Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Peter Lemongello

2010-08-08 | AOR
■Peter Lemongello / Do I Love You■

  Steve Eaton の名盤「Hey Mr. Dreamer」を最初に聴いたときの衝撃は忘れられません。 ラストにカーペンターズのスマッシュ・ヒット「ふたりのラブソング」のオリジナル・バージョンが収められていたからです。 そもそもオリジナルが Steve Eaton ということすら知らなかったうえに、この曲の原題が「All You Get From Love Is A Love Song」という認識もなかったので、メロディーを聴いて思わず声が出てしまうほど驚きました。 カーペンターズのバージョンとはかなり趣を異にしたミディアムなオリジナルはそれ以来、僕の愛聴曲となっています。 その後、興味はカバー曲の収集にも及び、この Peter Lemongello のアルバムに購入へと繋がっていったのです。

  そんな理由でもなければ手にしなかったかもしれない、Peter Lemongello のアルバムですが、これは 1976 年に発表されたセカンド。 好きになれないジャケットを裏返すと、意外にもプロデューサーとして Jay Senter の名を発見。 彼は Steve Eaton や Bill LaBounty を手掛けたプロデューサー、そして 1976 年という同時代性もあって、期待は急激に膨らみました。  結論から言うと、Lee Ritenour や Mike Baird などの腕利きのミュージシャンのサポートも効いて、かなり聴きごたえのある AOR 作品となっていました。 もちろん、「All You Get From Love Is A Love Song」の存在も大きいのですが、それ以外にも「That’s A Melody」をはじめとするマイルドで艶やかなサウンドが展開されています。 そもそも Peter Lemongello は自作自演系のミュージシャンではないようで、このアルバムも Neil Sedaka などの作家の曲で占められています。 そのことはレーベル面を見ないと判らないのですが、そのなかに David Pomeranz の「If You Walk Away」と Randy Edelman の「Where Did We Go Wrong」が含まれていたのです。 これには興奮しました。なにしろ、二人とも僕の敬愛するピアノ系 SSW なのですから。
  前者は David Pomeranz のサードアルバム「It’s In Everyone Of Us」を代表するバラード、そして後者は Randy Edelman が最も脂の乗りはじめた時期の「Prime Cuts」に含まれた壮大なバラード。 ともに、ボーカリストとしての Peter Lemongello の魅力を引き出そうとした Jay Senter の選曲だと睨んでいますが、これが大正解。 結果的に「All You Get From Love Is A Love Song」のカバーよりもはるかに出来が上でした。 プロデューサーとしては通好みの存在ですが、Jey Senter もなかなか渋い仕事をしますね。 彼の名前だけを頼りに見知らぬレコードに出会ってみたくなりました。
  
  さて、肝心の「All You Get From Love Is A Love Song」の出来ですが、Steve Eaton のスロウな仕上がりと、カーペンターズのライトタッチなものと、どちらに似ているかと言えば、断然カーペンターズのほうでした。 これにはいささか落胆したのですが、ひとつ史実的な観点からひとつ気がつきました。 オリジナルは 1974 年で、カーペンターズのほうは人気が落ち目になってきた 1977 年のヒット。 そして、このアルバムが 1976 年なのですが、イントロのでパーカッションがポコポコするところが両カバーとも同じなのです。 ということは、このアルバムでの Mike Melvoin のアイディアを、Richard Carpenter が拝借したという可能性も出てきたのです。 そんなことに注目する人はいないかもしれませんが、あまりの似方なので気になってしまいました。
  それはさておき、名曲がいろいろな人によって再生されることは大事なことで、この曲もカーペンターズがシングルカットしなければ世の中に広まることもなかったでしょう。
 「愛が残したのは愛の歌だけ...」、この原題を「ふたりのラブソング」とした人のセンスもかなり突き抜けていますね。

■Peter Lemongello / Do I Love You■

Side 1
That’s A Melody
Miss You Nights
When I Think Of You
The Hungry Years
All You Get From Love Is A Love Song

Side 2
Do I Love You
If You Walk Away
Where Did We Go Wrong
From Red To Blue
You’ll Never Know

Produced by Jay Senter
Arranged by Mike Melvoin

Drums : Mike Baird
Bass : Jim Hughart
Guitar : Lee Ritenour
Keyboards : Mike Melvoin
Background vocals : Nigel Olsson, Dee Murray, Tom Behler, Jim Haas, Linda Carey Dillard and Laura Creamer

Recorder at Sunset Recording Studios, Los Angeles

Private Stock Records PS 2018


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