■Steve Beckham / Beginnings■
アジサイの美しい季節になりました。 雨の滴に濡れたあとの瑞々しさは格別です。 子供の頃はアジサイの枝にびっしりとかたまっているカタツムリをよく見かけたものですが、最近はまったく見なくなりました。 道端でカタツムリを誤って踏みつぶしてしまった時の後味の悪さは、思い出すだけで気分が悪くなります。
そんなカタツムリを愛おしそうに見つめるのが Steve Beckhamです。 1978 年にカリフォルニア州でレコーディングされた作品。 エンボス加工のジャケットから感じる手触りと同じように、シンプルで素朴な演奏にサポートされたマイルドなアルバムなっています。 Steve Beckham はクリスチャンミュージックに該当するミュージシャンのようですが、ここで聴ける楽曲はこてこての CCM という印象ではありません。 タイトルも CCM 色が濃いわけではなく、Jesus や Lord という歌詞もほとんど聴かれないので、ボーカルが強調された SSW 作品として捉えたほうが正しいかもしれません。
アルバムが似合うのは夜でしょう。 壁の向こうで弾いているかのようなピアノ、不安げに響くバイオリン、街灯が路面を照らすかのようなクラリネットといったエッセンスは、太陽の出ている時間にはお勧めできません。 冒頭の「King Of The Canyon」や「Gone」はアルバム中では珍しく浮遊感とスケールのある明るい楽曲なので、そのイメージを期待すると裏切られることになります。 このアルバムの基幹を成しているのは、むしろ気品の高いピアノの音色が耳に残る「Todd」、命の元である水の有難みを歌った「Water」、少しジャジーなアレンジが渋い「Charlies Epitagh」といった楽曲です。 とくに「Charlies Epitagh」の口笛によるメロディーを聴くと、ニューヨークの都会派SSWを思い出してしまいます。
楽器の音色でアクセントをつけているのは、ギターとクラリネットの音色が印象的なミディアム「When God Comes Back」、ひんやりしたシンセサイザーの音色から始まる「Icarus」、バイオリンとコーラスが孤独と不安感を助長しているかのような「Beginnings」の 3 曲でしょう。 これらの楽曲がなかったら単調で沈みがちな流れに歯止めを効かせることはできなかったでしょう。
一度聴いたら忘れないのはTwinkle Twinkle Little Star のサビの部分をうまく引用したバラード「Little Boy Blue」、そして輪唱のようなアカペラで短く終わりを決める「Summer Boy」といった楽曲です。 とくに♪Twinkle Twinkle Little Star♪ のサビの部分をうまく引用したバラード。 勝手に思い込むほうが悪いのですが、ラストの「Summer Boy」はもっと感傷的な楽曲を期待していただけに、やや拍子抜けしてしまいました。
こうして蒸し暑い夜にこのアルバムを聴いてみましたが、不思議なのは西海岸の気配をまったく感じないことです。 カリフォルニア州ニューポート・ビーチでレコーディングされたこのアルバムは、意図的だと思いますが、海と砂、波しぶき、降り注ぐ日差し、といった一般的なイメージからはまったく謝絶された音づくりがなされていました。 これはもちろん、Steve Beckham の目指したものであるに違いありませんが、彼はよほど俗世間に関心が無かったのでしょうか。 カタツムリを見つめる彼の心身状態はいかなるものだったのか気になってしまうのです。
■Steve Beckham / Beginnings■
Side 1
King Of The Canyon
Gone
Little Boy Blue
When God Comes Back
Sometimes In Your Eyes
Beginnings
Side 2
Icarus
Todd
Water
Charlies Epitagh
Good Friday
Summer Boy
All songs compoesed by J.S. Beckham
Lead vocals : Steve Beckham
Background vocals : Kristi Lartsen, Claire Hirota
Guitar : Steve Beckham
Piano : Steve Beckham, Rick Dellefield
Other Keyboards : Rick Dellefield
Violin : Mike Harrison
Bass : Jim Perez
Percussion : Bobby Guidotti
Clarinet : Steve Beckham
Bridge Productions JSB 51853
アジサイの美しい季節になりました。 雨の滴に濡れたあとの瑞々しさは格別です。 子供の頃はアジサイの枝にびっしりとかたまっているカタツムリをよく見かけたものですが、最近はまったく見なくなりました。 道端でカタツムリを誤って踏みつぶしてしまった時の後味の悪さは、思い出すだけで気分が悪くなります。
そんなカタツムリを愛おしそうに見つめるのが Steve Beckhamです。 1978 年にカリフォルニア州でレコーディングされた作品。 エンボス加工のジャケットから感じる手触りと同じように、シンプルで素朴な演奏にサポートされたマイルドなアルバムなっています。 Steve Beckham はクリスチャンミュージックに該当するミュージシャンのようですが、ここで聴ける楽曲はこてこての CCM という印象ではありません。 タイトルも CCM 色が濃いわけではなく、Jesus や Lord という歌詞もほとんど聴かれないので、ボーカルが強調された SSW 作品として捉えたほうが正しいかもしれません。
アルバムが似合うのは夜でしょう。 壁の向こうで弾いているかのようなピアノ、不安げに響くバイオリン、街灯が路面を照らすかのようなクラリネットといったエッセンスは、太陽の出ている時間にはお勧めできません。 冒頭の「King Of The Canyon」や「Gone」はアルバム中では珍しく浮遊感とスケールのある明るい楽曲なので、そのイメージを期待すると裏切られることになります。 このアルバムの基幹を成しているのは、むしろ気品の高いピアノの音色が耳に残る「Todd」、命の元である水の有難みを歌った「Water」、少しジャジーなアレンジが渋い「Charlies Epitagh」といった楽曲です。 とくに「Charlies Epitagh」の口笛によるメロディーを聴くと、ニューヨークの都会派SSWを思い出してしまいます。
楽器の音色でアクセントをつけているのは、ギターとクラリネットの音色が印象的なミディアム「When God Comes Back」、ひんやりしたシンセサイザーの音色から始まる「Icarus」、バイオリンとコーラスが孤独と不安感を助長しているかのような「Beginnings」の 3 曲でしょう。 これらの楽曲がなかったら単調で沈みがちな流れに歯止めを効かせることはできなかったでしょう。
一度聴いたら忘れないのはTwinkle Twinkle Little Star のサビの部分をうまく引用したバラード「Little Boy Blue」、そして輪唱のようなアカペラで短く終わりを決める「Summer Boy」といった楽曲です。 とくに♪Twinkle Twinkle Little Star♪ のサビの部分をうまく引用したバラード。 勝手に思い込むほうが悪いのですが、ラストの「Summer Boy」はもっと感傷的な楽曲を期待していただけに、やや拍子抜けしてしまいました。
こうして蒸し暑い夜にこのアルバムを聴いてみましたが、不思議なのは西海岸の気配をまったく感じないことです。 カリフォルニア州ニューポート・ビーチでレコーディングされたこのアルバムは、意図的だと思いますが、海と砂、波しぶき、降り注ぐ日差し、といった一般的なイメージからはまったく謝絶された音づくりがなされていました。 これはもちろん、Steve Beckham の目指したものであるに違いありませんが、彼はよほど俗世間に関心が無かったのでしょうか。 カタツムリを見つめる彼の心身状態はいかなるものだったのか気になってしまうのです。
■Steve Beckham / Beginnings■
Side 1
King Of The Canyon
Gone
Little Boy Blue
When God Comes Back
Sometimes In Your Eyes
Beginnings
Side 2
Icarus
Todd
Water
Charlies Epitagh
Good Friday
Summer Boy
All songs compoesed by J.S. Beckham
Lead vocals : Steve Beckham
Background vocals : Kristi Lartsen, Claire Hirota
Guitar : Steve Beckham
Piano : Steve Beckham, Rick Dellefield
Other Keyboards : Rick Dellefield
Violin : Mike Harrison
Bass : Jim Perez
Percussion : Bobby Guidotti
Clarinet : Steve Beckham
Bridge Productions JSB 51853
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