gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

ポール・オースター『ティンブクトゥ』

2010-04-04 14:56:00 | ノンジャンル
 ポール・オースターの'99年作品「ティンブクトゥ」を読みました。
 雑種の犬ミスター・ボーンズの飼い主であるウィリーは肺病がひどくなり死が近いのを覚悟し、ミスター・ボーンズの新たな飼い主と、自分が生涯書き溜めた文学作品を、彼の高校時代の教師スアンソンに託すためにニューヨークからボルティモアまで歩いていきます。彼はボルティモアに到着しますが、体力の限界に達し他人の家の軒下でうずくまります。その膝の上で眠りこんだミスター・ボーンズは、翌朝警官に発見されたウィリーが救急車で病院に運ばれ、そこへスワンソンが駆けつけ、ウィリーが死ぬ前にすべてを彼女に託すという夢を見ますが、夢から覚めた時、夢と同じように警官が近づいてくるのを見ると、その場から逃げ出します。飢えた彼は辛酸をなめながらも、やっと彼を受け入れてくれる家族と出会いますが、家族旅行の間に預けられたドッグホテルで具合が悪くなり、嫌悪している獣医のところに連れて行かれそうになると、ドッグホテルを逃げ出します。森の中で力つき眠ると、夢にウィリーが出てきて、彼が今いる来世にミスター・ボーンズも来れるのだと言います。目が覚めて丘を越えるとそこにはハイウェイが走っていました。彼はそれを見て、運が良ければ今日のうちに来世に行けるぞと思うのでした。
 前半はウィリーとの生活が、後半ではウィリーと別れた後の生活が語られ、今回も次の展開がまったく読めない不思議な小説でした。回想に次ぐ回想、そして独白。普通ならうんざりするような構成でも、瞬く間に面白く読めてしまうのですから、オースターは並の才能の持ち主ではないと思います。しかもラストへ向かっての心せつなくなる展開。素晴らしいの一語です。文句無しにオススメです。なお、あらすじの詳細は私のサイト「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)の「Favorite Novels」の「ポール・オースター」の場所にアップしておきましたので、興味のある方は是非ご覧ください。