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坂本敏夫『死刑と無期懲役』

2010-04-14 15:55:00 | ノンジャンル
 朝日新聞で紹介されていた、坂本敏夫さんの'10年作品「死刑と無期懲役」を読みました。刑務官として実際に死刑と無期懲役の囚人と向き合ってきた著者がその実態を訴えた本です。
 この本で新たに知ったことは、死刑が確定した死刑囚は、高松を除く高等裁判所所在地にある拘置所にいるということ、拘置所にもそこで服役(拘置所の運営に必要な炊事、洗濯、清掃、営繕などの刑務作業に従事)する受刑者が大勢いること、死刑は日曜、土曜、国民の祝日、年末年始には行われないこと、'60年代後半までは刑務所長が死刑囚と真摯に向き合って言葉を交わし、所長から送られる恩赦上申に対する却下通知とともに死刑執行の通達が送られてきたこと、そして所長による死刑執行の告知は「残念ですが恩赦が認められずにお別れの時が来ました‥‥」という言葉であったこと、また処刑前日には家族との面会や死刑囚仲間とのお別れ会も開催し、立派に死ぬことを死刑囚の最期の望みとして叶えていたこと、死刑囚処遇の究極の目的は、自殺を防ぎ、精神病を発症しないようにすること、今の死刑囚の唯一の娯楽は指定されたテレビ番組を毎週日曜日に数時間見ることでしかないこと、死刑執行ではロープがビーンと鳴る轟音がし、またひどく抵抗して刑務官たちが無理矢理殺してしまうケースもままあるということ(ちなみに永山則夫は抵抗がひどく、ほとんど撲殺されたような容貌となり、遺体を誰にも見せずにすぐ火葬に付したとのこと)、酒鬼薔薇事件を起こした少年は'04年に社会復帰を果たしているということ、近年は量刑が重くなり、仮釈放の数も減少し、無期懲役は仮釈放がほとんどなく終身刑化してきているということ、無期懲役受刑者には生きる希望を失い自殺を企図したり、自暴自棄になって暴れて保護房に収容される者が多くいること、仮釈放後の保護観察制度は、専門家の保護観察官が事務仕事に忙殺され、肝心の保護司も素人のボランティアに頼っているという現状で、ほとんど機能していないということ、死刑よりも抵抗感の薄い終身刑を導入すると、綿密な審議を経ずに犯人を有罪とすることによって、現在より冤罪が増加する恐れが強いということ、刑務官の間では既に冤罪で死刑になった人も何人か出ていることが広く知られていること、「白を黒とするのは朝飯前」と豪語する検察官まで存在するということ、裁判官の証拠採用が検察官に有利に行われることが多数あり、弁護人の科学的検証による反証をまったく無視するケースもままあるということ、などです。
 「人間は必ずミスをする」という前提に立って、冤罪の人を救済する道を作っておかなければならないという主張にはもっともだと思いました。またどんなに酷い犯罪を犯した人も、生まれてきた時は無垢の赤ん坊であり、また清澄な精神となって死を迎えうるのだということも教えてもらった気がします。死刑賛成の方には特に読んでほしいと思いました。文句無しにオススメです。