Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

David Pomeranz

2006-12-20 | SSW
■David Pomeranz / New Blues■

 David Pomeranz のデビュー作は、セカンドアルバム「Time To Fly」と同じ 1971 年にリリースされました。 1 年に2 枚のアルバムということなので、この「New Blues」は 1971 年の早い時期に発表されたものだと思います。 「Time To Fly」は豪華なミュージシャンを集めたアルバムであるのに対して、この「New Blues」のバック・ミュージシャンは馴染みのない名前ばかりです。 そんななか、光るのが Paul Simon のクレジット。 とはいえ、エレキ・ギターだけの参加ですので、サウンド的にはまったく意識することはありません。

 自分自身が、David Pomeranz のアルバムを「The Truth Of Us」から遡って聴いてきたので、このアルバムを初めて聴いたときはかなりがっかりした覚えがあります。 というのも、ピアノ系 SSW/AOR ミュージシャンというイメージの強いDavid Pomeranz にもかかわらず、このアルバムではむしろギターが中心のシンプルなサウンドにまとまっているからなのです。 かろうじてピアノが中心的な役割を演じている楽曲は2曲くらいしかありません。 これは、デビュー時の David Pomeranz の音楽的な方向性の迷いなのか、まだミュージシャンとしての個性が確立していないからなのか、あるいは時代背景やマーケティング的な要因からこのような音に仕上げたのか、なのでしょう。 いすれにしてもミュージシャンとしての未成熟さを感じざるを得ないのです。
 そんななか、「Brenda , Please」や「Singin’ On The Train」は、冬のニューヨークをイメージさせる美しい曲に仕上がっています。 今の David Pomeranz からは考えられないカントリータッチの「Missin’ Song」(この曲にPaul Simonが参加)やジャズテイストの濃い「New Blues」や「Can’t Get Over You」などは、まだまだ習作という印象です。 ピアノ系のバラードの「I’ll Never Be Gone」は後にDavid Pomeranzの歩んだ路線に最も近い楽曲。 二拍子でポップな「What’s To Become Of Me?」では、彼のカズーのソロも聴くことができます。

 ほとんどジャズのアルバムデザインという感じのジャケットに浮かぶ青白い David Pomeranz の表情。 それはクールでいて何か頼りない傷つきやすい青年のイメージです。 ここに収録された音源は、ぐつぐつ煮込む前の甘酸っぱいトマトシチューのようですが、これが彼の出発点、そして原点です。 このアルバムの反省があって、名盤「Time To Fly」が生まれたとするならば、David Pomeranz の音楽人生において必要不可欠なプロセスだったのかもしれません。 これから 1年もしないうちに、David Pomeranz は大きく成長するのですが、残念ながら商業的な成功を収めることができないまま、Decca との契約が終了してしまうのです。

  David Pomeranz の特集は今日でおしまいです。 いつの日か、彼のすべてのアルバムが CD 化されることを願っていますが、ここまで CD 化が遅れたミュージシャンも珍しいですね。 それだけに「The Truth Of Us」の CD 化は画期的な出来事だと思います。 あ、今日が発売日だった!

 

■David Pomeranz / New Blues■

Side-1
Brenda , Please
Missin’ Song
New Blues
Singin’ On The Train
Brandy Wine

Side-2
Tunnel Is That Away , The Vet Took The Cat Away Blues
I’ll Never Be Gone
What’s To Become Of Me?
Can’t Get Over You
Aching

Produced by Ray Ellis
All songs written and arranged by David Pomeranz

David Pomeranz : acoustic guitar , piano , percussion , kazoo
Sandy Nassan : electric guitar
Steve Mendel : fender bass
Jack Gerow : electric guitar
Mike Conner : piano ,organ
Paul Simon : electric guitar
Donald Macdonald : drumsn , percussion
Clark Pierson : drums
Jule Reggerio : bass
Ronnie Zito : drums
Jerome Richardson : tenor sax , flutes


Decca Records DL 75274


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