Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Robert Valente

2008-03-08 | SSW
■Robert Valente / No Hype■

  クセの強い弾き語りアルバムです。ほとんど単調なエレキのカッティング、朴訥として浮遊感のあるボーカルのみで構成された Robert Valente のファースト・ソロ・アルバムをピックアップしてみました。 Robert Valante は公式サイトがあり、そこでサウンドも聴くことができるので、雰囲気を捉えることが可能ですが、1979 年に発表されたこのアルバムだけが CD 化されておらず、入手困難な状態になっているようです。

  入手困難なアルバムに名盤が多いというのは明らかな事実誤認ですが、このアルバムも名盤とは呼べないでしょう。 しかし、彼の持つ音楽には独特の世界観が込められており、それを空間として共有することは十分に知的好奇心の対象となります。 サウンドにはスピリチャルな印象を受けるものの、明確にクリスチャン系の要素が出ているわけでもありません。

  先にも書いたとおり、エレキギター(もしくはそのようなエフェクトをしたアコギかもしれません)とボーカルだけが描き出すモノトーンの世界。どことなくLeonard Cohen に近い雰囲気ですが、声は彼のように低音ではありません。 個々の楽曲についてコメントするのは至難の業なので控えることとしますが、個人的に気に入っているのは、少し明るい兆しの射している「Dreamin’」、「Feel All Right」、「High School」などです。 逆に絶望的な気分になる「Looking For Blood」のような曲もあります。 明確に R&B を意識した「Chain Gang」、ロック指向の強い「Come On People」などが全体のなかでは微力ながらアクセントになっています。

  アルバムタイトルになっている「hype」を辞書で調べてみたところ、一番に出てきたのが「(主に麻薬を使用する際の)皮下注射」と出てきました。 次が「麻薬常習者」です。この言葉には明らかなメッセージが含まれていますが、僕は「No Hype」を第三者に向けたメッセージと素直に捉えることができません。 この不安定な音楽を聴くと、自らがその世界から脱却しようとしているのではないかと思うのです。 その意志を大きなフォントでジャケットにも示しているのではないでしょうか。

  公式ページを見ると、彼の不思議な世界を垣間見ることができます。最近の CD のタイトルを見ると、明らかにクリスチャン・ミュージック色が濃いことが伺える一方で、写真のコーナーには赤いフェラーリをサングラス姿で自慢する様も載っていたりします。 いったいこの人物は何者なのでしょう。 アイオワ州から現れた謎の SSW だけで片付けるわけにはいきません。



■Robert Valente / No Hype■

Side-1
Headed To L.A.
A Long Time Ago
Movie Show
Dreamin’
Chain Gang

Side-2
It Won’t Be Long
Looking For Blood
Come On People
Feel All Right
High School

Music and Lyrics by Robert Valente

Future Productions
SRU 4263


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