Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Dan Jenks

2006-05-24 | SSW
■Dan Jenks / Say No More■

 繊細そうな青年が微笑しながらフルートを手にしているジャケット。 一見すると、フルート奏者のインスト作品かのように見えてしまうこのアルバムは、Dan Jenks が 1981 年に発表した SSW の名盤です。
 このアルバムは、シュリンクビニールに 1970 年代に活躍した SSW である 「Shawn Phillips 参加」ということだけを印刷したステッカーを貼ったり、裏面にはやはり Shawn の Dan Jenks 絶賛コメントが印刷されていたりと、他人頼りのプロモーション展開がやや興醒めなところが第二印象として残っています。 僕はそのステッカーの緑色やデザインが嫌いだったので、開封口しか開いていない状態だったのですが、ビニールを破り捨ててしまいました。 
 
 そんな Dan Jenks のアルバムですが、内容の素晴らしさで SSW ファンのなかでは有名なものだと思います。 ちょっとドキドキしながら、久しぶりに針を落としてみました。
 A 面 1 曲目の「My Part」は、本人の弾く軽やかなエレピをバックにしたソフトロック調の曲。 クレジットを見ると、かなり多くの楽器を本人がこなして、それをオーバーダビングしていることがわかります。 だからと言ってぎこちなさは全く感じません。 後半のフルートソロが心地いいですね。 この曲でアルバムの全体像がつかめると思います。 つづく「For My Lady」はアルバムの代表曲。 チェロの響きがおごそかな気分にさせてくれるイントロから展開していくアレンジの見事なこと。 楽曲の出来も素晴らしく、フルートとチェロがシンクロするあたりは、緩急自在の投球術という感じで、リスナーは見送り三振という感じです。 一転して、バロック調のギターをバックにしたシンプルな「A Child」へ。 Shawn は本当に器用な人なんだなということを実感します。 つづく「The Old Cliché」もステキな楽曲。 フルートとチェロが入ってくるとスピーカーからマイナス・イオンが出てくるかのような気分にさせられます。 A 面ラストの「Windy Winter Whisperings」は、硬めのチューンにしたギターと重々しいチェロの対比が印象的な仕上がりです。
 B 面に移りましょう。 軽いフュージョン・タッチの「In These Cackling Cafes I Pray」は、繰り返されるリフが George Benson の「Breezin'」を連想させます。 あちらもメロウな曲ですが、こちらもエレピとフルートのソロが短く交互にかけあう部分など、かなりメロウです。 Shawn がバックコーラスで参加した「Roots Of War」は、他の曲にない雰囲気を持っています。 地味というか重めというか、シリアス度が高いという感じの曲ですね。 曲名からして、歌詞の内容もそうなのでしょう。 かろやかなギターに導かれて始まる「Something Secret」は、アップテンポで軽快な曲。 参加している Mark Neuenschwander との会話まで収録されたアルバムタイトル曲「Say No More」は、ライブレコーディングか一発録りのどちらかだと思います。 Dan Jenks のボーカルもかなりリラックスしてるように聴こえます。 ラストの「After Darkness Takes Its’ Toll」は、mini-moog で作り出された雨と雷の SE 音から始まります。 序盤はスローな楽曲の上に Shawn のバックコーラスが響き幻想的な感じですが、曲調が次第にアップになっていく様は希望に満ちた感じです。 そして、最後はまた SE で幕を閉じていきます。

 アルバムを聴き終えると、充実した内容にかなり満たされた気持ちになります。 入手しにくいアルバムのなかには、たいした内容でない作品も多かったりするのですが、このアルバムのクオリティの高さは保証できるものだと思います。
 本名、Daniel Aaron Jenks 。 彼のこのアルバム以外の作品をぼくは知りませんが、もしかして唯一のアルバムなのでしょうか? だとしたら、もったいない才能の持ち主なだけに、残念です。 Shawn Philips が裏ジャケで、extremely creative musician と語っているのですが、これはウソではありませんね。



■Dan Jenks / Say No More■

Side-1
My Part
For My Lady
A Child
The Old Cliché
Windy Winter Whisperings

Side-2
In These Cackling Cafes I Pray
Roots Of War
Something Secret
Say No More
After Darkness Takes Its’ Toll

All the songs written , arranged and produced by Dan Jenks
Engineered by Mark Copenhaver

Recorded at Soundsmith Recorders , Inc. Indianapolis , Indiana

Dan Jenks : lead and harmony vocals , acoustic and electric guitars , flute , alto flute ,
electric piano , mini-moog , fretless bass
Art Reiner : drums and congas , percussions on A-①④⑤ , B-①③ , timpani on B-⑤
Steven Morse : harmony vocals on A-①④ , B-①③
Marjorie Lange : cello on A-②④⑤ , B-③
Randy Kemp : drums and percussion on A-② , B-②
Leo Thompson : bass on A-② , B-②
Bob Airis : drums on A-④
Steve Dokken : fretless bass on B-①
Charles ‘Skeet’ Buchor : electric piano on B-①
Cliff White : congas on B-①
Steve Lester : triangle on B-①
Shawn Philips : background vocals on B-②⑤
Mark Neuenschwander : acoustic bass on B-④
Mark Copenhaver : mini-moog on B-⑤

Natural Act NA 8101


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1 コメント

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Unknown (ohanakamakame)
2011-10-16 11:36:09
とうとうCD化されるようです。
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