Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Robert Thomas Velline

2006-11-12 | SSW
■Robert Thomas Velline / Nothin’Like A Sunny Day■

 レコード棚をいじっているうちに、あまり見覚えのないアルバムを発見。 きっと、1度しか聴いていないまま、自分の記憶から抜け落ちていた Robert Thomas Velline のアルバムです。 このヒゲ面のアップというジャケットは、Richard & Linda Thompson のアルバム「Pour Down Like Silver」を思い出させますね。

 このアルバムについては未知のことが多く、さっそく調べてみたのですが、そこには驚くべき事実が隠されていました。 いや、隠されていたというよりは、今日まで僕がその事実を知らなかったという方が正しいかもしれません。

 というのも、この Robert Thomas Velline は、1960 年代に Bobby Vee 名義でヒット曲を連発した人物だったのです。 Bobby Vee については、詳しくは知りませんが、Boddy Holly のフォロワー的な存在として売り出されたアイドルといったところでしょうか。 彼の公式ページに掲載されているディスコグラフィーを見ると、ちょっと気恥ずかしくなるようなものばかりです。 
 そんな彼が、1970 年代に入り本名を名乗って発表したのが、今日ご紹介するアルバムだったのです。 時は 1972年、たしかにシンガーソングライターの全盛期でもあり、脱アイドルという方向性を世の中に示したかったのでしょう。 アルバムの内容も、カントリー色がやや強いものの同時代性あふれる SSW アルバムに仕上がっています。

 典型的なカントリー系 SSW 作品である「Every Opportunity」は、どこかで聞き覚えのあるサビだったので、曲名検索してみましたが、他人のカバーなどはなく、偶然の一致か誤解なのかなあと思いました。 そういえば、それに似た話がスポーツ紙やワイドショーで取り上げられていましたね。 アルバムの特徴としては、サイドで地味な立ち位置になりがちな有名セッション・ギタリストの Dean Parks がソロやドブロなど前面で活躍していることでしょうか。 Dean Parks には悪いのですが、ついついソロは Larry Carton でサイドに Dean Parks というイメージが染み付いてしまっているので。 もうひとつの特徴は、Robert Thomas Velline のセルフ・コーラスの美しさと分厚さでしょうか。 アルバムラストの「It’s All The Same」あたりにその傾向が顕著です。
 Bobby Vee 名義でもレコーディングしていた「Take Good Care Of My Baby」は、Goffin / King 作品。 1961 年に曲が作られて、Bobby Vee も同年にレコードを出しているので、もしかして、Bobby Vee がオリジナルのシンガーなのでしょうか? いずれにしても、このアルバムのバージョンは、ゆったりした弾き語りメインのスロウな仕上がり。 Goffin / King 作品を SSW がカバーすると大体がスロウな仕上がりになりますよね。 ブリル・ビルディング・ポップのカバーになるので、当たり前かもしれませんが。

 Robert Thomas Velline 名義でのこのアルバムは商業的にはまったく成功しなかったようで、次の作品が世に出ることはありませんでした。 Bobby Vee としても新録は出ていないようで、ベスト盤や編集盤などが出されているだけのようです。 公式ページの Tour Info を見ると Brian Hyland や Chris Montez といった 60 年代の懐かしい面々でツアーをしていました。 日本で言うとグループサウンズのメンバーによる「懐かしのメロディ」みたいなものなのでしょう。

 アイドルから本格的な SSW への脱皮を図り、失敗した Robert Thomas Velline。 その時の彼の心境を察すると切ないですね。 名前を変えて、風貌まで一変させたのに... 
 その後、Bobby Vee に戻った彼の音楽人生の中で、このアルバムの位置付けはどのようなものなのでしょうか。 幸い、まったく封印されていることは無さそうですが。

 

■Robert Thomas Velline / Nothin’Like A Sunny Day■

Side-1
Every Opportunity
Captain On The Line
Halfway Down The Road
Hayes
My God And I

Side-2
Going Nowhere
Home
Take Good Care Of My Baby
Here She Comes Again
It’s All The Same

All Songs written by Robert Thomas Velline
Except ‘My God And I’ by John Buck Wilkin
‘Take Good Care Of My Baby’ by Carole King and Gerry Goffin
‘Home’ by R.Velline and John Durill

Produced by Dallas Smith

Acoustic Guitar : R.Velline , Les Emmerson , Dean Parks
Bass : Joe Lamanno , Brian Lading
Pedal Steel : Red Rhodes
Drums : John Raines , Mike Belanger
Background Vocals : Les Emmerson , Brian Rading , Rick Belanger , Mike Belanger , Ted Gerow
Lead Guitar : Dean Parks
Piano : Bill Cuomo , Ted Gerow
Horns : Lew McCreary , Charles Findley
Dobro : Rodney Dillard
Banjo : Billy Ray Latham
Organ : Duane Scott

United Artists UAS-5656


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