■Paul Ott / A Message To Mankind■
厳格な自然主義者である Paul Ott が 1972 年に発表したファースト・アルバムです。 奇妙なジャケットは風景写真かと思いきや、よく見ると風景画でした。 この絵はミシシッピの自然博物館所有のものとの記載がありますが、この絵に隠されたメッセージについては、後ほど触れることにしましょう。
Paul Ott Carruth というのが彼の本名。 プロフィールを見ると、保守派・ナチュラリスト・スポーツマン・教育家そして音楽家という形容がちりばめられています。 彼の助言が当時のニクソン大統領の所見にも反映されたとの記載がありますが、その真偽はどうなのでしょう。 いずれにしても、Paul Ott はエコ・ブームの今日よりも 37 年も昔に、エコロジカルな活動を行っていたことは確かです。
では、彼の奏でる音楽はどのようなものだったのしょうか。 その音楽は想像がつく範囲のなかに収まっていました。 アルバムの全曲がぼやけた輪郭に包まれたアシッド感の強い弾き語りとなっていたのです。 コーラスも自身のオーバー・ダビングによるもので、うすくギターの音色が聴こえるものの、ほぼ囁きに似たボーカルで貫かれています。
「Danny Boy」、「Ole Blue」そして「Shenandoh」といったトラディショナルのアレンジも Paul Ott 自身が手がけており、その他のナンバーも SSW ジャーナリストの Paul Robertson なる人物による「Leaves Turn Brown」以外の作曲は Paul Ott と共作者によるものとなっています。 「Trees Are Gone」や「Once There Was A River」といった曲名からもさきほど述べたとおりのエコロジカルなメッセージが伝わってきますが、何と言っても最大の特長は全編にわたって散りばめられている鳥のさえずりでしょう。 曲と曲の間ばかりでなく、どの曲の背景にも鳥や家畜の鳴き声が挿入されており、それが絶妙に自然に入っていることに感心させられるのです。 こうしたサウンド・エフェクトは大抵の場合、不自然で過剰に感じられるのですが、Paul Ott のアルバムに関しては、演出的に成功と言えるでしょう。
この鳥のさえずりで思い出したのが、1975 年に高石ともやとザ・ナターシャセブンが発表した「わが大地のうた」(作詞・作曲は笠木透)です。 この曲は草原でレコーディングするという大胆な手法が採られ、風のざわめきや鳥のさえずりも同時に録音されているのです。 この曲は、高石ともやが 1970 年代から自然保護や環境に対する意識の高いミュージシャンだったことを証明する名曲と言えるでしょう。
30 分程度で聴き終えてしまうこのアルバムを聴きながら、このジャケットに描かれている鳥を見て、あることを思い出しました。 それは、動物の絶滅史上最大の出来事とも言われている「リョコウバト」の絶滅です。 「リョコウバト」は絶滅してしまった動物のなかで、最も個体数が多かったことで知られています。 ネットで調べたところ、その数は 50 億羽もいたとのことで、地球上の鳥類で最も多い個体数だったようです。 そのリョコウバトは北米にしか分布してなかったのですが、ライフルによる過剰な乱獲と想像以上に弱い繁殖力が重なって、1914 年に最後の個体(名前はマーサ)が動物園で亡くなっています。 僕はこの絶滅のことを 20 年くらい前にテレビのドキュメンタリーで初めて知ったのですが、そのときに鉛のような重たい気分が数日間拭えなかったことを思い出しました。
最後に、ウィキペディアに載っていた「リョコウバト」のイラストと、このジャケットで空を飛んでいる鳥を見比べてみました。 そんな気はしていたのですが、ここで自由に羽ばたいている鳥は、やはり「リョコウバト」でした...
■Paul Ott / A Message To Mankind■
Side-1
Danny Boy
Keeps Me Coming Round
Trees Are Gone
Once There Was A River
Hunting And Fishing Song
Side-2
Ole Blue
Shenandoh
Leaves Turn Brown
A Message To Mankind
Spectator Records UMC 2722
厳格な自然主義者である Paul Ott が 1972 年に発表したファースト・アルバムです。 奇妙なジャケットは風景写真かと思いきや、よく見ると風景画でした。 この絵はミシシッピの自然博物館所有のものとの記載がありますが、この絵に隠されたメッセージについては、後ほど触れることにしましょう。
Paul Ott Carruth というのが彼の本名。 プロフィールを見ると、保守派・ナチュラリスト・スポーツマン・教育家そして音楽家という形容がちりばめられています。 彼の助言が当時のニクソン大統領の所見にも反映されたとの記載がありますが、その真偽はどうなのでしょう。 いずれにしても、Paul Ott はエコ・ブームの今日よりも 37 年も昔に、エコロジカルな活動を行っていたことは確かです。
では、彼の奏でる音楽はどのようなものだったのしょうか。 その音楽は想像がつく範囲のなかに収まっていました。 アルバムの全曲がぼやけた輪郭に包まれたアシッド感の強い弾き語りとなっていたのです。 コーラスも自身のオーバー・ダビングによるもので、うすくギターの音色が聴こえるものの、ほぼ囁きに似たボーカルで貫かれています。
「Danny Boy」、「Ole Blue」そして「Shenandoh」といったトラディショナルのアレンジも Paul Ott 自身が手がけており、その他のナンバーも SSW ジャーナリストの Paul Robertson なる人物による「Leaves Turn Brown」以外の作曲は Paul Ott と共作者によるものとなっています。 「Trees Are Gone」や「Once There Was A River」といった曲名からもさきほど述べたとおりのエコロジカルなメッセージが伝わってきますが、何と言っても最大の特長は全編にわたって散りばめられている鳥のさえずりでしょう。 曲と曲の間ばかりでなく、どの曲の背景にも鳥や家畜の鳴き声が挿入されており、それが絶妙に自然に入っていることに感心させられるのです。 こうしたサウンド・エフェクトは大抵の場合、不自然で過剰に感じられるのですが、Paul Ott のアルバムに関しては、演出的に成功と言えるでしょう。
この鳥のさえずりで思い出したのが、1975 年に高石ともやとザ・ナターシャセブンが発表した「わが大地のうた」(作詞・作曲は笠木透)です。 この曲は草原でレコーディングするという大胆な手法が採られ、風のざわめきや鳥のさえずりも同時に録音されているのです。 この曲は、高石ともやが 1970 年代から自然保護や環境に対する意識の高いミュージシャンだったことを証明する名曲と言えるでしょう。
30 分程度で聴き終えてしまうこのアルバムを聴きながら、このジャケットに描かれている鳥を見て、あることを思い出しました。 それは、動物の絶滅史上最大の出来事とも言われている「リョコウバト」の絶滅です。 「リョコウバト」は絶滅してしまった動物のなかで、最も個体数が多かったことで知られています。 ネットで調べたところ、その数は 50 億羽もいたとのことで、地球上の鳥類で最も多い個体数だったようです。 そのリョコウバトは北米にしか分布してなかったのですが、ライフルによる過剰な乱獲と想像以上に弱い繁殖力が重なって、1914 年に最後の個体(名前はマーサ)が動物園で亡くなっています。 僕はこの絶滅のことを 20 年くらい前にテレビのドキュメンタリーで初めて知ったのですが、そのときに鉛のような重たい気分が数日間拭えなかったことを思い出しました。
最後に、ウィキペディアに載っていた「リョコウバト」のイラストと、このジャケットで空を飛んでいる鳥を見比べてみました。 そんな気はしていたのですが、ここで自由に羽ばたいている鳥は、やはり「リョコウバト」でした...
■Paul Ott / A Message To Mankind■
Side-1
Danny Boy
Keeps Me Coming Round
Trees Are Gone
Once There Was A River
Hunting And Fishing Song
Side-2
Ole Blue
Shenandoh
Leaves Turn Brown
A Message To Mankind
Spectator Records UMC 2722