■Jerry Sinclair / It’s Just The Mercy Of God■
一度見たら忘れることのできないアルバムです。 僕も長年、クリスチャン・ミュージックのレコードに多く接してきていますが、このジャケットを超えるインパクトを持つ作品には未だに出会っていません。 このジャケットが故に、このアルバムでもアメリカでもカルト的な扱いをされているようですが、内容はいたってマイルドで予定調和なサウンドで占められており、典型的な CCM として語ることのできる作品です。 時代的にも、サイケ感やアシッドなテイストを想像してしまいがちですが、そういった指向性は全くありません。
アルバムがリリースされたのは 1974 年、オクラホマ・シティのマイナーレーベル CAM の作品です。 時代的には、まだ洗練されておらず、まったりとした MOR 感が全体を包んでいるのですが、厚めのコーラスと、全編に漂うストリングスがアルバムを美しくコーティングしているような印象です。 この手のサウンドの魅力を上手く伝えることは難しいのですが、参加ミュージシャンのなかに、唯一見覚えのある名前がありました。
その人物は、Hadley Hockensmith です。 彼は AOR 的な CCM アルバムのなかでも名盤の誉れ高い Bruce Hibbard の「Never Turnin’ Back」に参加し、ギターやプロデュースで大活躍しているのことで知られているミュージシャン。 その Hadley Hockensmith の参加したレコードとしては最も古い部類に入ると思われるのが、このアルバムなのです。 ‘Hawk’ というミドルネーム付のクレジットもここでしか見たことがありません。
そういえば、Bruce Hibbard もオクラホマ出身。 彼のデビュー作「A Light Within」は 1976 年の作品ですので、このレコードよりも 2 年遅れでのリリースです。 Bruce Hibbard と Jerry Sinclair をつなぐのはオクラホマの CCM 人脈ですが、この 2 人がどこかですれ違っていた可能性は少なくないのではと思っています。
前置きが長くなりましたが、アルバムを簡単に紹介しておきましょう。 冒頭の「He Is The Truth Of Life」は、仰々しすぎるくらいのバラードですが、嫌味のないアレンジに好感。 つづく「I’m Gonna Rise」も同様の歌い上げ系。 しっとりしたバラード「Jesus Lifegiver」、女性コーラスが桃源郷のような気分にさせる「Here’s The Same」と続き、ハイライトの「It’s Just The Mercy Of God」へ。 この曲はゴスペル的なコーラスとJerry の熱唱が重なり、全ての人の心に染み入るであろう感動的な楽曲です。
B 面は、メロウで落ち着きのあるバラード「Just Now」、ソフトロック的な陽気さが漂う「You Can Count Your Nickels, Girl」、ホームパーティで歌うような「Happy Birthday (Jesus)」と元気のいい曲が並びます。 「Stompin (In The Name Of The Lord)」は平凡なミディアムですが、ラストの「The Cross Is The Bridge」は、Jerry Sinclair が歌い上げるスロウ・バラードで、ホーンセクションが唯一入った曲。 ラストに拍手が収録されており、この曲だけが 1973 年のライブ録音に、ボーカルを録り直したものでした。
こうして楽曲について簡単に触れて見ましたが、どことなく野暮ったい雰囲気は拭えないものの、メロディの美しさやボーカルの魅力など楽曲の持つ本質的なクオリティはかなり高いものがあると言えるでしょう。
このアルバムは、Norm MaGary なる人物が描いたこのジャケットの影響もあって、正当な評価がされないまま埋もれてしまいました。 クレジットには、「Front cover drawn from personal experience」とありますが、いったい彼はどんな経験をしたのでしょうか。 そして、何故 Jerry Sinclair は自らの大事な作品にこの絵を選んだのでしょうか…
残念なことに、Jerry Sinclair は、1993 年 1 月にロスで亡くなっており、この疑問が解明されることは永遠になさそうです。
■Jerry Sinclair / It’s Just The Mercy Of God■
Side-1
He Is The Truth Of Life
I’m Gonna Rise
Jesus Lifegiver
Here’s The Same
It’s Just The Mercy Of God
Side-2
Just Now
You Can Count Your Nickels, Girl
Happy Birthday (Jesus)
Stompin (In The Name Of The Lord)
The Cross Is The Bridge
All materials on this album produced, written, arranged, and sung by Jerry Sinclair
Recorded at CAM studios, Oklahoma city, Oklahoma
Jerry Sinclair : piano, chimes, strings, lead vocals
Jonathan David : piano
Harlan Rogers : organ
Hadley ‘Hawk’ Hockensmith : bass, guitar
Mike Scone : bass
Mike Raymond : drums
Keith Edwards : drums
Jerry Hall : steel guitar
Vic Cappetta : flute, conga, cowbell
Billy Walker : guitar
Kenny Walker : guitar
Bobby Williams : guitar
Bruce Glover : horns, strings
Joe Wright : strings
Group One Background Vocals : Darrell Coppedge, DeLaine Wilson, Bill Myers, Renee Pitt, Tracy Dartt, Mike Cates, Kathy Newman, Diane Sulliva, Russel Hall
Group Two Background Vocals : Rhenda Edwards, Bob and Ruthie Renflow, Mark Knox, Jerry Sinclair
CAM Records 1428
一度見たら忘れることのできないアルバムです。 僕も長年、クリスチャン・ミュージックのレコードに多く接してきていますが、このジャケットを超えるインパクトを持つ作品には未だに出会っていません。 このジャケットが故に、このアルバムでもアメリカでもカルト的な扱いをされているようですが、内容はいたってマイルドで予定調和なサウンドで占められており、典型的な CCM として語ることのできる作品です。 時代的にも、サイケ感やアシッドなテイストを想像してしまいがちですが、そういった指向性は全くありません。
アルバムがリリースされたのは 1974 年、オクラホマ・シティのマイナーレーベル CAM の作品です。 時代的には、まだ洗練されておらず、まったりとした MOR 感が全体を包んでいるのですが、厚めのコーラスと、全編に漂うストリングスがアルバムを美しくコーティングしているような印象です。 この手のサウンドの魅力を上手く伝えることは難しいのですが、参加ミュージシャンのなかに、唯一見覚えのある名前がありました。
その人物は、Hadley Hockensmith です。 彼は AOR 的な CCM アルバムのなかでも名盤の誉れ高い Bruce Hibbard の「Never Turnin’ Back」に参加し、ギターやプロデュースで大活躍しているのことで知られているミュージシャン。 その Hadley Hockensmith の参加したレコードとしては最も古い部類に入ると思われるのが、このアルバムなのです。 ‘Hawk’ というミドルネーム付のクレジットもここでしか見たことがありません。
そういえば、Bruce Hibbard もオクラホマ出身。 彼のデビュー作「A Light Within」は 1976 年の作品ですので、このレコードよりも 2 年遅れでのリリースです。 Bruce Hibbard と Jerry Sinclair をつなぐのはオクラホマの CCM 人脈ですが、この 2 人がどこかですれ違っていた可能性は少なくないのではと思っています。
前置きが長くなりましたが、アルバムを簡単に紹介しておきましょう。 冒頭の「He Is The Truth Of Life」は、仰々しすぎるくらいのバラードですが、嫌味のないアレンジに好感。 つづく「I’m Gonna Rise」も同様の歌い上げ系。 しっとりしたバラード「Jesus Lifegiver」、女性コーラスが桃源郷のような気分にさせる「Here’s The Same」と続き、ハイライトの「It’s Just The Mercy Of God」へ。 この曲はゴスペル的なコーラスとJerry の熱唱が重なり、全ての人の心に染み入るであろう感動的な楽曲です。
B 面は、メロウで落ち着きのあるバラード「Just Now」、ソフトロック的な陽気さが漂う「You Can Count Your Nickels, Girl」、ホームパーティで歌うような「Happy Birthday (Jesus)」と元気のいい曲が並びます。 「Stompin (In The Name Of The Lord)」は平凡なミディアムですが、ラストの「The Cross Is The Bridge」は、Jerry Sinclair が歌い上げるスロウ・バラードで、ホーンセクションが唯一入った曲。 ラストに拍手が収録されており、この曲だけが 1973 年のライブ録音に、ボーカルを録り直したものでした。
こうして楽曲について簡単に触れて見ましたが、どことなく野暮ったい雰囲気は拭えないものの、メロディの美しさやボーカルの魅力など楽曲の持つ本質的なクオリティはかなり高いものがあると言えるでしょう。
このアルバムは、Norm MaGary なる人物が描いたこのジャケットの影響もあって、正当な評価がされないまま埋もれてしまいました。 クレジットには、「Front cover drawn from personal experience」とありますが、いったい彼はどんな経験をしたのでしょうか。 そして、何故 Jerry Sinclair は自らの大事な作品にこの絵を選んだのでしょうか…
残念なことに、Jerry Sinclair は、1993 年 1 月にロスで亡くなっており、この疑問が解明されることは永遠になさそうです。
■Jerry Sinclair / It’s Just The Mercy Of God■
Side-1
He Is The Truth Of Life
I’m Gonna Rise
Jesus Lifegiver
Here’s The Same
It’s Just The Mercy Of God
Side-2
Just Now
You Can Count Your Nickels, Girl
Happy Birthday (Jesus)
Stompin (In The Name Of The Lord)
The Cross Is The Bridge
All materials on this album produced, written, arranged, and sung by Jerry Sinclair
Recorded at CAM studios, Oklahoma city, Oklahoma
Jerry Sinclair : piano, chimes, strings, lead vocals
Jonathan David : piano
Harlan Rogers : organ
Hadley ‘Hawk’ Hockensmith : bass, guitar
Mike Scone : bass
Mike Raymond : drums
Keith Edwards : drums
Jerry Hall : steel guitar
Vic Cappetta : flute, conga, cowbell
Billy Walker : guitar
Kenny Walker : guitar
Bobby Williams : guitar
Bruce Glover : horns, strings
Joe Wright : strings
Group One Background Vocals : Darrell Coppedge, DeLaine Wilson, Bill Myers, Renee Pitt, Tracy Dartt, Mike Cates, Kathy Newman, Diane Sulliva, Russel Hall
Group Two Background Vocals : Rhenda Edwards, Bob and Ruthie Renflow, Mark Knox, Jerry Sinclair
CAM Records 1428