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斎藤美奈子さんのコラム・その95&前川喜平さんのコラム・その56

2021-09-19 22:01:00 | ノンジャンル
 さて、恒例となった、東京新聞の水曜日に掲載されている斎藤美奈子さんのコラムと、同じく日曜日に掲載されている前川喜平さんのコラム。

 まず9月15日に掲載された「66年前の話」と題された斎藤さんのコラムを全文転載させていただくと、
「10日のTBS「ひるおび!」での八代英輝弁護士の発言が波紋を広げている。「共産党は暴力的な革命というのを、党の要綱として廃止していませんから。よくそういうところと組もうという話になるなと」、これが問題になった八代発言だ。
 「矢代さんは六全協を知らないのかな」と思った人もいるのではないだろうか。六全協とは1955年の日本共産党の日本共産党第六回全国協議会の略称で、このとき同党は過去の武装闘争路線を放棄した。64年に芥川賞を受賞した柴田翔「されど われらが日々…」は全六協をモチーフにした小説。党の決定に不服な若者たちから派生したのがいわゆる新左翼である。
 すなわちこれは66年に及ぶ歴史を無視した妄言で、もちろん現在の党の綱領にもそんなことは書かれていない。
 13日、矢代氏は「私の認識は閣議決定された政府見解に基づいたものでした」と弁明した。典拠は昨年11月ないし今年6月の、鈴木宗男議員の質問主意書に対する答弁書(「共産党は破防法に基づく調査対象団体」「暴力革命の方針に変更はないものと認識している」)だろうか。政府の歴史音痴がデマと不当な
評価の元凶だとしたら、もっと由々しき話。
ことは公党の名誉に関わる。公正を期すためにもTBSは共産党及び野党共闘の幹部がしっかり話せる機会をつくるべきだろう。」

 また9月12日に掲載された「準決勝から決勝へ」と題された前川さんのコラム。
「与野党が天下分け目の決勝戦を戦う衆議院選挙に向け、与党も野党も準決勝を行っている。
 野党の準決勝は9月8日の共通政策調印だ。勝ち残ったのは、市民連合に呼応した立憲民主党、共産党、社民党、れいわ新選組の四党。国民民主党は補欠だ。この野党連合チームが与党チームとの決勝戦に臨む。枝野幸男主将の人気はイマイチだが、政策はしっかり打ち出した。
もう一つの準決勝は、与党チームの次期主将を選ぶ自民党総裁選。こっちは9月29日までだらだら続く。まだ試合開始前なのに、すでにおコロナ政策そっちのけで激しい場外乱闘が起きている。奪い合っているのは国民の支持ではなく安倍晋三氏の支持だ。選挙の顔として自民党若手議員が期待する河野太郎氏も、安倍氏に忖度(そんたく)して原発廃止や森友問題再調査を封印した。河野氏が首相になっても安倍傀儡(かいらい)にしかならないだろう。
 野党の共通政策は、コロナ下の困窮者への万全のの財政支援、安保法制など違憲立法の廃止、核兵器禁止条約の批准、消費税減税と富裕層の税負担強化、原発のない脱炭素社会の追求、選択的夫婦別姓制度やLGBT平等法、森友問題等の真相究明など。これは与党への挑戦状だ。この挑戦状に正面から答えない限り、与党チームの次期主将は決勝戦を戦うことができないだろう。」

 そして、9月19日に掲載された「通信制中学の灯を消すな」と題された前川さんのコラム。
「夜間中学への社会的認知度は高まってきたが、通信制中学の存在を知る人は少ない。セントの新学制発足時には80校を超えていたが現在では東京と大阪に1校ずつあるだけだ。その一つ千代田区立神田一橋中学校通信教育課程が今存亡の危機にひんしている。現在ただ一人在籍する生徒が来年三月に卒業するため、その後の存続が危ぶまれているのだ。17日には「夜間中学校と教育を語る会」が4千6百筆を超える署名を携え東京都教委に過程の存続と生徒の受け入れ拡大を要望した。
 中学校の通信教育は戦前と戦後の義務教育を繋(つな)ぐ暫定的な制度だ。学校教育法の付則でその対象者は「尋常小学校卒業者及び国民学校初等科修了者」即(すなわ)ち現在87歳以上の人とされている。しかし神田一橋中学校では「別科生」という制度を利用して、以前はより年下の生徒も受け入れ、卒業証書も授与していた。ここで学び尊厳と青春を取り返した高齢の生徒たちの姿は、2017年に公開された太田直子監督の映画「まなぶ」に丁寧に描かれている。
 若い人たちの中にも不登校経験者など通信制中学で学びたいと思う人はたくさんいるはずだ。通信制中学の灯を消してはならない。むしろ関係法令を改正し、誰もが学べる学校として再出発させるべきだ。双方向型オンライン教育も導入したらいいではないか。」

 どれも一読に値する文章だと思いました。

増村保造監督『盲獣』

2021-09-09 13:14:00 | ノンジャンル
 増村保造監督、江戸川乱歩原作の1969年作品『盲獣』をDVDで観ました。

 以下、サイト「映画ウォッチ」のあらすじに加筆修正させていただくと、

「モデルの島アキ(緑魔子)のヌード写真を展示した、写真家の個展が評判になる。その会場でアキは、奇妙な男(船越英二)が、アキをモデルにして写真家の友人が作った彫刻をなめまわすように撫でるのを見る。気持ち悪くなって会場から彼女は立ち去る。数日後、同じ写真家の仕事をして疲れ切って帰宅したアキはマッサージを依頼する。初めてのマッサージ師が来る。彼の仕事ぶりが不快で、帰るようにアキは言うが、男の黒眼鏡が外れた時にそれが先日の個展会場の奇妙な男であることがわかる。しかし、アキはクロロホルムを嗅され、男と部屋の外で待っていた彼の母親(千石則子)とによって誘拐される。
 アキが目覚めた部屋は、その男、蘇父道夫の「アトリエ」だった。生まれつき目の見えない彼にとって、触覚の快楽が最大の喜びであり、中でも女体の手触りが最高であった。マッサージ師をした後、亡父の土地が売れて大金の入った彼は、目、口、鼻、乳、手、足等の女体のパーツの巨大な彫刻を作って壁にはめこむアトリエを作ったのだった。そしてアキこそ彼の探し求めていた最高の女体であり、彼はアキに彼女をモデルにした彫刻、触覚の芸術の完成までこのアトリエにいることを求める。アキはそれを拒否し、ゴムでできた巨大な女体の上を逃げ惑うが、結局捕まえられる。またもクロロホルムを嗅がせられるアキ。
 翌朝、道夫の母、しのの用意する朝食こそ断ったが、アキはモデルを引き受ける。しかし、仮病で腹痛だと言い、すきを見て逃げようとする。しかし、しのが買い物からちょうど帰ってきたために逃亡に失敗する。アキは方針を変えて、道夫の触覚の芸術に理解を示すとともに、しのの前で道夫と仲良くする。それは息子を独占していたいしのの嫉妬を誘い、雪の降る夜、しのはこっそりアキを逃がそうとする。だが、道夫に気づかれてしまう。盲人のお前を愛する女などいないと言うしのと道夫はけんかになり、しのは壁に頭をぶつけて死んでしまう。アキは逃げようとするが、道夫につかまってしまう。道夫はアキを力づくで犯し、男になる。
 二人は朝に昼にセックスを続ける。やがてアキは道夫を愛するようになってくる。そしてそれにつれて彼女も視力を失っていった。二人は触覚のよろこびに溺れる。だが、そのよろこびには際限がなかった。より強い刺激を二人は求める。お互いの体を噛みあい、叩き合う。やがて器具を使って苛み合う。とうとうナイフで互いの体を傷つけ血をすすりあうようになる。衰弱する二人は死期の近いことを悟る。アキは道夫に自分の手足を切り取ることを要求する。痛みと共に究極の触覚のよろこびが得られるはずだ。道夫は包丁と木槌を使ってアキの四肢を切断する。そして最後に自分の胸に包丁を突き刺す。

 壮絶なラストでした。

斎藤美奈子さんのコラム・その94&前川喜平さんのコラム・その55

2021-09-08 12:23:00 | ノンジャンル
 さて、恒例となった、東京新聞の水曜日に掲載されている斎藤美奈子さんのコラムと、同じく日曜日に掲載されている前川喜平さんのコラム。

 まず9月1日に掲載された「震災前夜の感染症」と題された斎藤さんのコラムを全文転載させていただくと、
「流行性感冒(スペイン風邪)が猛威をふるったのは関東大震災の数年前だった(1918年8月~21年7月)。
 すでに指摘されているように、当時の対策は新型コロナ対策とほとんど同じだったようだ。マスクの着用の奨励。罹患(りかん)者の隔離。多人数の集合の回避。劇場や公共交通機関の入場・乗車制限。
 だが政府の施策は徹底性を欠き、与謝野晶子は横浜の新聞に激烈な批判を載せた。「盗人を見てから縄を綯(な)うと云(い)うような日本人の便宜主義がこう云う場合にも目に付きます。どの幼稚園も、どの小学や女学校も、生徒が七八部通り風邪に罹(かか)って仕舞って後に、漸(ようや)く相談会などを開いて幾日かの休校を決しました」「予防と治療とに人為の可能を用ひないで流行感冒には暗殺的な死を強制されてはなりません」
 関東大震災の死者は十五万五千人。国内の流行性感冒の死者は三十八万八千人。これほどの死者を出した感冒が忘れられたのは、だらだらと三年も続いたせいだろうか。
 流行性感冒の第一波は米騒動の時期と重なる。民衆蜂起を招いた米価の高騰にも晶子は激怒していた。「寺内内閣が天下の器でないことは、このたびの暴動を激成したことに由(よ)って余りに明(あきら)かになりました。国民は既に挙(こぞ)って寺内内閣の弔鐘を打っております」
 晶子の憤怒に大きく頷(うなず)く私たち。百年前の話なのにな。

 また、9月8日に掲載された「ある町の悲劇」と題された斎藤さんのコラム。
「ときどき火勢が衰えたり、大きく燃えさかったりしながら、もう一年半以上にわたって町では家事が続いています。大勢の人が亡くなったり家を失ったりしました。
 町の人々は何度も119通報をしました。しかし、消防車はなかなか来てくれません。仕方なく、人々は自分たちで火を消す努力をしなければなりませんでした。
 ようやく鎮火に向かいだした夜、到着した消防車は奇妙な行動を取りはじめました。火にガソリンを注いだのです。消防署長はいいました。「みなさん、火はもうじき鎮まります。家はそのままにして旅行に出かけましょう」。火は燃え広がりました。
次に消防署長はいいました。「みなさん、もう火事は忘れてスポーツ大会をしましょう」。人々が走ったり泳いでしている間、火はもっと燃え広がりました。火の中に残された人々は自宅にいるよう命じられ、次々に命を落としました。
うちにはワクチンという強力な消火剤があるから安心だと消防署長はいいました。ですが火の勢いに消火剤は追いついていません。人々はさすがに怒り、消防署長の交代を要求しました。
 消防署はいま、次の署長に誰がなるかで揉(も)めています。ニュースも熱狂しています。その間にも火は燃えています。私たちは町が焼け野原になるのを待つしかないのでしょうか。」

 そして、9月5日に掲載された「説明してから辞めてくれ」と題された前川さんのコラム。
「自民党の菅総裁が総裁選出馬を断念した。勝てる見込みがなくなったからだろうが、彼はコロナ対策に専念するためという誰も信じない理由を挙げた。最後まで本当のことを言わない人だ。
 菅氏には、辞める前にちゃんと説明してほしい疑惑が山ほどある。それはこの一年の首相在任期間だけではない。官房長官時代を含めたこの九年間の疑惑だ。
 あなたは森友学園への国有地売却の決裁文書に安倍昭恵氏の名前が書かれていることを知っていたのではないか? その改竄(かいざん)を指示したのはあなたではないのか?
 あなたは官房長官中、86億円もの官房機密費を何に使ったのか? メディア関係者、与野党の政治家、官僚などの買収に使ったのではないか? 総裁選のためにも使ったのではないか?
 あなたは日本学術会議の会員予定者のうち、安保関連法、共謀罪法、特定秘密保護法を批判する学者を狙い撃ちにして、任命を拒否したのではないか?
 あなたは自分のスポンサーである「ぐるなび」会長の滝久雄氏をむりやり文化功労者にしたのではないか? そのために文化功労者を選定する文化審議会の委員の人事に介入したのではないか?
 疑惑は尽きない。辞めるなら説明してから辞めてくれ。説明しないのなら、首相だけでなく国会議員も辞めてくれ。」

 いずれの一読に値する文章だと思いました。