Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Ness Harding

2010-01-17 | SSW
■Ness Harding / A Matter Of Time■

  南部ジョージア州出身の女性シンガーソングライター Ness Harding の唯一と思われるアルバム。 1980 年前後の作品と思われますが、詳細は不明です。
  デザインやジャケットの装丁からは、レベルの高い内容を期待していたのですが、正直に言ってそれほどの作品ではありません。 その要因となっているのは、演奏を Ness Harding がほぼ一人で行っているところにあります。 Todd Rundgren のような演奏力と緻密さによって多重録音が行われているのであれば違和感はないのですが、彼女には厳しかったように思います。 もちろん、自主制作に近い録音環境では、ハンディを負わざるを得ませんが、微妙な演奏のズレが気になって仕方ないのです。 

  アルバムは通しても 26 分ほどしかなく、あまりの短さにも驚かされます。 12分に満たない A 面からおさらいをしてみましょう。 まずは「A Matter Of Time (opening)」ですが、タイトル曲だけあってアルバムの中でも特に光る 1 曲となっています。 アシッドなフォーク感も漂い、演奏を除けば期待が膨らむ入り出しと言えるでしょう。 一番の親友のことを歌った「Me And Stacy」は彼女への愛情がアップテンポで歌われます。 つづく「Fly Away」も似た曲調で、アコギとドラムスが強調されています。 カモメの鳴く声と波の音からスタートする「Parting Of Man」は、アルバムのハイライト。 冷たいシンセの音とサイケデリックな雰囲気は、アメリカ南部の音とは思えません。 特に何の盛り上がりも見せずにフェードアウトするところもこの曲の魅力となっています。

  B 面に移ります。 明るいフォークロック調の「A Lesson」は最もポップな仕上がり。 つづく「Lissa’s Rose」はギターとコーラスのみの幽玄な佇まい。 独特の翳りが印象的な楽曲です。 「Your Colorado Way」もアルバムのなかでは重要な楽曲。 この曲のようにスロウな楽曲では、先に述べたような演奏のズレは少ないため、サイケな浮遊感が独特の味わいを出しているような気がします。 ギターの弾き語りの「Thank You」も流れを引くような曲調。 気だるい小曲には、押し殺した情念のようなものを感じます。 ラスト「A Matter Of Time (closing)」は、オープニングの楽曲のリプライズ。 オープニングに比べると一気に生気を失ったアレンジとボーカルを聴いて気がついたのですが、アルバムは曲を追うごとに気分が落ち込んでいくような流れになっていました。 特に B 面にはアップテンポの曲がないために、アシッドフォークが好きな方にはたまらない展開かもしれません。 

  とはいえ、アルバムの片面に毛が生えたような長さで、あっという間にアルバムが幕を閉じてしまい、物足りなさが強く残るのは事実です。 せっかく二つ折りの豪華な装丁にしたのに勿体ない気がします。 いつものように Ness Harding で検索してたところ、何一つ引っかかってきませんでした。 スピリチャルな光に包まれたこのアルバムは、マニア向けのアシッド・フォーク盤という位置づけのなかで、やがて忘れられる運命なのでしょう。

■Ness Harding / A Matter Of Time■

Side 1
A Matter Of Time (opening)
Me And Stacy
Fly Away
Parting Of Man

Side 2
A Lesson
Lissa’s Rose
Your Colorado Way
Thank You
A Matter Of Time (closing)

Produced and directed by Ness Harding
Recorded at Perfection Sound, Inc. Smyrna, Georgia
All instruments performed by Ness Harding otherwise noted
Syndrums : Jay Paul
Drums on ‘Fly Away’ : Gregg Giacobbe
All compositions by Ness Harding otherwise noted
Lyrics on ‘Parting Of Man’ by Melissa Rogers



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