■Kay Gardner / Moon Circles■
フルート奏者の Kay Gardner が 1975 年に発表したファースト・アルバム。 ジャンル的にはひと昔前にはニューエイジ・ミュージック、最近ではヒーリング系と呼ばれる部類に近いものを感じます。 フルートと弦楽器による室内楽的なインストがメインとなっているのですが、Kay Gardner のボーカル入りの曲が 3 曲収録されていることから、一部ではアシッド・フォークとして語られることもあるようです。 しかし、そのボーカルもバイオリンやピアノといった楽器と同等に位置付けられており、歌唱そのものから感動が伝わってくるタイプの音楽ではありません。 そういった意味では、彼女の音楽はポピュラーミュージックの最も端っこにあるような存在と言えるでしょう。
Kay Gardner の詳しいキャリアは分かりませんが、マネージメントが Wise Women Enterprises という名称であり、ディストリビューションが Olivia Records ということから、1970 年の女性解放主義運動の影響下にある可能性があります。 あるいは、参加ミュージシャンの名前が全員女性の名前なので、レズビアン・ミュージシャンなのかもしれません。
では、アルバムのボーカル曲について軽く触れておきましょう。 ますは「Changing」から。 この曲は Linda Perhacs のような幻想的な浮遊感が際立つ曲です。 弦楽四重奏をバックにしたサウンドは気品のあふれる仕上がりですが、終始ただよう暗さが魅力となっています。 つづく「Beautiful Friend」も同傾向の曲。 翳りのあるメロディーに感情を抑制したボーカルがかぶせられ、憂鬱になってくるような楽曲です。 A 面ラストの「Wise Woman」はアップテンポでトラディショナルのような曲調。 途中で緩急を聴かせながらリピートの多いメロディーを引っ張るのですが、前述の 2 曲に比べると単調で平凡な出来と言わざるを得ません。 ボーカル曲はこの 3 曲なのですが、すべて A 面に収録されています。
インストの曲も個性的な調べなのですが、特に印象に残るのは Meg Christian がギターで参加した「Touching Souls」と、ラストを飾る 9 分の大作「Lunamuse」です。 とくに後者は曇りがちな空気を最後に和らげてくれる癒しのエッセンスが含まれています。
暖冬とはいえ 2 月の初旬は 1 年で最も寒い時期。 部屋の空気が少しでも暖かく感じられるような音楽を聴きたいところですが、このアルバムはむしろ背中から徐々に冷気が忍び寄ってくるような音楽です。 それは個々の楽器の音色のせいではなく、Kay Gardner や参加ミュージシャンのメンタリティに起因するものではないでしょうか。 リラックスとか笑い声とか、そうした雰囲気でレコーディングしたとはとても思えないのです。 それは、冒頭にも述べたような独特の女性中心主義に影響されたものでしょう。
Kay Gardner のアルバムは 1978 年の「Emerging」を持っていますが、こちらは完全にボーカルは排除されています。 サウンドも前衛さを増し、インプロビゼーションが入るなどさらに深化しています。 彼女は他界する 2 年前の 2000 年まで、10 枚ものアルバムを発表していますが、もしかすると彼女のボーカルが入っているのは、この「Moon Circles」だけなのかもしれません。
■Kay Gardner / Moon Circles■
Side-1
Prayer To Aphrodite
Changing
Beautiful Friend
Moon Flow
Wise Woman
Side-2
Inner Mood Ⅰ
Touching Souls
Inner Mood Ⅱ
Lunamuse
Produced by Kay Gardner and Marilyn Ries for Wise Woman Enterprises, Inc.
All songs, arrangements and compositions on this recording are by Kay Gardner
Urana records , a division of Wise Woman Enterprises, Inc.
Kay Gardner : alto flute, vocals, autoharp, guitar, flute, ginger cymbals
Dora Short : violins
Olga Gussow : violins
Nancy Uscher : viola
Martha Siegel : cello
Althea Waltes : piano
Bethel Jackson : hand drums, cymbals
Meg Christian : guitar
Jenny Smith : queen cow bells
Angie Walls : altar bells
Urana Records ST/WWE/80
フルート奏者の Kay Gardner が 1975 年に発表したファースト・アルバム。 ジャンル的にはひと昔前にはニューエイジ・ミュージック、最近ではヒーリング系と呼ばれる部類に近いものを感じます。 フルートと弦楽器による室内楽的なインストがメインとなっているのですが、Kay Gardner のボーカル入りの曲が 3 曲収録されていることから、一部ではアシッド・フォークとして語られることもあるようです。 しかし、そのボーカルもバイオリンやピアノといった楽器と同等に位置付けられており、歌唱そのものから感動が伝わってくるタイプの音楽ではありません。 そういった意味では、彼女の音楽はポピュラーミュージックの最も端っこにあるような存在と言えるでしょう。
Kay Gardner の詳しいキャリアは分かりませんが、マネージメントが Wise Women Enterprises という名称であり、ディストリビューションが Olivia Records ということから、1970 年の女性解放主義運動の影響下にある可能性があります。 あるいは、参加ミュージシャンの名前が全員女性の名前なので、レズビアン・ミュージシャンなのかもしれません。
では、アルバムのボーカル曲について軽く触れておきましょう。 ますは「Changing」から。 この曲は Linda Perhacs のような幻想的な浮遊感が際立つ曲です。 弦楽四重奏をバックにしたサウンドは気品のあふれる仕上がりですが、終始ただよう暗さが魅力となっています。 つづく「Beautiful Friend」も同傾向の曲。 翳りのあるメロディーに感情を抑制したボーカルがかぶせられ、憂鬱になってくるような楽曲です。 A 面ラストの「Wise Woman」はアップテンポでトラディショナルのような曲調。 途中で緩急を聴かせながらリピートの多いメロディーを引っ張るのですが、前述の 2 曲に比べると単調で平凡な出来と言わざるを得ません。 ボーカル曲はこの 3 曲なのですが、すべて A 面に収録されています。
インストの曲も個性的な調べなのですが、特に印象に残るのは Meg Christian がギターで参加した「Touching Souls」と、ラストを飾る 9 分の大作「Lunamuse」です。 とくに後者は曇りがちな空気を最後に和らげてくれる癒しのエッセンスが含まれています。
暖冬とはいえ 2 月の初旬は 1 年で最も寒い時期。 部屋の空気が少しでも暖かく感じられるような音楽を聴きたいところですが、このアルバムはむしろ背中から徐々に冷気が忍び寄ってくるような音楽です。 それは個々の楽器の音色のせいではなく、Kay Gardner や参加ミュージシャンのメンタリティに起因するものではないでしょうか。 リラックスとか笑い声とか、そうした雰囲気でレコーディングしたとはとても思えないのです。 それは、冒頭にも述べたような独特の女性中心主義に影響されたものでしょう。
Kay Gardner のアルバムは 1978 年の「Emerging」を持っていますが、こちらは完全にボーカルは排除されています。 サウンドも前衛さを増し、インプロビゼーションが入るなどさらに深化しています。 彼女は他界する 2 年前の 2000 年まで、10 枚ものアルバムを発表していますが、もしかすると彼女のボーカルが入っているのは、この「Moon Circles」だけなのかもしれません。
■Kay Gardner / Moon Circles■
Side-1
Prayer To Aphrodite
Changing
Beautiful Friend
Moon Flow
Wise Woman
Side-2
Inner Mood Ⅰ
Touching Souls
Inner Mood Ⅱ
Lunamuse
Produced by Kay Gardner and Marilyn Ries for Wise Woman Enterprises, Inc.
All songs, arrangements and compositions on this recording are by Kay Gardner
Urana records , a division of Wise Woman Enterprises, Inc.
Kay Gardner : alto flute, vocals, autoharp, guitar, flute, ginger cymbals
Dora Short : violins
Olga Gussow : violins
Nancy Uscher : viola
Martha Siegel : cello
Althea Waltes : piano
Bethel Jackson : hand drums, cymbals
Meg Christian : guitar
Jenny Smith : queen cow bells
Angie Walls : altar bells
Urana Records ST/WWE/80