Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Robert John

2011-07-18 | AOR
■Robert John / Back On The Street■

  節電の夏が始まりました。 連日のような猛暑日、そして熱帯夜。 まだ 7 月下旬なのであと 1 ヵ月以上もこんな毎日が続くかと思うと体じゅうから力が抜けていく感じです。

  そんななか、1980 年の AOR 名盤がようやく CD 化されるというニュースを知りました。 数ある AOR の名盤のなかでも、納涼効果は指折りの存在ともいえるこのアルバムが夏の盛りにCD化されるとは節電対策の一環ではないかと思えるほど、ぴったりなタイミングです。 

  本作「Back On The Street」は Robert John の 4 枚目のアルバムにして彼の現時点での最終作です。 1 枚目「If You Don’t Want My Love」(1968)と 2 枚目「On The Way Up」(1972)はレコード会社の事情による再発というニュアンスが強く、ほとんどの曲がだぶっているので、このアルバムが実質的には3枚目と考えたほうがいいかもしれません。 
   12 年間で 4 枚とは、かなり寡作な人ではありますが、そのキャリアは侮れません。 彼は 1979 年に発表した「Robert John」から、シングル「Sad Eyes」をわずか 1 週ではありますが、全米ナンバー 1 に送り込んでいるのです。 The Knack と Michael Jackson の間にうまくハマった幸運もありますが、全米チャート 1 位を記録したミュージシャンにしてはその存在感はあまりにも希薄です。 しかも彼は 1972 年に The Tokensの「ライオンは寝ている」をカバーして、全米 3 位に送り込んだ前歴もあるのです。 それなのに、彼の存在はウスバカゲロウのように、弱々しくはかなく思えます。 それは、1980 年以降の消息不明とウスバカゲロウの短命がオーバーラップすることもありますが、Robert John の最大の魅力である独特のファルセット・ボーカルに通じるものを感じ取ってしまうからでしょう。

  アルバムは完ぺきな入り方をします。 イントロのエレピ、やや遅れて入ってくるリズムセクション。 この数秒間だけで至福の空間へ誘われる感じです。 その「(So Long) Since I Felt This Way」は素晴らしいメロディとノスタルジックな歌詞が融合した傑作で、しかもエレクトリックシタールまで挿入され、すでにメロメロになってしまいます。 つづく「Hey There Lonely Girl」は 1970 年の Eddie Holman の名曲のカバー。 ほんのり甘く香る彼女の匂いを感じながら、海辺の夜にこんな曲を聴けたら最高に幸せでしょう。 ちなみに、この曲は山下達郎もカバーしています。 つづく「Just One More Try」も流れを汲んだメロウなバラード。 「On My Own」は、キャッチーなサビが日本人受けしそうなミディアム。 恋の甘さと切なさがまじりあった「Give Up Your Love」はメロウなさざ波のように完ぺきな A 面を締めくくっていきます。
  B 面は誰でも知っている The Four Seasons の「Sherry」のカバーで幕開け。 Robert John のボーカルと選曲センスのマッチングの正しさを実感する出来栄えです。  つづく「Winner Take All」はやや憂いのある感触からさりげないサビへの移行が素晴らしく、地味ながらこのアルバムを引き立てる名曲です。 サックスソロもクールな後味を残します。 ギターのイントロは日本のニューミュージックのような「Hurtin’ Doesn’t Go Away」は Robert John の自作曲。 曲が少し弱いかなあという印象です。 タイトル曲の「Back On The Street」は Jackson Browne が歌ったほうがいいのでは、と思うような爽快なナンバー。 サビのリピートで転調することもリスナーに読まれてしまうような予定調和な展開に好感するのですが、3回もするとは侮れませんね。 ラストの「You Could Have Told Me」は、お決まりのスムース&メロウな楽曲。 夜の海辺でモヒートでも飲みながら、アルバムを聴き終えた後のことを考えるカップルのために与えられた 3 分 22 秒です。
 
  しかし、34 度くらいある昼間に窓を開けて自然の風だけでこのアルバムを 2 回聴きましたが、不思議と熱さを感じませんでした。 冗談のように聞こえるかもしれませんが、このアルバムは体感気温を 2 度くらい下げて感じさせる効能を持っていると思います。 嘘だと思ったら、Amazon で CD を買ってみてください。
  
  いまは 2011 年、ほとんどの名盤が CD 化されているのに、今日まで忘れられてしまったこのアルバムが今年再発されるのは、何かの奇遇としか思えません。 今年の夏はクルマのなかではこのアルバムばかり聴くことになるのでしょう。 映画「波の数だけ抱きしめて」のような世界感に浸りたい方にもお薦めの名盤です。

■Robert John / Back On The Street■

Side 1
(So Long) Since I Felt This Way
Hey There Lonely Girl
Just One More Try
On My Own
Give Up Your Love

Side 2
Sherry
Winner Take All
Hurtin’ Doesn’t Go Away
Back On The Street
You Could Have Told Me

Produced by George Tobin
Arranged by George Tobin and Mike Piccirillo
Recorded and mixed at Studio Sound Recorders, North Hollywood, California

Drums : Craig Krampf, Ed Greene on ‘Hey There Lonely Girl’
Bass : Scott Edwards, Wade Short on ‘Hey There Lonely Girl’
Guitars : Mike Piccirillo, Bill Neale played solo on ‘Just One More Try’
Keyboards : Stewart Levin, Bill Cuomo on ‘Just One More Try’ and ‘Back On The Street Again’
Synthesizers : Mike Piccirillo
Sax : Joel Peskin
Harp : Katie Kirkpatrick
Bells : Mark Zimosky
Electric Sitar : Mike Piccirillo
Background Vocals : Robert John and Mike Piccirillo, Edna Wright and Darlene Love on‘Hey There Lonely Girl’

Horn arrangements : Gary Scott on ‘(So Long) Since I Felt This Way’ and ‘winner Take All’

EMI America SW-17027



最新の画像もっと見る

コメントを投稿