Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

John Max Jacobs

2009-04-04 | SSW
■John Max Jacobs / A Prairie Dream■

  John Max Jacobs の唯一と思われるアルバムは、良質なアルバムを多く生み出すミネアポリスで 1984 年にレコーディングされました。 品番もなく、ディストリビューターも聞いたことのない Apricot Hill Records ということでほぼプライベート・プレスと思われます。 モノクロの水彩画のようなジャケットからは、サウンドはある程度想像できるのですが、1984 年という時代には不安を感じたのも事実です。 しかし、いわゆる 80 年代的なサウンドの特徴は、このアルバムには微塵も混入していませんでした。 ミネアポリス近辺のフォーキーなアコースティック・サウンドは、見事に継承されていたということなのでしょう。

  このアルバムに接して最初に感じたのは、全 15 曲という曲数の多さです。 分数も明記されているのですが、4 分超の曲が1曲だけ存在する以外は、ほぼ 3 分前後の曲は多く、2 分に満たない曲も 4 曲収録されています。 個々の楽曲は、かなりの粒ぞろいなので、シンプルでライト・タッチなアコースティック・サウンドが十分に堪能できる作品に仕上がっています。
  アルバムを聴き始めてすぐに感じるのは、プライベート盤とは思えない音の良さとボーカルの瑞々しさです。 John Max Jacobs の声質は、極めて繊細かつ上品で、この手のサウンドには最もフィットするもの。 それを支える演奏は、アコギ中心の素朴な編成で、半分くらいは弾き語り、それ以外の曲もほとんどの曲はギターとベース、そして薄く入るドラムスという編成で生み出されています。

  アルバムは先に進めば進むほど、深く染み入ってくるような流れとなっていて、A 面よりも B 面のほうが味わい深く感じます。 A 面が悪いというのではないのですが、時計の効果音がしっくりこない「Clock A-Tickin'」やエレキ・ギターが参加する唯一の「Railroad Man」が、足を引っ張る形になってしまっています。 一方、B 面にはこうしたマイナス点がありません。 とくに珠玉の名曲「Frankie Lee McKinney」は、出会えて良かったと感謝したくなるような出来栄えです。 ♪Frankie Lee McKinney, Are you sleeping well tonight?♪ という温もりのあるメッセージが、いつも以上のハイトーンで歌われるこの曲は、もし僕がコンピレーション盤を作るとしたら、必ず入れるであろう 1 曲です。 
   ラストの前の「The Open Gate」は、ピアノによるインスト。 わずか 41 秒しかないのですが、こうした間奏曲を入れるタイミングと、それをピアノにするという変化の持たせ方は、秀逸だと思います。  ブログを書きながら、アルバムを 2 回通して聴きましたが、カントリー色がまったく無いところもアルバムの特徴だと気付きました。  そして、シンガーソングライターのサウンドとしては、どことなく英国的な匂いも感じます。  歌詞は、反戦・反核のメッセージ色の強い曲が数曲ありますが、それ以外は身近な人々のことを歌ったものが多いようでした。

   John Max Jacobs が、プレイリー(大草原)の向こうに見た夢は、こうしてレコードという形あるものとなって残りました。  それから 25 年の年月を超えても、その内容は時代に左右されない名盤と呼ぶに相応しい魅力を有しています。  彼の名前をネットで検索しても、ひとつとして引っかからなかったことが気になりますが、John Max Jacobs は、いまもどこかで歌い続けていているのでしょうか。

 

■John Max Jacobs / A Prairie Dream■

Side-1
No Artist’s Hand
Clock A-Tickin’
Railroad Man
Lazy Willow
Roll On Santa Fe
Dear Father
Queen Anne’s Lace

Side-2
Learn To Forgive
I Need You Here
Frankie Lee McKinney
Waiting For The Harvest
Iron Butterfly
A Place Between
The Open Gate
Leavin’ In The Mornin’ Light

All songs written and arranged by John Max Jacobs
Recorded at Custom Studios, Minneapolis, Minnesota

John Max Jacobs : rhythm and lead guitar, piano, vocals, effects
Terry Gardner : bass, lead guitar
Dave Jacobs : lead guitar
Kent Howes : drums
Bob Wilson : harmonica, back-up vocal
Roger Bates : piano

Distributed by Apricot Hill Records