実務家弁護士の法解釈のギモン

弁護士としての立場から法解釈のギモン,その他もろもろのことを書いていきます

会社法改正-取締役の株式報酬(1)

2020-02-12 14:42:46 | 会社法
 会社法改正で、株式報酬の位置づけが会社法上明確となってきた。

 教科書類を振り返ると、取締役に対するインセンティブ報酬として、ストックオプションの制度が始まったのが平成9年の商法改正からのようである。その後、平成13年改正で新株予約権という形で一般化して整備し直されており、これを役員や従業員に付与するのがストックオプションという位置づけになっている。
 ただし、ストックオプションの問題はこの先にある。一つは、発行手続きであり、一つはストックオプションの中身の問題である。
 また、ストックオプションではなく、株式そのものを報酬として取締役に付与するというインセンティブ報酬も考えられる。数年前に株式報酬の事実上の解禁等といわれたこともあるが、当時は、会社法の改正で行ったのではなく、もっぱら税制上の問題として捉えられていた。詳しいことはよく分からないが、要は、課税の繰り延べの問題のようであり、報酬として株式を付与した段階で税金が課されるのではなく、付与された株式を市場で売却して現金化したときに課税されるような税制改正をしたようなのである。
 ただし、これも問題があり、課税の繰り延べのための要件がかなり厳格で、使い勝手がかなり悪そうな仕組みになっているようなのである。

 以上の問題が、令和元年の会社法改正で一挙に解決したと言えるかどうかはともかく、会社法だけを考えた場合に、株式報酬の位置づけが、それなりに明確になってはきた。

離婚と婚姻費用分担請求

2020-01-29 11:17:30 | 家族法
 若干マスコミ報道もされた、ごく最近の判例がある。婚姻費用分担審判の申立て後に当事者が離婚したとしても、これにより婚姻費用分担請求権が消滅するものとはいえないという判例である。

 最高裁のホームページで公開された判例を見ると、事案としても、婚姻費用分担請求の調停を申し立てた後、離婚調停が先に成立した事案のようである。この場合に、離婚調停成立までの婚姻費用の分担請求は離婚後も引き続き可能か否かが問題となっている。
 判旨は、このような事案で、離婚後も、離婚までの婚姻費用の分担請求権は認められるとしたのである。

 問題なのは、判旨だけを読むと、婚姻費用分担調停(審判)を申し立てた後の離婚の場合の判断となっている点である。離婚が成立した後に、離婚が成立するまでの婚姻費用の分担請求の調停や審判を始めることができるか否かは、表面的に判旨を読むだけでは、何も判断していないといえそうである。
 ただ、判断の理由を読むと、離婚したからといって、離婚時までの分の婚姻費用についての実体法上の権利が当然に消滅するものと解すべき理由はないこと、過去に遡って婚姻費用の分担額を形成決定することができることを理由に、以上のような判断をしている。
 とすると、離婚前に婚姻費用分担調停(審判)を申し立てていなければならないという理由はないのではないかとも思える。
 この部分は、残された論点かもしれない。

会社法改正ー社外取締役設置の義務化(3)

2020-01-08 10:02:40 | 会社法
 世の中は、それだけ社外取締役に期待するものが大きいのであろう。しかし、社外取締役の制度が本当に機能するかどうかは、会社の社外取締役への期待度と、社外取締役個人の能力に依存すると思う。社外取締役に最も期待される事柄の一つは、コンプライアンスの分野かと思っているが、現実には、社外取締役が設置されていた会社でも、企業不祥事は起きている。企業不祥事は、取締役会の外で起きるのが普通なので、基本的に取締役会に出席するのみの社外取締役には、なかなかつかみきれないのだろうと思う。
 経営陣は、単に取締役会に上程すべき事項のみならず、様々な会社情報を社外取締役に伝えるべきであろう。

 社外取締役制度を義務化しても、それを生かすも殺すも、会社の姿勢次第であろう。

会社法改正-社外取締役設置の義務化(2)

2019-12-18 09:47:28 | 会社法
 平成26年改正において、①監査役会設置会社かつ②公開会社かつ③大会社かつ④有価証券報告書提出会社であるという4要件を満たしている会社の場合、社外取締役を設置していない会社では、社外取締役を置くことが相当ではない理由を、定時株主総会で説明しなければならないとした。当然、上場会社はこの4要件を満たす。
 ここでの説明内容は、単に社外取締役を置かなかった理由ではなく、社外取締役を置くよりも置かない方が望ましい理由だと言われていた。そのため、平成26年改正は、社外取締役設置の義務化までには至らなかったものの、社外取締役の設置に強く誘導する規定となっていた。
 そしてまた、東京証券取引所の基準として、上場会社には独立役員の設置を求めていた。これは、社外監査役でもよかったのであるが、平成26年改正と合わせて、上場会社では社外取締役の設置に大きく傾いていったようである。上場会社の多くが社外取締役を設置するようになったとのことである。
 そこで、今回の改正で上記4要件を満たす会社は、社外取締役の設置が義務づけられることになった。

会社法改正ー社外取締役設置の義務化(1)

2019-12-11 09:51:18 | 会社法
 会社法が改正される。平成26年に大きな改正がされたが、それに続く改正である。
 我々弁護士が頻繁に扱う法律の中でも、会社法は時代の変化に敏感であり、改正されることが多い。やむを得ないことなのかもしれないが、改正について行くのが大変である。

 さて、今回の改正の一つの大きな目玉に、取締役等に関する規律の見直しがある。それにもいくつかあり、社会的に関心を集めているのは、社外取締役設置の義務化かもしれない。とは言っても、問題となっている会社は、上場会社をはじめとした有価証券報告書提出会社であり、中小企業には関係がない。
 ただし、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社においては、すでに社外取締役の設置は義務化されており、問題なのは、それ以外の有価証券報告書提出会社である。