Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Joe Taylor

2009-04-12 | Christian Music
■Joe Taylor / Spirit Light■

  Joe Taylor が 1972 年に発表したアルバムは、ヒッピー系の色濃いクリスチャン・ミュージックです。 音的には、ギター・ベースそしてコーラス中心のシンプルなフォーク・ロックで、ドラムが不在なところをベースが上手く補完しています。 その弾けるようなベースラインが、ルーラルでB級な印象を強めているのは間違いありませんが、逆に言うとそこがアルバムの個性となっています。

  Joe Taylor 本人によるカバーアートからは、宗教色の強さが強烈に伝わってきます。 思索にふける賢人達に割り込むように写り込んでいるのが、Joe Taylor 本人。 その横顔だけが写真というのもダサいのですが、左下のほうにも聖書を覗き込むような姿を発見し、思わず失笑してしまいました。 彼の真っ黒な長髪とあご髭は、当時の西海岸の音楽シーンのなかでは、かなりの異彩を放っていたことでしょう。 

  曲は一部の共作を除いて、Joe Taylor の自作曲なのですが、興味深いのはクリスチャン・フォークとは思えないようなグルーヴ感にあふれる曲が多い点です。 オープニングの「I'm In Love With My Lord」などは、曲のタイトルからは想像しにくいファンキーな曲。 神への感謝をテーマにしているのでしょうが、サウンドからはそんな真剣さが伝わってきません。 つづく「You Can Feel Real」は緩やかなバラード、妙なタイトルの「Plastic Jesus」はアシッド感あふれるフォーキーです。 Bob Friedman との共作「Spirit Light」は、落ち着きのある仕上がりで、コーラスにも味わい深いものがあります。 A 面ラストの「Open Arms For You」は、The Four Tops の名曲「I Can’t Help Myself」に酷似した歌い出しで、少々びっくり。 コード進行が同じだとベースラインも似てくるのですが、これは無意識にそうなってしまったのでしょう。

  B 面は、より能天気な気分の楽曲が続きます。 「Build Upon That Rock」、「Back To Galilee」、「Yours, Body And Soul」などは 1950 年台のロックンロールに通じるものを感じます。 あるいは、Jonathan Richman がソロでパフォーマンスする時の「いなたさ」に近いかもしれません。 パーカッションとギターのみの「In The Dark Of The Night」はスタンダードのような普遍性を感じさせる名曲。 ラストの「Bear Ye One Another's Burdens」はクリスチャン・ミュージックらしさが最もサウンドに現れたバラード。 ピアノが使用された唯一の曲で、Joe Taylor のボーカルも低音からファルセットに近い高音まで丁寧に歌われています。 この曲も Bob Friedman との共作ですが、彼が絡んだ 2 曲にはアルバムのなかでも出来がいいものとなっていました。

  こうして Joe Taylor のアルバムをレビューしてみましたが、ここに収録されていたのは、こてこての宗教音楽ではなく、むしろ西海岸のビーチで昼寝しながら聴きたくなるような、リラックスしたフォーク・ロックでした。 このジャケットからは想像できないサウンドとのギャップには、どうしても払拭できない違和感が残るのですが、1972 年という時代性、カリフォルニアという土地柄、そして本人のキャラクターがこうしたアルバムを生み出したのでしょう。  
  その後の Joe Taylor は音楽シーンから離れたようで、現在はなんとテキサス州で Mt. Blanco Fossil Museum という化石博物館の館長さんになっていました。 この「Spirit Light」も2007年には彼によって CD 化されており、ここから試聴することもできます。 しかし、まさか化石の研究家になっているとは...。


 

■Joe Taylor / Spirit Light■

Side-1
I'm In Love With My Lord
You Can Feel Real
Plastic Jesus
Spirit Light
Open Arms For You

Side-2
Build Upon That Rock
Back To Galilee
Yours, Body And Soul
In The Dark Of The Night
Bear Ye One Another's Burdens

Cover design and art : Joe Taylor
Rhythm guitar : Don Lee, Dave,John&Mark Smith, Joe Taylor
Piano : Kathy & Joel Peck
Bass guitar : Mark Smith, Don Lee
Lead & Steel guitar : Don Lee, Mark&John Smith, Joe Taylor
Back-up vocals : Teri Ketchum, Kathy Peck, Candy Perkins, Joe Taylor

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