Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

James Berthrong

2008-11-06 | SSW
■James Berthrong / Carrying A Friend■

  今日からは 3 回に渡って「翼ジャケット特集」です。 ジャケットに翼が描かれているアルバムを 3 枚続けて取り上げるだけなのですが、自分的にはかなりいい企画だと盛り上がっていますのでお付き合いください。
  さて、その第 1 回目は 1978 年にモンタナ州から届けられた James Berthrong のアルバムです。 モンタナ州というと大都市もなく荒涼としたイメージを思い浮かべてしまいます。 早めの冬支度をした暖炉のような心温まる SSW を多く輩出しそうな印象もありますが、いま思いつくのは彼だけです。 他にどんなアーティストがいたか、思い出せません。
  そんな James Berthrong のアルバムは、ロッキーに囲まれた大自然の空気感を閉じ込めたシンプルで心やすまる名盤となっています。 アルバムは全 7 曲と少ないのですが、ひとつひとつの曲が丹念に制作されたことが、真っ直ぐに伝わってきます。 とくに、切なさの募るハーモニカの音色がこの種の音楽の最良のシーンを演出する場面には、心が揺さぶられるのです。 

  と言いつつ、そのハーモニカは、1 曲目から 3 曲目でしか聴くことができません。 「Porchlight Blues」と「Exchange The Sight For The Sound」はともにミディアムでフォークロック調の曲。 James の優しいボーカルがすべてを許してしまいそうです。 後者では、Phil Hamilton と James Berthrong のふたりのハーモニカの聴き比べも楽しむことができます。 2 曲目の「Play In D」はスロウな展開。 ここでのハーモニカの郷愁さは、生半可な味わいではありません。 優しさと渋みがブレンドされたボーカルとハーモニカが対話するかのような様は、A 面のハイライトとも言える名演です。 つづく「Raggedy Like Lullaby」Jamesによるピアノの弾き語り。 どことなく曇った音色がするピアノは狙い通りなのでしょう。 古い映画音楽のような雰囲気を描き出すことに成功しています。

  レコードを裏返すと、長尺のタイトル曲「Carrying A Friend」です。  毛布に包まれたような James の優しい歌声の背景で、Tim Martin の跳ねるようなベースラインが曲に奥行きを与えています。 つづく「Joyful Tears」は足元を確かめながら進んでいくような店舗のスロウなバラード。 ピアノとベース、ドラムスの息のあった演奏も含め、個人的には琴線に触れまくりの名曲です。 ラストの「Key To The Garden」は力強く前向きな姿勢を感じるミディアム。 徐々に盛り上がっていく演奏、情緒的なギターソロなど、このままアルバムが終わってしまうことが勿体なく思えるほど、見事なフェードアウトです。

  こうしてアルバムを何度も繰り返して聴くにつれ、このアルバムの奥深さと魅力は高まっていくように思えます。 すべての曲の出来が素晴らしく、且つ作品の目指すコンセプトとも一致しているこのアルバムは、ローカル産の SSW アルバムとしては極めてレベルの高い名盤だという認識を新たにしました。

  残念ながら、James Berthrong は 2007 年に他界しています。 1960 年代から親交のあった SSW、John Swayne の公式サイトで、その事実がひっそりと語られているのを発見しました。 そのサイトでは James Berthrong と John Swayne による 2005 年のセッションが 2 曲公開されているのですが、2 人の息のあった演奏はとても素晴らしいものでした。 James Berthrong の音楽に永遠の翼を与えてあげたい…そんな気持ちで John Swayne がアップロードしたのでしょうか。 是非、聴いてみてください。



■James Berthrong / Carrying A Friend■

Side-1
Porchlight Blues
Play In D
Exchange The Sight For The Sound
Raggedy Like Lullaby

Side-2
Carrying A Friend
Joyful Tears
Key To The Garden

Produced by Karen Walker
Recorded at Bitterroot Studios, Missoula, Montana

James Berthrong : acoustic guitar, vocal, piano,harmonica
Paul Kelley : bass
Chuck Hamilton : drums
Phil Hamilton : harmonica, tambourine
Tim Martin : electric guitar, bass
Tim Larum : drums
Dave Vaughan : acoustic guitar
Lewis Lee Winn : electric guitar

Red Tail Records K5626