Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Van Dunson

2006-07-08 | SSW
■Van Dunson / Van Dunson■

 ワールドカップに気をとられて、すっかり忘れていたのが世界最大の自転車レース「ツール・ド・フランス」です。 昨年のランス・アームストロングの前人未到の 7連覇と引退により、今年は本命不在の混戦模様です。 来週から山岳ステージが始まりますので、J-Sportsでの生中継が楽しみです。
 自転車つながりということで強引に持ってきたのが、The Bicycle Music Company という聞いたこともないレーベルから 1979年にリリースされたこのアルバム。 主人公の Van Dunson もどうやらこのアルバムしか発表していないようですし、レーベルの存在とともに、ほとんど語られたことのない作品だと思います。

 そんなマイナーなレコードなのですが、僕も買ってからまともに聴いたのが1回しかありませんでした。 その時の印象があまりにも薄いために、レコード棚のなかで放置されたままになっていました。 今回、久しぶりに聴きなおしましたが、やはり特筆すべき楽曲もなく、埋没していっても仕方ない作品だと思います。
 全体的には、パワーポップと 80年代風のロックサウンドに近いのですが、曲が弱いのにはどうしようもありません。 A 面では、「Satellite」「You’re All I Need To Get By」が何とか聴ける程度。 B 面は、スーパートランプに少し似ている「Frozen Flight」、曲としては最も出来のいいバラード「Introductions」など、A 面よりは聴き応えがあります。  
 この手のサウンドでは同時代のものとしては、同じく未 CD 化作品で比べると、Franklin Micare のアルバムに近いものだと思いますが、レベルはこちらのほうが低いですね。 

 では、なんでそんなアルバムを持ち続けているのかというと、ひとつは Margo Guryan がProducer でクレジットされている点は大きいです。 1968 年の名盤「Take A Picture」で独特の囁くような歌声を披露してくれた Margo Guryan が、10 年以上経った 1979 年にどうして Producer としてクレジットされているのか。 ここがこのアルバムの最大の謎であり存在意義でもあるのです。 Margo Guryan が同名の別人だとは考えにくいので、彼女のマニアは要注目です。 ただ、サウンド的には、彼女の存在はまったく影響を与えていないと思いますので、そこはご注意ください。

 しかし、このセンスのないジャケット。 Van Dunson の声も深みのないネコ声ですし、まったく売れる要素が見当たらないアルバムなのですが、どうしても気になってしまう点がもう一つ。 冒頭にも書きましたが、The Bicycle Music Company というレーベル名です。 まさか今は存在していないだろうと思って検索してみると、なんと公式サイトが出てきました。 そこのWriters / Artists の部分をクリックすると、Margo Guryan や彼女の Produce 作品「Oklahoma Toad」で有名な Dave Frishberg の名前を見つけることができました。 そして、なんと Van Dunson の名前も。 しかし、サイトの内容は乏しく、この会社がレコード会社として存続しているという臨場感を感じないところが、不思議ですね。
 The Bicycle Music Company の頭文字を並べて TBMC として品番をつくり、そこから 2 番目のリリースだったと思われる、TBMC 2 というこのアルバム。 最初の 1 枚はいったい誰の作品だったのでしょうか。 とても気になります。



■Van Dunson / Van Dunson■

Side-1
Human Error
Satellite
Baby, I Believe In You
You’re All I Need To Get By
Is It Right

Side-2
Frozen Flight
Introductions
The Transient
Do It Better
How Long Will It Take

Van Dunson : piano , lead vocals , vocal harmonies
David Wheatley : piano , additional keyboards
Dee Murray : bass , vocal harmonies
Jim Varley : drums
Slick : guitar
Ian Underwood : synthesizers

Songs by Van Dunson
except `You’re All I Need To Get By’ by Nickolas Ashford and Valerie Simpson
Arranged by Van Dunson , David Wheatley
Orchestrated and Conducted by David Wheatley

Produced by David Rosner , Margo Guryan

The Bicycle Music Company TBMC 2


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1 コメント

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Margo Guryanとのかかわり (エリカ)
2009-09-14 13:59:21
はじめまして。

今から3年以上前のエントリーになりますが、以前から気になっていましたのでコメントを書かせていただきます。

まず、TBMCは原則的にレコード会社ではなく、Margoの旦那さんのDavid Rosnerが1974年に設立した音楽出版社です(現在は息子さんが跡を継いでます)。後にも先にもTBMCがレーベルとして機能したのはこのVan Dunson作品(およびそこからカットされたシングル)のみとなります。

先日、このレコードをリリースするに至る経緯をMargo本人に尋ねてみました。Davidは音楽出版という職業上、常日頃から新人を発掘してはデモ・テープを作り、レコード会社に売り込んでいました。そこでたまたま同じスタジオを使っていたVan Dunsonをスタジオ・オーナーから紹介され、デモを気に入った夫妻は彼を引き取ることにしたそうです。
自身がピアノ教師でもあるMargoはダブル・ピアノでアンサンブルを行うアイディアを提案、セカンド・ピアニストとしてDavid Wheatleyに声を掛け、まずは数曲分のデモを各レコード会社に売り込みました。当初、反応は上々で、その後、アルバム一枚分の本格的なレコーディングに入ったそうです。ところが、完成してみると、時代の音楽的潮流が一気に変わり、以前とは打って変わってレコード会社は興味を示さず、やむを得ずTBMC名義でリリースすることに相成ったとのことでした。
確かにこのアルバムは全く売れなかったそうですが、Margo本人は今でもこの作品を非常に気に入っていて、自分が関われたことに誇りを持っていると語ってくれました。
ちなみに、カタログ番号"TBMC 1"は、このアルバムからの先行12インチ・シングル"Introductions"に割り当てられています。

また折を見て他のエントリーにもコメントさせていただきます。よろしくお願いします。
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