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宮田珠己『ウはウミウシのウ シュノーケル偏愛旅行記』

2008-06-25 16:00:54 | ノンジャンル
 フリーライターの宮田珠己さんの'00年の作品「ウはウミウシのウ シュノーケル偏愛旅行記」を読みました。
 扉の文章が「この本の収益の一部を、かけがえのない世界の海とそこに棲ぬ生きものたちをわたしが見に行くために捧げたい」というしゃれた序文から始まるこの本。のっけから宮田さんの文章の面白さに引き込まれます。
 宮田さんは海に行ってシュノーケリングで変はカタチの生きものを見るのが好きで、全部で18ケ所の海岸で見たいろんな生きものについて語ってくれてます。(正確には16ケ所。1ケ所は海でボートから尻を突き出してウンコした話だし、もう1ケ所は医者の誤診で口が腫れて痛く、帰って来て診断を受けたら手術されそうになるが、腫れの頭の黒い塊がポロリととれると痛みも腫れも嘘のようになくなり、医者に頭に来る話だけなので。)
 ちなみに宮田さんが見てみたい三大海の生きものとは、多くのものが派手な原色できれいなウミウシと、手がありサンゴの枝をつかんだりする変な魚イザリウオと、無気味かつマヌケなカタチで、空を飛べば面白いと思うエイです。イザリウオはこの本の中では見る事ができませんでしたが、ウミウシは色んな種類を見る事ができ、エイもばっちり観察できています。また、他にも多くの面白い生きものが紹介されていて、飽きません。
 旅でのエピソードの部分も面白く、空港でおばさんに話しかけられ、シュノーケリングで話がはずみ、おばちゃんが機関銃のように話し始め、自分の水着姿の写真まで見せられ、全然意気投合しなかった話とか、レストランでなかなか自分たちのテーブルから3人組の流しが離れてくれないので、追っ払おうとチップをやると、増々張り切って演奏されてしまった話とか、フィリピンの平気で注文してないものを持って来るボーイの話とか、飛行機に乗る際、友人が絶対自分は死なないというので理由を聞くと「実際、今まで俺は死んだことがない」という少し頭のおかしい友人の話とか、とにかく面白いエピソードが満載です。
 また「面倒くさい」は、性欲、睡眠欲と並んで人間の三大欲望の一つと言い切る宮田さんは、これ以外にもいろんな興味深い考察をしていて、これも魅力的でした。
 面白いカタチの生きものを発見した後には、必ずトレースだけの簡単は絵が書かれていて、親切な本でもありました。
 暇な人も暇じゃない人も、一服の清涼剤として読むことをオススメします。元気の出る本です。

ジャック・ペラン製作・総監督『WATARIDORI』

2008-06-24 21:25:12 | ノンジャンル
 6月19日に発行されたフリーペーパー「R25」に、災害時、自宅から遠くにいる人は、すぐに帰宅すると道路が混雑し危険なので、しばらく安全なところに避難してから自宅に向かう「分散帰宅」がいいそうです。頭の隅に置いておくといいかもしれません。

 さて、NHK・BS2にて、「ロシュフォールの恋人たち」で水兵役を演じるなど、ヌーヴェル・ヴァーグ世代の1人、ジャック・ペランが製作・総監督した'01年作品「WATAEIDORI」を見ました。
 様々な鳥の様々な生態を記録した映画です。幼鳥に餌をやる親鳥、水鳥の群れ、V字で飛ぶカモ、足にからまった縄を取ろうとするカモ、荷馬車で羽を休める鳥、吹雪が過ぎるのを雪の中で待つガン、水面を立って走る鳥、水面上を滑空する鳥、コンバインで殺される、巣の中のヒナ、胸を鳴らしてメスを呼ぶ面白い格好の鳥、親鳥の羽毛の中から顔を出すヒナ、崖から海へ飛び下りるウミガラスの巣立ち、人間に撃ち落とされるワタリドリ、魚群のような大群で行く先を絶えず変えながら飛び回る鳥、餌をくれるおばあさんに寄っていき、手から直接餌を食べるツルたち、翼をケガしてカニの大群に生きながら食べられてしまう渡り鳥、水辺で餌の魚を採る水鳥たち、アマゾンで捕らえられた猿やインコ、荒れる海の海面を出入りして泳ぐペンギンの群れ、目の前で他の鳥にヒナを食べられてしまうベンギン、などなど。
 そして何よりも圧巻なのは、渡り鳥が渡る姿を、すぐ近くから鳥が飛ぶのと同じ速さで移動撮影するシーンです。横から、後ろから、上から撮っているのですが、どうやって撮っているのか、まったくの謎です。渡り鳥の飛ぶ姿のシーンになると字幕が出て、「ハイイロガン 移動距離3000キロ どこ~どこ」というようにどういう場所をどの位の距離移動するのかが示されます。全部で10種類ぐらいの渡り鳥が紹介されていましたが、一番すごいのはキョクアジサシ。何と北極圏と南極圏の間を1年間で往復するのです。距離にして地球一周分の4万キロ弱。
 渡り鳥の飛ぶ姿というのは、体が完全に一直線になって羽だけを羽ばたかせて直線的に滑るように飛ぶので、滑空感をすごく感じ、またひたすら羽を動かしている姿の健気さに感動し、魅了されました。
 そして印象的なシーン。東欧を縦断するアオガンは工業地帯を横切ります。工場の煙りで汚れた大気の中を飛ぶアオガンたち。休憩で降りたところは、工場排水で汚れ切った水路で、そこで油にはまり抜けだせなくなる鳥は目の前に死が待っています。私はこのシーンと、おばあさんの手から餌をついばむツルたちのシーンを見て、この映画を断片的に以前見たことがあることに気付きました。
 BGMもすばらしく、少ないナレーションも原版ではジャック・ペラン本人がされているということで、今回見たのは吹き替え版でしたが、次回は字幕版を見てみたい気がします。
 とにかくどうやって撮影したのだろう、とそればかり考えさせられた映画でした。たまにはこんな映画もいいんじゃないでしょうか? 無心で見られる映画です。

豊島ミホ『ぽろぽろドール』

2008-06-23 17:41:07 | ノンジャンル
 19日に発行されたフリーペーパー「R25」に国別累計人工衛星打ち上げランキングというのが載っていて、1位は旧ソ連で3228基、2位はアメリカで1825基まではいいのですが、3位は何と日本で119基、4位中国で99基となっていました。中国は実際は発表してない軍事衛星を加えると倍の数字らしいのですが、それにしても日本がこんなに多いとは。他の国のロケットに乗せて打ち上げてもらったのだと思います。

 さて、豊島ミホさんの'07年の作品「ぽろぽろドール」を読みました。人形を扱った6編の短編からなっています。
 第一話「ぽろぽろドール」は、頬を打つと涙を流す等身大の人形を知り合いのおばさんから内緒でもらい、それをぶつことが一番の遊びだと言う少女の話。
 第二話「手のひらの中のやわらかな星」は、田舎育ちで不細工な女の子が同級生のきれいな子に憧れ、着せ替え人形に彼女の姿を投影し、かわいい服やアクセサリーを作り、実際に学祭の劇で彼女の服を作る事になり、彼女に服を気に入られ、ますます人形の世界に倒錯していくという話。
 第三話「めざめる五月」は、等身大の人形を愛する男の子に、人形に瓜二つということで、人形に自分がすることを見ていて嫌だな、ということがあったら教えてほしいと頼まれ、だんだん自分自身が人形のように愛撫されたいと考え、彼のいない間に人形の衣装に着替え、彼を待ちますが、彼は人形しか受け付けない人間だったという話。
 第四話「サナギのままで」は、戦前、製糸工場の坊ちゃんと2歳年下の下女が仲良く遊び、将来も坊ちゃんのお妾さんになろうと思っていましたが、やがて別れ別れになり、坊ちゃんは出征することになり、その壮行会の夜、坊ちゃんは元下女に昔の幸せだった時間を求めますが、彼女は戦時中ということもあり、お国のために勇ましく死んできて、と言って、彼を怒らせます。そして彼が戦死した後、彼女はあんな言葉をかけたことを後悔し、マネキンの型を作る工場で働くようになり、優秀な成績から自由に一体作ることを許され、坊ちゃんのマネキンを作ります。そしてそれは出荷され、彼女はショーウィンドウにマネキンになった坊ちゃんを探しますが、78才になった今でも見つかっていません。しかし彼女は必ず会えると信じ、もうすぐ彼と一つになれるのだ、と思うという、せつなくも悲しい話。
 第五話「きみのいない夜には」は、ネットオークションで買った大人向けの着せ替え人形の元の持ち主が、その人形への愛を捨てられず人形宛の手紙を出し続け、ついには買った女性のもとに来てしまい、最後には女性が人形とともに彼の世界に飛び込んで行くという話。
 第六話「僕が人形と眠るまで」は、美しい顔に事故で火傷を負い、醜くなった男は秋葉原で元の美しい恋人にそっくりの等身大の人形を見つけ、その人形を抱きしめて泣くという話。

 「ぽろぽろドール」は人形を虐待し、「手のひらの中のやわらかな星」は人形を飾りあげ、「めざめる五月」では生身の人間よりも人形をとる男の子がいて、「サナギのままで」は亡くなった恋人を人形にして蘇らせ、「君のいない夜には」では着せ変え人形を運命の恋人と思う男がでてきて、「僕が人形と眠るまで」では火傷で醜くなった男が昔の恋人にそっくりな人形を抱いて泣きます。どの話にも人形を愛し、現実に愛する人を見出せない淋しい人が登場し、中にはエキセントリックなものもあって読んでて辛くなりました。豊島ミホさんって、こんなに淋しい話を書くひとだったでしょうか? せつないけれどもっと明るい物語を書く人だったと思うのですが‥‥。この本では唯一「サナギのままで」がせつなくて素直に泣ける小説でした。次回作に期待したいと思います。

自殺、昨年も3万人超に‥‥

2008-06-22 15:40:41 | ノンジャンル
 先日の朝日新聞の朝刊にミャンマーの軍事政権に自宅での軟禁生活を強いられているアウン・サン・スーチーさんが19日で63才を迎えたという記事が載っていました。今年写された写真も掲載されていましたが、とても63才には見えない若さ! 健康を心配していましたが、民主化に燃える心は健在のようです。

 6月19日の朝日新聞の夕刊のトップ記事で、昨年1年間の自殺が10年連続で3万人を超えたことが報じられていました。
 自殺の原因と動機別の内訳(3つまでの複数回答可)で、トップは健康問題の1万4684人、2位が経済・生活問題の7318人、3位が家庭問題の3751人、4位が勤務問題の2207人、5位が男女問題の949人、6位が学校問題の338人、その他が1500人と出ました。
 1位の健康問題の内訳のトップはうつ病が6060人で、このうち30代が996人、40代が940人で、50代以上だけでなく、子育て世代にも広がっているとのことです。記事にはトップのうつ病しか載っていませんでしたが、他にもどんな病気で自殺する人がいるのか知りたいところです。例えば癌とか‥‥。
 職業別では、被雇用者・勤め人が1341人、自営業・家族従事者が371人だったというとこですが、これは単純に数を比較するのは無意味で、1万人に何人というようにしないと比較できないでしょう。
 4位の勤務問題の内訳は、仕事疲れがトップで672人、2位が職場の人間関係で514人、3位が仕事の失敗で368人、4位が職場環境の変化で263人、その他が390人でした。職場の人間関係というのは多分イジメが殆どのケースを占めるのでは、と思います。私も常日頃、上司や意地の悪い先輩たちからのイジメに会っているので、そういう思いを強く持ちます。但し、私の場合は自殺を考えるまでには至っていませんが‥‥。子どもがイジメで自殺するというのは、彼らが家と学校という狭い世界の中で生きているので理解できますが、もっと広い世界を知っているはずの大人が職場のイジメで自殺するというのは、よほどの事がないと起こり得ないと思います。世間には想像を絶したイジメが職場に横行しているということでしょうか?
 自殺に関しては、以前にもお話しかたもしれませんし、「Favorite Study」の「デュルケムの自殺論」のところに書いてあると思いますが、孤独になると人間は自殺する、という統計学的な結論が出ています。イジメに会ってもそういう思いを持ち合える人間が存在すれば、その人は自殺しないことが多いのです。私も2回自殺未遂をしましたが、この例にもれるものではありませんでした。周囲で孤立してるな、と感じる人がいたら、一言声をかけてあげてほしいと思います。その一言で貴重な命が救われるかもしれません。

香川京子『愛すればこそ スクリーンの向こうから』

2008-06-21 15:56:01 | ノンジャンル
 今朝の朝刊にターシャ・テューダーさんの訃報が載っていました。バーモント州で死去、92才だそうです。絵本作家というよりも最近では19世紀の服、家、食べ物そして見事なガーデニングで知られ、多くの写真集が出されていました。厚木の有隣堂では、彼女の常設コーナーがかなり長くありました。うちにも写真集が2册ありますが、庭の美しさは息を飲むほどです。ご冥福をお祈りいたします。

 さて、女優・香川京子さんのこれまでの仕事ぶりを、ご本人や関係者の方からの証言で紹介する、'08年2月発行の「愛すればこそ スクリーンの向こうから」(勝田友己編)を読みました。
 冒頭に8ページの香川さんの写真のページがあり、次に香川京子さんが書かれた「序」、そして香川京子さんが一緒に仕事をした映画監督さん、俳優さん別にいろんなエピソードが語られています。
 第一章「巨匠たちとの日々」では、成瀬己喜男、今井正、小津安二郎、溝口健二、黒澤明、といった素晴らしい監督の作品に出演した時の話が、第二章「スターへの階段」では、デビューした経緯、島耕二・阿部豊・中川信夫・原節子・田中絹代・長谷川一夫・三船敏郎らとの仕事、そしてフリーになった経緯、結婚に至る経緯が語られ、第三章「忘れ得ぬ人々」では、大庭秀雄、渋谷実、家城己代治、久松静児、衣笠貞之助、大曽根辰保、清水宏、豊田四郎、吉村公三郎、川島雄三、山本薩夫、内田吐夢、三隅研次、加藤泰、堀川弘通、山田洋次、熊井啓という監督たちとの仕事ぶり、そしてエピローグとして、香川京子さんの「これからも、いい作品に出会いたい」と題する文章で終わり、巻末に香川京子さんの出演作品一覧が細かいデータとともに掲載され、主要参考文献・参考記事一覧も載せられています。
 香川さんの清楚でありながら強い意思を感じる発言が、ご本人の誠実さを彷佛とさせるとともに、香川さんが関わってきた映画監督の証言にもいくつかなるほど、と思わせるものがありました。
 1つは久松静児監督の発言で、「俳優は‥‥下手でもその人でなくてはできないというものを自然と引き出すことが大切」「理屈で演技する俳優はダメ。」というもの。
 もう1つは大曽根監督の発言で、映画「獄門帳」を撮るに際して「人と人との信義、真心の美しさを浮彫にして、人間肯定の快さをしみじみと湧き起こさせるように描きたい」というもの。
 そして渋谷実監督のエピソード。渋谷実監督の助監督を石井輝男監督が務めていたというのも驚きでしたが、その石井監督が述べる渋谷実監督の仕事ぶりで「自分でアクションもつけないし、自分で『ヨーイ、スタート』も言わない。ダビングにも編集もしないんです」と、こんなのでよく映画が撮れたなあと思っていると、同じく助監督だった深町幸男さんは、小児まひに対する偏見のために、学校で泥棒だと言いがかりをつけられた子が帰宅してすねる場面の撮影で「監督は『ぼうず、そこの壁に“の”の字を書け』と言うんだ。その時は何のことかと思ったけど、後でラッシュを見ると、全身を写したそのカットは本当に悲しそうだった」というもの。ちなみに清水監督は21才でデビューし、子供を活写した映画で名を馳せ、本人も「こどもたちの演技が、私がへいぜい考えている映画の演技というものに、非常にちかいものをもち、‥‥映画製作の意欲を満足させてくれる」「大人の演技には嘘がある。しかし、子供にはそれがない。自然である」と述べています。私は清水作品はまだ一つもまともに見ていないので、これから見て行きたいと思います。

 香川京子さんは私もファンで、溝口健二監督の「山椒大夫」「近松物語」、小津安二郎監督の「東京物語」での香川さんが大好きで、また湘南に住んでらっしゃり、私が在籍していた湘南高校の合唱部に娘さんが入られたことを知ったとこもあって、何か運命的なものを感じ、常に気になっている女優さんでした。今でも「好きな女優さんは?」と聞かれると、香川京子さんの顔がすぐに思い浮かびます。
 そんな香川さんの写真と声にあふれたこの本は、新たに私の宝物になりました。この本をまとめてくれた毎日新聞社の勝田友己さんに感謝いたします。そして香川さんがこれからもいい作品に恵まれますように、陰ながら応援させていただきます。
 なお、写真をご覧になりたい方は、2枚だけですが、「Favorite Books」の「香川京子さん著『愛すればこそ スクリーンの向こうから」のコーナーに掲載しておきましたので、ぜひご覧ください。