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斎藤美奈子さんのコラム・その94&前川喜平さんのコラム・その55

2021-09-08 12:23:00 | ノンジャンル
 さて、恒例となった、東京新聞の水曜日に掲載されている斎藤美奈子さんのコラムと、同じく日曜日に掲載されている前川喜平さんのコラム。

 まず9月1日に掲載された「震災前夜の感染症」と題された斎藤さんのコラムを全文転載させていただくと、
「流行性感冒(スペイン風邪)が猛威をふるったのは関東大震災の数年前だった(1918年8月~21年7月)。
 すでに指摘されているように、当時の対策は新型コロナ対策とほとんど同じだったようだ。マスクの着用の奨励。罹患(りかん)者の隔離。多人数の集合の回避。劇場や公共交通機関の入場・乗車制限。
 だが政府の施策は徹底性を欠き、与謝野晶子は横浜の新聞に激烈な批判を載せた。「盗人を見てから縄を綯(な)うと云(い)うような日本人の便宜主義がこう云う場合にも目に付きます。どの幼稚園も、どの小学や女学校も、生徒が七八部通り風邪に罹(かか)って仕舞って後に、漸(ようや)く相談会などを開いて幾日かの休校を決しました」「予防と治療とに人為の可能を用ひないで流行感冒には暗殺的な死を強制されてはなりません」
 関東大震災の死者は十五万五千人。国内の流行性感冒の死者は三十八万八千人。これほどの死者を出した感冒が忘れられたのは、だらだらと三年も続いたせいだろうか。
 流行性感冒の第一波は米騒動の時期と重なる。民衆蜂起を招いた米価の高騰にも晶子は激怒していた。「寺内内閣が天下の器でないことは、このたびの暴動を激成したことに由(よ)って余りに明(あきら)かになりました。国民は既に挙(こぞ)って寺内内閣の弔鐘を打っております」
 晶子の憤怒に大きく頷(うなず)く私たち。百年前の話なのにな。

 また、9月8日に掲載された「ある町の悲劇」と題された斎藤さんのコラム。
「ときどき火勢が衰えたり、大きく燃えさかったりしながら、もう一年半以上にわたって町では家事が続いています。大勢の人が亡くなったり家を失ったりしました。
 町の人々は何度も119通報をしました。しかし、消防車はなかなか来てくれません。仕方なく、人々は自分たちで火を消す努力をしなければなりませんでした。
 ようやく鎮火に向かいだした夜、到着した消防車は奇妙な行動を取りはじめました。火にガソリンを注いだのです。消防署長はいいました。「みなさん、火はもうじき鎮まります。家はそのままにして旅行に出かけましょう」。火は燃え広がりました。
次に消防署長はいいました。「みなさん、もう火事は忘れてスポーツ大会をしましょう」。人々が走ったり泳いでしている間、火はもっと燃え広がりました。火の中に残された人々は自宅にいるよう命じられ、次々に命を落としました。
うちにはワクチンという強力な消火剤があるから安心だと消防署長はいいました。ですが火の勢いに消火剤は追いついていません。人々はさすがに怒り、消防署長の交代を要求しました。
 消防署はいま、次の署長に誰がなるかで揉(も)めています。ニュースも熱狂しています。その間にも火は燃えています。私たちは町が焼け野原になるのを待つしかないのでしょうか。」

 そして、9月5日に掲載された「説明してから辞めてくれ」と題された前川さんのコラム。
「自民党の菅総裁が総裁選出馬を断念した。勝てる見込みがなくなったからだろうが、彼はコロナ対策に専念するためという誰も信じない理由を挙げた。最後まで本当のことを言わない人だ。
 菅氏には、辞める前にちゃんと説明してほしい疑惑が山ほどある。それはこの一年の首相在任期間だけではない。官房長官時代を含めたこの九年間の疑惑だ。
 あなたは森友学園への国有地売却の決裁文書に安倍昭恵氏の名前が書かれていることを知っていたのではないか? その改竄(かいざん)を指示したのはあなたではないのか?
 あなたは官房長官中、86億円もの官房機密費を何に使ったのか? メディア関係者、与野党の政治家、官僚などの買収に使ったのではないか? 総裁選のためにも使ったのではないか?
 あなたは日本学術会議の会員予定者のうち、安保関連法、共謀罪法、特定秘密保護法を批判する学者を狙い撃ちにして、任命を拒否したのではないか?
 あなたは自分のスポンサーである「ぐるなび」会長の滝久雄氏をむりやり文化功労者にしたのではないか? そのために文化功労者を選定する文化審議会の委員の人事に介入したのではないか?
 疑惑は尽きない。辞めるなら説明してから辞めてくれ。説明しないのなら、首相だけでなく国会議員も辞めてくれ。」

 いずれの一読に値する文章だと思いました。

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