15 11:10:43 | 日記
 さて、いよいよ本題であるが、人の遺伝子情報、すなわちDNAの塩基配列は人それぞれで違う。だから、DNA鑑定が可能なのである。しかし、では人によってどれほど違うのだろうか。本のどこに書いてあったかわからなくなってしまったが、確か、99パーセントは同じだと書いてあった。つまり、人によるDNAの塩基配列の違いは、わずか1パーセント程度しかないのだとのことである。そのわずか1パーセントの塩基配列の違いが、多彩な人物像を作り上げているのである。DNA鑑定も、このわずか1パーセントの部分(人によって多数の塩基配列の型が存在するという意味だと思うが、「多型」という言い方をする)を拾い出して鑑定をする。
 特徴的な多型部分は、塩基配列がたとえば「AGAGAG……」のように2塩基もしくは数塩基が反復となっている部分にあるという。この反復の回数、別の言い方をすれば反復部分のDNAの長さが、人によって違う部分があるのだそうである。その長さを測る。これが現在行われているDNA鑑定の方法らしい。
 ただ、長さをはかると言っても、非常に微細な話であり、顕微鏡で「AGAGAG……」の繰り返しの数を目で見ることができるわけではないし、物差しをあてがって測れるわけでもない。

 DNAは電気的にややマイナスに帯電しているらしい。そのため、反復配列の多型の長さを調べるのに電極を利用する。反復配列部分を切りだし、そのDNA断片を増幅して数を増やす。そして、寒天のような多孔性のゲルというものに電極を設置した装置の、負極付近のゲルに窪みを設け、その窪みに増幅したDNA断片を入れる。そして電気を通すのだそうである。そうすると、マイナスに電荷しているDNA断片はゲルの中を少しずつ時間をかけて通過して正極の方に移動するのだそうである。ただ、DNA断片が長ければ長いほどゲルの抵抗を受けやすく、同じ時間内での移動距離が短くなる。このようにして、移動距離によってDNAの長さの違いが測れるのだそうである。
 人の染色体は23対あり、必ず染色体は対で存在するので、おなじDNAの多型部分を2つの染色体で測定できる。そのため、1か所の多型部分から2つの測定が可能である。

 現在のDNA鑑定は、STR法という言い方をしているが、この測定をいくつかの染色体に存在するDNAの反復配列の多型部分で実施するようである。そのため、鑑定の対象となる2つの検体(細胞)の測定結果がすべて一致すれば、非常に高い確率で同一人物の検体(細胞)ということができるらしい。
 しかし、以上のようにDNA鑑定は塩基配列一つ一つがすべて一致するか否かという鑑定方法を採用するわけではないので(塩基配列の違いの有無そのものを直接調べようとすると、分子一つ一つを直接のぞき込むのと同じことになるので、おそらく膨大な労力・時間・費用がかかり、限りなく不可能というに近いのだと思う。)、鑑定結果はどれほど高い確率であっても、確率論以上のものにはならないし、鑑定技術がヘタだとその制度も狂うはずである。

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