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黒沢清監督『スパイの妻』その2

2022-06-25 09:19:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。

 結婚記念日にかこつけて二人は、監視の目をかいくぐりながら、現金を貴金属や高級腕時計に換えて出国の準備をする。優作は聡子に神戸港から貨物船でサンフランシスコまで行くように言う。一方、優作は上海に行ってからサンフランシスコに渡る。今彼らが隠しているフィルムは、オリジナルの鮮明な証拠フィルムが映写されたスクリーンを撮影したものであり、オリジナルのフィルムは上海のドラモンドに託されていた。そしてドラモンドが金を要求しているので優作は彼と会って交渉しなければならなかったのだ。聡子は優作と一緒に行きたかったが、優作は離れていても二人の絆は深まると説得する。
 駒子と執事の金村(みのすけ)に見送られて聡子と優作は屋敷を自動車で後にし、神戸港で聡子は優作と別れて貨物船のコンテナに身を隠す。ところが憲兵隊が貨物船にやってきて、聡子の身を託されていた船員ボブも聡子の隠れ場所を教えざるを得なかった。
 憲兵分隊本部で泰治は、密航の通報があったが、密航者は優作だと思っていたと言う。そして聡子の容疑は死刑相当だとも。直ちに聡子がもっていたフィルムが映写される。聡子は泰治にフィルムに国家の機密が隠されていると言い、そう信じていた。だがスクリーンに映し出されたのは忘年会で上映した映画だった。優作は聡子を欺いたようだ。聡子はスクリーンの前に歩み出て「お見事です」と言って気を失う。
 1945年3月。聡子は精神病院にいた。患者の女たちは東京や各地が空襲に遭っているといううわさ話をする。その日は野崎医師が聡子に面会に来た。野崎は優作をインドのボンベイで見た人がいるという情報を伝える。だが、彼が乗ったロサンゼルス行きの船が日本の潜水艦に沈められたとも。そしてそれも不確かな情報だった。聡子が退院できるように取り図ろうと言う野崎に聡子は「先生だから申しますが私は一切狂っていません。それが狂っているということなのです。この国では」と言う。
 深夜目を覚ました聡子は机の上のものが不思議な振動をするのを見る。間もなく病院付近も空襲にみまわれたことがわかり、患者たちは逃げ出す。最後に大部屋の病室を出た聡子は廊下の先が既に焼け野原となっているのを見る。これで日本は負ける。戦争も終わる。お見事。聡子はひとり海辺へと逃げて嗚咽する。
 1945年8月、終戦。翌年優作の死亡が確認されるが、報告書には偽造の疑いがあった。数年後、聡子はアメリカに渡った。

 見事なワンシーンワンカットがいくつか見られました。

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