Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Henry Buckle

2006-07-28 | SSW
■Henry Buckle / Henry Buckle■

 ジャケットで損をしているアルバムは沢山ありますが、今日取り上げるこのアルバムもそんな一枚。 この色調にいかつい顔、こんなジャケットからは癒し系テイストの SSW が飛び出してくるとは想像できませんね。 そもそも、こんなジャケットになってしまったのも、Henry Buckle という名前がいけないのです。 「バックル」ということで、何のフックやひねりもなく、ベルトの「バックル」をジャケットデザインにさせられてしまったのが、このアルバムの最大の悲劇でしょう。 ご丁寧に、裏ジャケットまでジーンズとベルトの拡大ですから。

 さて、あらためて Henry Buckle についてですが、よくあることですが、このアルバムが彼の唯一の作品のようです。 1972 年にメジャーの Mercury から発売されています。

 アルバムを代表する名曲「Goodtime Day」でスタートするこのアルバム。 この 1 曲を聴くだけで、買ってよかったという気持ちになれるでしょう。 ハープシコードをバックに始まり、徐々にストリングスなどのオーケストレーションが展開、そしてリズムセクションが加わってくるという展開も素晴らしいのですが、何よりもサビのメロディーが、さりげなくもキャッチーなところがポイント。 同時代の SSW と比較しても遜色のない名曲といっていいでしょう。 タイトルどおりカントリー調の「Country Woman」をはさんで、しっとりした「Sitting Here By The Fire」も名曲です。 印象的なフルートや奥行きのあるオーケストレーションなど、アレンジ・センスも素晴らしいです。 二拍子の小曲「You For Me」をアクセントにして、ミディアムで比較的地味な「Why Can’t Today」、そして覚えやすいサビを書く人だなあという思いを新たにする「Don’t Say You Don’s Know Why」へと続いていきます。
 ソフトロック色の濃い「If I Had To Write A Book」でB面はスタート。 この曲も中間部のギターソロやストリングスなど、この手の指向性を意識した楽曲としてはパーフェクトに近いと思います。 A 面も B 面も必殺の名曲をアタマに持ってきているのも珍しいですね。 ギターソロによるインスト「Doing My String」、カントリータッチで雄々しい「Natural Loser」、エレピのイントロで始まるスワンピーな「Doing The Things That Please Me」、控えめなアレンジとかわいらしい曲調がマッチした「What A Day , Yesterday」、ミディアムの「Not Much Of A Man At All」と続き、ラストはギターの弾き語りがメインの「Childhood Days」となります。 この曲はタイトルどおり、子供の頃のサマービーチやフェアグラウンドなどの思い出を綴る小曲なのですが、こうした曲を聴いていると、Henry Buckle は素直で実直でジェントルな人だったのだろうなと感じます。 それだけに、このジャケットといかつい表情はマイナスですね。

 このアルバムは、入手も比較的容易ですが、中古レコード店に置いてあったとしても参考になるミュージシャン・クレジットもないので、なかなか手を出すことはできないでしょう。 お薦めコメントなどがあれば別ですけどね。
 そう思うと、Henry Buckle が、もしも違う名前だったなら、こんなジャケットにならなかったし、ミュージシャンとしての人生も違う展開になったかもしれないなと考えてしまいます。 35 年も前のことなので、そんなこと 今は誰も気にしていないでしょうけど。



■Henry Buckle / Henry Buckle■

Side-1
Goodtime Day
Country Woman
Sitting Here By The Fire
You For Me
Why Can’t Today
Don’t Say You Don’s Know Why

Side-2
If I Had To Write A Book
Doing My String
Natural Loser
Doing The Things That Please Me
What A Day , Yesterday
Not Much Of A Man At All
Childhood Days

All Selections written by Henry Buckle
Arranged & Conducted by John Fiddy
Produced by David Paramor

Mercury Records SRM 1-643