Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

David Malmberg

2007-02-18 | Christian Music
■David Malmberg / It Is Written■

 David Malmberg が 1980 年に発表したファーストアルバム。 自分の持っているクリスチャン系のアルバムのなかでも、とりわけその色が濃いアルバムです。 収録曲の半分以上が「Psalm」(聖歌)の何番というタイトルになっていることからもそのキリスト教色の強さが分かります。 以前、このブログで、Don Ferencz というミュージシャンのクリスチャン系アルバムを取り上げたことがありますが、そのアルバムも聖典に曲をつけて歌うというスタイルでした。 このようなスタイルのアルバムは意外に多いのかもしれませんね。

 そんなアルバムなのですが、David Malmberg のこの作品は、Michael Johnson の Sanskrit 盤にも通ずるような趣を持っています。 もちろん、Michael Johnson の方が上ですが、全編を通じてマイルドでメロウなボーカルと、クラシカルギターを中心としたなごみ系のサウンドが楽しめます。 それは、この作品がミネアポリスの Creation Audio や Sound 80 で制作されたことと無縁ではないでしょう。

 特にお薦めなのが、A 面の冒頭の 2曲、「Psalm 121」と「Psalm 23」で、ともに聖典からの詩に曲をつけたもの。 前者の方は、David Malmberg の曲のセンスが光る AOR テイストすら感じる曲。 後者は、Peter , Paul & Mary の Noel Stookey のペン及びアレンジによるものですが、クラシカルギターと清楚なフルートが心を浄化するような曲です。 この 2曲とも、「アーメン」で終わるのが共通点。 

 B 面は地味ながらも佳作が並んでいます。 幽玄なイメージの「Psalm 117」につづく、「Righteous Man」が特に秀逸です。 J.Fischer という人物の作曲によるしんみりしたバラードですが、この曲は暖炉のある部屋で薪の燃える音がパチパチしているような雰囲気にぴったりすると思います。 そんな妄想を抱かせてしまうような曲ということは、いい曲の証拠かもしれません。 

 さて、この David Malmberg の公式ページを見たら、意外な事実を知りました。 彼はなんと腹話術師として活躍していたのです。 Ventriloquist という単語を初めて見たのですが、その和訳が腹話術師だったのにはかなり驚きました。 しかも公式サイトには、実際に腹話術を演じる David Malmberg の動画も掲載されています。 興味のある方は覗いてみてください。
 その公式ページには、彼の音楽経歴があまり詳しく触れられていないのですが、彼はこのデビュー作を含めて 7 枚のアルバムを発表しているようです。 僕が持っているのはこのアルバムだけなのですが、徐々に宗教色が薄れていったのではないかと想像しています。 その過程の音を聴いてみたくなってきました。

 

■David Malmberg / It Is Written■

Side-1
Psalm 121
Psalm 23
Come Back O’Israel
Rejoice , Give Thanks
Sing Unto The Lord
Sel’ah (Amazing Grace)

Side-2
Psalm 93
Psalm 117
Righteous Man
Psalm 98
Psalm 100

This album is based upon the HOLY SCRIPUTURE and the other writings
Produced by David Malmberg
Engineered by Paul Martinson
Arranged and conducted by Henry Wiens

Recorded at Creation Audio
Strings recorded and mixed at Sound 80 Studio

David Malmberg : classic guitar and vocals
Perry Kallevig : electric bass
Henry Wiens : keyboards
Trudi Anderson : flute
Dan HAsen : electric guitar and banjo
Gary Gauger : percussion

Testament Music

Don Ferencz

2006-11-10 | Christian Music
■Don Ferencz / Love One Another■

 僕が持っているクリスチャン・フォークと言えるジャンルのアルバムのなかでも特に気に入っている一枚。 Don Ferencz が 1978 年に発表したアルバムです。 レーベル名もないので、自主制作盤なのでしょう。
 主人公の Don Ferencz のクレジットは、ジャケットの表にもレーベル面にも記載されておらず、ジャケット裏の隅のほうに、© by Don Ferencz と書かれているだけ。 本人もとしても匿名性を高めたかったのでしょうか。 もしかすると、「Love One Another」というはアルバム名でもあり、アーティスト名かもしれません。

 さて、そんなこのアルバムは全曲が本人の作曲、ギターの弾き語りです。 おそらく、ほぼ一発録音でしょう。 ギターもカッティング系ではなく、しっとりとしたアルペジオに優しい Don Ferencz のボーカルが包み込むという感じです。 全18曲もあるので、1 曲はほぼ 2分以下という小曲ばかりとなっています。
 アルバム収録曲のほとんどが、聖書の出典を歌詞に引用しています。 例えば、「Blind Can See」based on Matthew,11:2-6 とか、「In The Garden」based on Genesis,3:8-9といった具合です。 特に Matthew という引用が多いのですが、キリスト教に詳しくないので、ここがどのような節もしくは章なのかはわかりません。 
 そんななか、数少ないものの歌詞も全くのオリジナルという曲があります。 「Follow Me」、「Been Lookin’ All Around」、「The Garbage Song」、「There’s A Man And A Lamb」、「Temple Of My Love」がそれに該当します。 そうしたことを意識して聴いてしまうからなのかもしれませんが、これらの曲は、メロディーもシンプルで分かりやすいポップな曲調が多いように感じます。 特に「The Garbage Song」、「There’s A Man And A Lamb」などは、子供向けの教育番組に似合うようなポップさを備えています。 アルバムの中でもベストソングと思うのが、「Temple Of My Love」です。 ♪ Welcome to my temple of my love ♪ を繰り返す歌い出しが、人なつこい印象を与え、油断していると無意識に口ずさんでしまいそうです。

 このアルバムは実はまだ 3回しか聴いていないのですが、あらためて聴く度に、すっかり忘れていた曲の内容を「あー、そうだった」という風にすぐにリマインドできてしまいました。 そんなアルバムは普通に存在しているのかもしれませんが、このアルバムの持つ独特のたたずまいは、人の記憶の深いところ、もしくは記憶とは違う脳の未知の領域にそっと格納されてしまうかのように思えます。 懐かしい人に出会う、ふと忘れていた何かを思い出す、そんな喜びに似た何かをこのアルバムから感じ取ることができるのです。
 それは、きっと深い信仰に支えられた Don Ferencz の真摯な姿勢と温かな人柄がレコードを通じて伝わってくるからなのでしょう。 午後のティータイムに、夜ベッドに入る前のひと時に、漠然と考え事をしながら聴くには最高のアルバムです。 自分の心の揺らぎ・迷い・悩みといったものが、まるで鏡に映るかのように聴こえてくることでしょう。

 


■Don Ferencz / Love One Another■

Side-1
Prelude To John
What Do People Think?
Follow Me
Fisherman
Song Of Jeremiah
Blind Can See
In The Gaden
Been Lookin’ All Around
David And Nathan
The Garbage Song

Side-2
Storm At Sea
Hosanna
There’s A Man And A Lamb
Wedding Song
Sleeping Sailor
Harvest
Go Away
Temple Of My Love

All Songs written by Don Ferencz
114 Downer St. Baldwinsville, N.Y.13027

No Label 780748



Bruce Anderson

2006-08-05 | Christian Music
■Bruce Anderson / Dialogue■

 ミネソタ州の州都セント・ポールを拠点とする Artronics は、クリスチャン・ミュージック専門のレーベルだったようですが、そのレーベルから 1970 年代初頭から中盤前後に発表されたのが、この Bruce Anderson の唯一のレコードです。 残念ながらレコードには発売年度が表記されていません。 同姓のミュージシャンは、1980 年初期の Ralph Records (目玉おやじのレジデンツで有名)から数枚のアルバムを発表した MX-80 Sound のメンバーにいますが、さすがに別人でしょう。 Mx-80 Sound は当時、ごく一部の音楽雑誌で評価されたりしたこともあって、僕も 1枚「Crowd Control」というアルバムを買いましたが、国内盤はとうとう出ませんでしたね。

 さて、話を今日の主人公 Bruce Anderson に戻しましょう。 このアルバムは、通して数回程度聴いたことがありますが、その起伏の無さと無表情なボーカルにアドレナリンが放出されないのか、毎回のように記憶の彼方に追いやられてしまっています。
 今回も久しぶりに通して聴きましたが、毎回このブログで恒例としている全曲へのコメントはとてもできそうにありません。 ほぼ全編がギターの弾き語りとなっており、数曲でわずかながらにベースの音が聴こえる程度です。 曲名を見ていただくと分かるように、このアルバムも、クリスチャン・フォークといっていい内容です。 曲名に Jesus という表記が含まれているのが4曲もあり、他の曲もキリスト教色が強く感じられます。
 全 12 曲のうち、Bruce Anderson によるオリジナルは、「Dialogue」 1 曲のみで、他の曲は、Gordon Lightfoot 、Larry Norman といった作家の手によるものです。 トラディショナルに Bruce Anderson がアレンジした曲などもあります。 唯一、B-② の「Oh Lord My God」は、聴き覚えのあるメロディーなのですが、この曲は「The Water Is Wide」の歌詞を Bruce Anderson が書き換えたもの。 その結果が、Lord に God となってしまうところがスゴイです。
 一部では、Acid Folk というような紹介もされているらしいこのアルバム。 くどいようですが、これはCCM Folk とでもいうべき、Christian Folk のど真ん中に位置付けられる作品です。 必要以上の感情移入をしないかのようなボーカルと控えめなギターにささえられたスピリチャルなサウンドは、自分も含めて言葉の通じない日本のリスナーには伝わりづらいでしょう。 
 カナダのバンクーバーで生まれ、このアルバムを制作した頃は Seattle Pacific College の心理学部で学んでいたという Bruce Anderson 。 彼の活動拠点はあくまでもシアトルだったようです。 そんな彼の唯一と思えるこのアルバムがミネソタのセント・ポールから発表されるようになった経緯などは知る由もないのですが、そんなことを考えながら向き合うのもレコード鑑賞の醍醐味ですね。



■Bruce Anderson / Dialogue■

Side-1
Pride of Man
Dialogue
I Wish We’d All Been Ready
Here Is the Way
I Have Decided to Follow Jesus
Sweet Sweet Song of Salvation

Side-2
Hidden Worlds
I Amn the Resurrestion
Oh Lord My God
Bridges of Love
Oh, Deep Deep Love of Jesus
Walking With Jesus
Sweet Little Jesus Boy

Bruce Anderson : guitar
Tom Tjornhom : bass

Produced by Artronics , Incorporated

Artronics Records ART-271