gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

町田智浩『さらば白人国家アメリカ』その5

2016-12-11 05:45:00 | ノンジャンル
 また、昨日の続きです。
・「近代の民主主義はアメリカから始まったが、そのシステムには先住民起源のものも多い。そもそも連邦制自体が6つの先住民部族の連合であるイロコイ連邦からヒントを得たと言われる。アメリカ先住民は部族のリーダーを投票で決めていた」
・「ブッシュ政権の頃、石油に代わる夢の材料としてエタノールが注目され、政府から多額の助成金が出たが、トウモロコシの栽培には石油から作られる肥料が大量に必要だと判明して、エタノール幻想は崩れた。マヌケな話だ」
・「調査によると、トランプ支持者の半数の学歴は高卒かそれ以下だ。とはいえ、世帯年収の中間値は7万2000ドルと、かなり多い。対するクリントン支持者の中間値は5万6000ドルしかない。これは、クリントン支持者には貧しい黒人や若者が多いのに対して、トランプ支持者は学こそないものの苦労して働いてそれなりの生活をしている中年以上の白人が多いからだといわれる」
・「転機は1929年の大恐慌だった。失業対策として、民主党のフランクリン・ローズヴェルト大統領は金持ちに増税した金でダムや道路や橋を築き、労働者たちに仕事を与えた。このニューディール政策は、国民の半分以上を占めたブルーカラーから熱く支持され、選挙で勝ち続けた。リベラリズムとは本来は自由主義を指したが、この頃から『ニューディール的な国民の平等のための政府の積極介入』を意味するように変わった。そして60年代、民主党は、富の平等を人種の平等へと広げ、公民権法と投票法を成立させた。ただ、サインをしながらジョンソン大統領は『これで民主党は南部を失うだろう』とつぶやいた。彼の予想は当たり、南部の白人たちは民主党を離れ始めた」
・「4日続いた大会の最後はトランプの大統領候補指名受諾演説、共和党の新しい王の戴冠式だ。トランプは予想どおり、ニクソンの言葉『法と秩序』を引用して、アメリカの内外の敵を強調し続けた。だが、その中身は、恐怖を煽るだけのために事実を大きく誇張し、歪曲したものだった。『アメリカの50の大都市における殺人件数は去年に比べて17%増加した』実際に17%増加した都市は36。アメリカ全体での殺人件数は10年以上減少し続けている。『職務中に殺害された警察官の数は、去年に比べておよそ50%増加しています』これもウソ。実際の15年に対する増加率はわずか8%。しかも、この15年間、それは継続して減少している。『国境を越えて入ってきた一人の男がネブラスカで、サラ・ルートさんという無実の若い女性の命を奪った。優秀な成績で大学を卒業した翌日に殺害されたんだ』まるで殺人事件のように話しているが、実際は酒酔い運転による交通事故だ。トランプはこの演説で、中南米からの不法移民による事故と殺人4件を強調した。ヒスパニック・イコール殺人者というイメージを作り上げるように。『ヒスパニック系の貧困層は、オバマ大統領の就任以来、200万人も増えた』オバマ在任中の8年間でヒスパニックの貧困層が200万人増えた理由は、ヒスパニック全体の人口が700万人増えたからで、ヒスパニックの貧困率は25.3%から23.6%に減っている。『世帯収入は、16年前の2000年以降、4000ドル以上も下がった』6月の平均世帯収入は5万7206ドル。00年に比べて下がった額は580ドル。(中略)トランプの演説は75分に及んだ。最初、聴衆は『トランプ! トランプ!』とコールするなどで盛り上がっていたが、だんだん静かになり、その表情も不安げになっていった。トランプが語る現在のアメリカは、憎しみと暴力と貧困と恐怖と絶望に満ちた、地獄以外の何物でもないからだ。そして、この地獄から生き延びるには、アメリカは『移民の国』というアイデンティティを捨てなければならないという。『もはや我々はポリティカリー・コレクトでいる(政治的に正しくある)余裕はないんだ!』(中略)しかし、ポリティカリー・コレクトはアメリカそのものだ。独立宣言に掲げられた言葉『人は生まれながらに平等である』。書いた時点では白人の土地所有者だけを意味していた『人』は、その後、すべての人に広げられていった。奴隷制を撤廃し、世界中から移民を招き、女性に参政権を勝ち取らせ、難民を受け入れ……。独立宣言はアメリカの憲法の基本である。共和党の綱領を書き換えたトランプは、アメリカの憲法をも否定しようとしている」
・「この党大会は最初から最後まで、黒人、ヒスパニック、イスラム教徒、それに女性にたいするヘイト祭りだった。トランプが共和党に語る理想のアメリカとは、この大会のようなものだろう。巨大な壁の内側に閉じこもった白人だけの国」

 この本を読んで、今のアメリカの政治状況がよく理解できました。アーサー・ビナードさんが「トランプがヒラリーに負けたら、頭を丸める」と吉田照美さんに約束したことも、この本を読めば納得です。今回の大統領選挙に興味がある方にはお勧めです。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿