Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Wild Blue Yonder

2009-07-12 | AOR
■Wild Blue Yonder / Blue Print■

  カリフォルニア出身のローカル AOR グループ、Wild Blue Yonder が 1978 年に発表したファースト・アルバム。 にじんだ水彩画のようなイラストからは、アコースティック寄りのサウンドを想像しがちですが、そうではありません。 西海岸出身ながらも、サウンドは Steely Dan の影響が強く感じられ、アダルトでアーバンな指向性が強いサウンドが楽しめるアルバムとなっています。

  Wild Blue Yonder は、Jim と Bill の Bixler 兄弟そして Jim の奥さんのJudy を中心に結成された 7 人編成。 個々の操る楽器を見てもわかるように、ありとあらゆる楽器を駆使して、当時の流行であった AOR サウンドを奏でています。 個人的には派手なシンセの音がしないところが気に入っており、洗練されたサウンドを指向していながら、自分たちのローカルなサウンド・プロデュースの枠を突き抜けられていないもどかしさも伝わってきます。 メジャーレーベルから声がかかり、優秀なプロデューサーが擁立されていたならば、もしかすると大きく化けていたかもしれません。

  彼らのサウンドは、4 人で交代するリードボーカルがひとつの特徴です。 女性の Judy Bixler はメロウで爽快、Jim Bixler は乾いた感じでスムース、Bill Bixler は Jim に比べてやや粘っこい印象。 Phil Wimber(メインはギタリスト)はエモーショナルでソウルフル、といった具合です。 歌の上手さと個性は、Bixler 兄弟よりも Phil Wimber に軍配が上がります。 とくに、彼がリードボーカルを務めた唯一の曲「Last Thing In The World」はアレンジが Steely Dan そっくりなこともあり、アルバムを代表する 1 曲に仕上がっています。 Phil Wimber にもっと歌わせたかったところですが、Wild Blue Yonder は Bixler 兄弟に主導権があるので、仕方ないところでしょう。
  Judy とJim のボーカルは単独での存在感は薄いのですが、ほとんどの場合、2 人がハーモニーで絡んでくるので、そのあたりが聴き所となっています。 「This Is For You」や「Begonia Snow」がそういった類の曲に該当するのですが、どちらも水準以上の出来栄えとなっています。 Bill Bixler の本業はサックスなので、彼は「Spoon Charisma」と「Tragic Emblem」の2曲しかボーカルをとっていません。 前者はスティールドラムが起用されていますが、その必然性が伝わってこないところが残念。 「Tragic Emblem」のほうが後半のいい流れのなかにうまく納まっている印象です。

  ここまで断片的に曲に触れてきましたが、個人的に好みな曲は何かと言えば、B 面の「Paradise」です。 この曲はクラブの DJ あたりが探していそうなライト&スムース感があり、奥行きや味わい深さはないのですがクセのない心地よい楽曲です。 前奏曲まで用意していることから、この曲は彼らにとっても重視していた曲なのでしょう。 

  さて、この Wild Blue Yonder ですが、もう 1 枚「Enthusiasm」というアルバムを発表していますが、こちらは未聴です。 彼らのサイトによると、現在もほぼ同じメンバーで活動を続けている様子が伺えました。 しかし、残念なことに Judy Bixler は自転車事故ですでに亡くなっていました。

■Wild Blue Yonder / Blue Print■

Side-1
Ridin’ Next To You
Instant Gratification
This Is For You
Spoon Charisma
Under The Weather

Side-2
Prelude To Paradise
Paradise
Last Thing In The World
Tragic Emblem
Begonia Snow

Produced by Wild Blue Yonder in association with John Schnell

Wild Blue Yonder
Judy Bixler : vocals, electric piano
Jim Bixler : vocals, acoustic & electric guitar, alto & soprano saxophone, cowbell
Phil Wimber : vocals, acoustic & electric guitar, piano
Bill Bixler : vocals, electric piano, clavinet, piano, soprano tenor & alto saxophone
Tad Wadhams : vocals, electric fretless bass
Jeff Bowman : vibes, steel drum, congas, bongos, misc, percussion, vocals
Alan Carlson : drums, piano, vocals

Strings arrangements by Bill Bixler
Strings : Jerald Keith Barnett, Irene Ikeda Bowman, Jasmine June Murphy

Totallyoutofcontrol Records K-2504


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