Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Cheryl Ernst

2007-10-17 | SSW
■Cheryl Ernst / Always Beginning■

 名門 Bell から 1973 年に産み落とされた Cheryl Ernst の唯一のアルバムは、女性 SSW ファンの間では比較的知られている作品です。 安定したバック陣、クオリティの高い楽曲、そして清楚な Cheryl Ernst の声が上手い具合にブレンドされており、Tom Waits などを世に送り出した Bones Howe のプロダクションという安心マーク(笑)もあることから、人気盤となる要素は揃っているわけです。

 サウンド面では、すべてのアレンジを手がけている Bob Alcivar の手腕が光ります。 彼は 5th Dimension のアレンジで有名ですが、変わったところではアルファ黎明期の赤い鳥(「翼をください」の英語版など)も手がけており、いわばソフトロック会の裏番長みたいな存在です。 そして、リズムセクションが、Joe Osborne に Hal Blaine となれば鬼に金棒というわけですね。 さっそくレコードを聴いてみましょう。

 まずは A 面から。 「Fantasia Suite / Long And Sleepless Night」は、軽快なリズムとホーンセクションのサポートを得た名曲。 ソフトロック的なアプローチながらも、Cheryl Ernst のボーカルはあくまでもフォーク指向という組み合わせが新鮮に響きます。 「Love Moan」は、若干ながらもジャジーなアレンジで、エレピのソロにセンスを感じます。 つづく「In A Quiet Way」はタイトルから想像できるとおりのバラード。 ピアノとベースそしてギターという質素な編成で切々と歌いかける様はピュアなエモーションの結晶といえるでしょう。 この曲は 3 枚のソロ作品を発表している Jeffrey Comanor によるものです。 余韻をかみしめているうちに「Come To The Harvest」へ。 この曲はシンプルなワルツから途中で変化を見せながら展開していくところが特徴でしょう。 つづく「Only Today」はストリングスのカルテットのみで歌われる小曲。 2 分に満たない曲ですが、Bob Alcivar の思うがままという感じです。

 レコードを裏返します。 「He Moves Me」は、名手 Joe Osborne の骨太ベースがずっしりと響くファンキーなポップなチューン。 「Time And The City」はゆったりした流れに包まれた幻想的な曲。 「Shadows, Memories And Lost Moments」は、「In A Quiet Way」と同様にJeffrey Comanor のペンによるバラード。 ここでは Jeff がアコースティックギターでも参加しています。 ちなみに、彼のソロは 3 枚目しか持っていないので、この 2 曲が自身のアルバムに収録されてるものなのかは判りません。 「No One's Going To Change You」はライトにスイングする洒落た楽曲。 そしてラストの「Always Beginning」は優雅なワルツ。しっとりと上品にアルバムが締めくくられていきます。

 こうしてアルバムをとおして聴くと、さすが Bell Records というクオリティーを感じます。 同時代にアルバムを聴いたリスナーの満足感はかなり高かったことでしょう。 では、何故売れなかったのかと考えてみると、やはりこの時代は Carole King の一人勝ちだったわけで、それは仕方のないことかもしれません。 ギターを弾いている裏ジャケットもサウンドを想像するにはマイナスだったかもしれません。 しかし、この世に残された Cheryl Ernst の唯一のアルバムは 1970 年代前半の空気を瞬間凍結したかのような鮮度を保っており、個々の楽曲が放つ輝きはいまだに色あせていないのです。 なぜ CD 化されないのかが不思議です。



■Cheryl Ernst / Always Beginning■

Side-1
Fantasia Suite / Long And Sleepless Night
Love Moan
In A Quiet Way
Come To The Harvest
Only Today

Side-2
He Moves Me
Time And The City
Shadows, Memories And Lost Moments
No One's Going To Change You
Always Beginning

Production and Sound by Bones Howe

Orchestra arranged and conducted by Bob Alcivar
Rhythm guitar : Dennis Budimur , Cheryl Ernst
Electric guitar : Dennis Budimur , Louie Shelton
Acoustic guitar : Jeffrey Comanor , Cheryl Ernst
Piano: Art Lande
Vibraphone : Larry Bunker
Bass : Joe Osborn , John Yu ,Ray Brown
Drums : Hal Blaine
Congas : Larry Bunker

Bell Records 1126


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