Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Ron Short

2006-05-04 | SSW
■Ron Short / Cities Of Gold■

 今日は、ケンタッキー州を拠点にブルーグラスや純粋なカントリー系のアルバムをリリースしてる June Appal Recording から 1981 年にリリースされた Ron Short のアルバムを紹介します。 タイトル名や銅版画のようなジャケットから想像できるように、このアルバムはゴールドラッシュ時期の炭鉱の町をモチーフにしたもののようです。 Ron Short 自身もバージニア州出身のネイティブなアパラチアンということで、この古い山並みやゴールドラッシュで湧いた街の風景、生活する人々のことなどを想像しながら聴いてみたいアルバムです。 とはいえ、僕にもそんなたくましい想像力はありませんが。

 この Ron Short は All Music Guide にも登録されていないのが残念なのですが、彼の残したアルバムはカントリー・テイストが濃いものの、心温まる SSW 作品に仕上がっていると思います。 アルバムタイトル曲でもある「Cities Of Gold」は、Nashville Street Choir というアマチュアコーラスらしきものとともに歌われるアカペラソング。 日本で言うと「炭鉱の歌」なのでしょう。 ゆったりとしんみりと炭鉱の町の暮らしがつづられます。  A面では、「Trying To Live Your Memory Down」、「Say Mister」などカントリーテイストが濃く表れた曲です。 「The Dancer」は、渋みのあるバラードで Ron Short の抑制の効いたボーカルから人柄が偲ばれてきます。 「Good Life」は、アルバムを通して最もハードなロック・ナンバー。 ホーンも入ったサザンロックのような曲調で、サポートする女性コーラスやテケテケしているギターなど爽快なアレンジです。
 そんな A 面ですが、このアルバムの真骨頂は B 面にあるでしょう。 「Walking Back To Georgia」は凡庸な曲でいただけないのですが、それ以降 4 曲は聴き応え十分です。 コンテンポラリーなサウンドに、語り口調のボーカルがのる「Do It Again」を皮切りに、切ない恋心を歌った名曲「Spend Some Time With You」と続きます。 この曲はうすく聴こえるスティールギターやサビのコーラスの雰囲気など、典型的なカントリーバラードと言ってもいいでしょう。 つづく「Willie And Sarah」は 10 代で結ばれた若い恋人たちのことを歌ったフィクション。 こうしたフィクションはいかにも 1980 年代のアメリカの音楽という気がします。 そんな歌は数多くあると思いますが、Ron Short の場合、舞台は炭鉱の町。 Sarah は「アトランタかニュー・オーリンズに行くわ」と手紙を残して子供を残したまま Willie の元を去っていきます。 ラストの「Going Home / Cities Of Gold」も、アパラチアの炭鉱町で働き人生を過ごしたすべての人々に捧げられているかのようなバラード。 そのラストには、1 曲目の「Cities Of Gold」が小さくリプライズされ、アルバムは幕を閉じます。 人の声や魂はその土地に根付いているものなのでしょうか、Ron Short のしみじみしたボーカルや歌詞を通じて、「Cities Of Gold」に描かれた世界が少しだけ分かったような気にさせられます。 B 面の 2 曲目以降の曲の歌詞は、シンプルでわかりやすく、それだけにまっすぐ伝わってくるものがあります。 レコード袋に歌詞が印刷されていて、良かったと思います。
 そんな Ron Short ですが、いまも地元バージニアで多方面の活躍をしているようです。 このページには近影となる写真も掲載されていました。 



■Ron Short / Cities Of Gold■

Side-1
Cities Of Gold
Trying To Live Your Memory Down
The Dancer
Say Mister
Good Life

Side-2
Walking Back To Georgia
Do It Again
Spend Some Time With You
Willie And Sarah
Going Home / Cities Of Gold

Produced by Beegie Adair and Ron Short
Recorded at L.S.I Studios , Nashville , Tenn.
Songs Written by Ron Short

Ron Short : acoustic guitar
Beegie Adair : piano
Bob Mater : drums
Billy Adair : bass
John Clausi : acoustic and electric guitars
Fred Newell : electric guitar , mandolin
Larry Sasser : steel guitar , dobro

Ron Keller , George Tidwell : trumpet
Herb Bruce , Ernie Collins : trombone
Denis Solee , Sam Levine : saxophones
Donna Sheridan , Doug Clements , Vicky Hampton , Beegie Adair , Ron Short : background vocals

A Special Thanks to the ‘ Nashville Street Choir’ for ‘Cities Of Gold’

June Appal Recording JA039


最新の画像もっと見る

コメントを投稿