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飴村行『粘膜兄弟』その1

2012-08-07 08:42:00 | ノンジャンル
 中川信夫監督の'59年作品『東海道四谷怪談』をスカパーの日本映画専門チャンネルで再見しました。俯瞰のショットが多く、つなぎもシュールレアリズム映画のようで、まがまがしい赤や蛙の声などの音の使い方も特徴的でした。天知茂の代表作の一つでしょう。

 さて、飴村行さんの'10年作品『粘膜兄弟』を読みました。
 大平洋戦争で日本が南方で勝利を収めていた頃、22歳の双子・須川麿太吉(またきち)と矢太吉は、飼っている一つがいのフグリ豚の世話と家の雑用をしている老人・ヘモやんと一緒に人里離れて暮らしていました。フグリ豚の雄は美味な巨大な金玉を持ち、雌は1年に24頭の子供を産み、双子はその子供を売って生活していました。二人はカフェーで働くゆず子に熱を上げていて、日参していましたが、彼女は言い寄る彼らを馬鹿にして相手にしません。ゆず子は昔銀座の一流カフェーで働いていたということ以外、前歴は謎に包まれていましたが、その美しさから言い寄る男は二人だけではありませんでした。
 ある日、さんざんゆず子に見下されてカフェーに行く気を無くした矢太吉を残して、一人でカフェーに向かった麿太吉は、ゆず子が二人を見分けていることを知ります。麿太吉は自分たちの本当の生活のことを話すと、ゆず子はやくざの城田組の親分の寅之助にしくこく言い寄られて困っていることを明かした上で、双子と別々に食事に付き合うと言い出します。家に帰ってそのことを矢太吉に伝えると、矢太吉は自分が最初に行くと言い、麿太吉はそれに同意します。
 金のラメの背広を着て出かけた矢太吉を麿太吉が尾行していくと、ゆず子と合流した矢太吉は洋食屋に彼女を誘ったにもかかわらず、支那そば屋に彼女と入り、麿太吉はしめしめと思います。矢太吉は彼女を失望させた上に、支那そばを彼女の上にひっくり返してしまい、怒ったゆず子は店を飛び出します。尾行していた麿太吉は双子の弟のあまりの失態に言葉を失いますが、その後、彼女が寅之助に拉致されそうになるところを見て、怒りにかられ、寅之助をやっつけて橋から落とすと、ゆず子はその日の午後に喫茶店に麿太吉を誘います。ゆず子が、養豚所を経営していた叔父との思い出から、彼らの食事の誘いに乗ったことを麿太吉に話すと、麿太吉は自分たちの父が村木静男という詐欺師に引っかかって自殺したことを語り、いつか村木がこの町に戻ってくるのを待って復讐するつもりだと言います。
 家に帰った麿太吉が寅之助をやっつけたことを矢太吉に話した後、矢太吉の体が動かなくなり、空中に現れた裂け目から人形(ひとがた)をした黒い影が現れ、叫びながら矢太吉をぼこぼこに殴ると、また裂け目の中に消えていきます。それは矢太吉が7歳の時に現れ始めた、彼らが「黒助」と呼ぶもので、出現する規則性はなく、どこにでも現れる謎の物体でした。
 翌日、彼らの前にポン太と名乗る、子供の背丈しかない男がやって来て、ゆず子を預かっているという寅之助の手紙を持ってきます。怒りに燃えた麿太吉が矢太吉を連れて指定の場所に急行すると、そこには縛られたゆず子が一人いました。殺気を感じた矢太吉が止めるのも聞かず、建物の中に入っていった麿太吉は隠れていた寅之助の手下の一撃を受け、昏倒します。
 寅之助は双子を縛り上げ、それぞれに暴力を振るった後、自分を倒したのはどちらかとゆず子に聞くと、ゆず子は矢太吉の方を指差します。懸命に反論する矢太吉に対し、寅之助は手下の針市に8割が死んでしまったという拷問を始めるように命じ、針市は臍、尿道、睾丸に針を刺していきます。ゆず子は寅之助をセックスに誘って油断させ、そのすきに麿太吉は近くにあったバットで針市と寅之助を撲殺します。そして二人の死体をとりあえずリヤカーで自宅へと運ぶのでした。(明日へ続きます‥‥)

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